■ノートPCへのHSDPAモデム搭載が進む
モバイルブロードバンドを利用するには、前述したようにPCカードかUSB接続のHSDPA/W-CDMA端末が多数用意されているが、2006年後半からはノートPCにこれらの機能が内蔵されたモデルが登場してきている。たとえば富士通シーメンスは薄型ノートPC「LIFEBOOK Q2010」の最上位モデルにHSDPAモデムを内蔵。バッテリーをはずすとSIMカードスロットがあり、ここにHSDPA契約をしたSIMカードを挿入して利用する。価格は約50万円と高級仕様だが、これはこの製品がマグネシウム合金フレーム採用や厚さ19.9mmというエグゼクティブ向け仕様だからである。他にもDellやLenovo、HP、AcerなどからHSDPAモデム内蔵ノートPCが登場しており、こちらは普及モデルやモバイル用途向けのため一般的なノートPCの価格+HSDPA端末程度の価格で購入することが可能だ。

今やノートPCにはLAN機能、Wi-Fi機能内蔵があたりまえのものになっているが、海外では今後、HSDPA機能が標準化されていく動きが見える。2006年9月にはNokiaとIntelがノートPCへHSDPAモジュールを内蔵する計画を発表。IntelのCentrino DuoプラットフォームにHSDPA機能が融合される予定だ。数年後には海外ではノートPCはSIMカードを入れる、という使い方がごくごく普通のものになっているかもしれないのだ。

富士通シーメンスQ2010は薄型のエグゼクティブ向けモバイルノート。バッテリーをはずした部分にSIMカードスロットがある


■SIMカード方式のメリットを生かしたサービスも
ところでノートPCにHSDPAなど携帯電話機能が利用できるようになれば、携帯電話から音声通話を行ったり、SMS/MMSを発着信するユーザーも増えてくるだろう。しかし、携帯電話から電話を発信した場合、普段使っている携帯電話とは違うSIMカードを利用しての発信になり、相手側=着信側には通常利用している電話番号とは違う発信番号でかけることになる。すなわち相手にはこちらの普段使っている電話番号が表示されないわけだ。これでは着信側もどこから電話がかかってきたかわからないし、リダイヤルしてもらうとこちらのノートPCに携帯電話がかかってきてしまう。ノートPCをカバンに入れてしまえばこちらは着信することもできないわけだ。

そこで海外の携帯電話会社の中には、Multi SIMカードというサービスを提供しているところもある。これは同じ契約に別のSIMカードを発行してくれるもので、どちらのSIMカードを使って発信しても、相手側には同じ電話番号が表示されるというものだ。実際には複数発行されたSIMカードには別の電話番号が割り当てられているのだが、発信した際は携帯電話会社のセンター内で発信者番号をメイン回線の携帯電話番号に変更し、それを相手に番号通知するのだ。

メインの音声通話回線にノートPC用、スマートフォン用と別途2枚のSIMカードを発行してもらえば、どれから電話をかけても相手にはメイン回線の番号しか通知されないため、着信は常時こちらのメインの音声通話回線に利用している携帯電話にかかってくることになるわけだ。海外ではスマートフォンと携帯電話を併用するユーザーが多いため、今後ノートPCへのHSDPA/W-CDMA機能内蔵=携帯電話内蔵が進めばこのようなサービスもより一般化していくことが予想される。

複数のSIMカードで同じ電話番号を扱えるMulti SIMカードサービスを提供している携帯電話会社も多い


■日本ではMVNOに期待か?
日本では携帯電話を使ったパケット定額制はあたりまえのものになっているが、データ通信用途となるとPHS以外ではコンシューマー向けにはサービスがないに等しい。MVNO事業者が開始予定とのアナウンスを行っているが、海外のように「音声も、高速データ通信も同一会社で」という環境は、まだ実現しそうにない。日本でのモバイルブロードバンドは、まずはMVNO事業者に期待することになるのだろう。

また、ノートPCへのHSDPA機能内蔵にしても、パケット定額ができなければ使いにくい。日本では携帯電話の高機能化が進み、携帯電話で何でもできるようにする、という動きがみられるが、ビジネス用途ではノートPCでなければできないことのほうがまだまだ多い。携帯電話の機能向上だけではなく、ノートPCでも利用しやすいサービスやデバイスが登場することも、モバイルコンピューティングの進化には必要ではないだろうか。

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香港在住の海外携帯電話マニア&研究家
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