【日本株】世界で戦争頻発のいま持っておきたい…国策も追い風に高騰続ける「プロ厳選・防衛産業銘柄5選」

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世界的な地政学リスクの高まりを背景に、防衛ビジネスは再び注目すべき投資テーマとして浮上している。ウクライナや中東での紛争が長期化に加え、米中関係の悪化もあって安全保障の重要性は高まるばかりだ。

世界の軍事費が過去最高を更新するなか、とりわけ注目すべきは欧州の動きだ。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、欧州各国では防衛装備品の調達や軍事技術の強化を図っている。すでに50兆円規模に到達した欧州の防衛ビジネスは、今後さらなる積み増しが必至と見込まれている。

NATO(北大西洋条約機構)が国防予算目標を従来のGDP(国内総生産)比2%から5%へ引き上げたことは、歴史的な転換点となる可能性がある。欧州加盟国では目標達成に向けて国防費倍増の約50兆円もの追加支出が必要になると試算されている。低成長が続く欧州にとって、もはや防衛ビジネスは数少ない成長産業のひとつとなっている。

NATOの新方針は、日本を含むアジア諸国の国防支出にも影響を及ぼすことは必至となろう。米国防総省が「NATOの5%目標がアジアにおける基準にもなる」との見解を示すなか、三菱重工、NEC、三菱電機などの代表的な防衛関連の株価が高騰を続けるなど、日本株市場も即座に反応を示している。

恩恵は主役クラスだけには留まらないだろう。防衛生産基盤強化法(2023年10月施行)により、企業の想定営業利益率が従来の8%から15%へ引き上げられるなど、サプライチェーン(供給網)全体に利益が行き渡る環境が整ったことも、投資テーマとしての魅力を高めている。

ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674)

■株価(6月27日時点終値)2735円

自動車用鉛電池で国内首位、世界でも2位の座を占める大手電池メーカー。2017年からは潜水艦用リチウムイオン電池(LiB)の生産を開始しており、今後はLiBの交換需要に加え、新設潜水艦への搭載でも活躍が期待される。子会社のジーエス・ユアサ テクノロジーは、潜水艦用主蓄電池の製造に必要な技術と設備を有していると防衛省からお墨付きを与えられた唯一無二のサプライヤーだ。

防衛関連事業以外にも、第7次エネルギー基本計画の恩恵も受ける見込みだ。2040年には再生可能エネルギー比率が現在の約23%から40%へ、原子力発電が8.5%から20%へ引き上げられる計画であり、系統用蓄電池の需要が増加する。原子力発電所の非常用電源系統蓄電池では、同社がほぼ全ての原子力発電所に採用されており、高いシェアを誇っている。

過去10年間の株価は2,000円からPBR(株価純資産倍率)1倍に相当する3,500円程度のボックス圏(株価が一定の範囲内で上下を繰り返すこと)を推移しているが、上限突破の素地も整いつつあるとみる。

Synspective(290A)

■株価(6月27日時点終値)702円

天候や時間帯に左右されず24時間地上を観測できるSAR(小型SAR衛星コンステレーション)衛星の開発と運用ができる企業は、世界でも5社程度と限られている。創業以来、衛星の打ち上げ・軌道投入成功率100%という実績を持つ同社は、技術力と競争力の高さを証明している。

小型SAR衛星コンステレーション(複数の衛星を連携させて運用するシステム)は、安全保障分野で需要が急拡大している。衛星コンステレーション事業は固定費が多いが、同社は地上局やデータ保管用サーバー利用以外は自前で運用する垂直統合を指向しており、限界利益率(売上が増えることで利益が大きく増える割合)の高さを強みとしている。

業績が拡大すれば、レバレッジが効いた利益拡大が実現できる。撮像画像の販売や画像分析ソリューションサービスも提供している。売上高の約9割を官公庁向けが占め、特に内閣府の宇宙開発利用加速化戦略プログラム案件が主要な収益源だ。中期的には防衛省向けの衛星画像販売やソリューションサービスが利益を牽引する期待もある。

QPS研究所(5595)

■株価(6月27日時点終値)2259円

艦艇や上陸部隊の情報収集・探知・追尾を行う衛星コンステレーションは、日本の防衛能力において不可欠なインフラだ。防衛省は2025年度以降に合計2,832億円の予算を計上しているが、国内でSAR衛星コンステを構築できるのは先述したSynspectiveと同社のみである。予算配分では両社が大きな恩恵を受けることとなろう。

QPS研究所の技術的特徴は、アンテナの小型化にある。高分解能(詳細な画像を撮影できる能力)と軽量化という通常相反する要素を同時に実現しており、現在日本政府が運用する偵察衛星の分解能(0.5m)を超える性能を持つ。小型SAR衛星の開発・製造・運用・データ販売に特化しており、損益分岐点(収益がプラスに転じる売上高)の低い収益モデルを構築している点も強みだ。

防衛省との大型契約が寄与する2027年5月期からは営業黒字化が十分に期待できるとみる。2028年5月期までに目指すSAR衛星24基の打ち上げが無事に完了すれば、高収益企業へ変貌を遂げる期待も大きい。

カーリット(4275)

■株価(6月27日時点終値)1245円

爆薬技術を主要技術とする中堅化学企業。コスト削減努力に加え、原燃料価格をはじめとするコスト上昇分の価格転嫁を進め、前2024年3月期の営業利益は33.5億円と過去最高を更新した。防衛関連製品の売上高構成比は約2割と推定されるが、ニッチながらも重要なポジションを確立している。

強みは「過塩素酸アンモニウム」を国内で唯一製造していることだ。自衛隊で使われる防衛用ミサイルや宇宙ロケットなどのブースター燃料となる固体推進薬(ロケットやミサイルを飛ばすための燃料)原料であり、防衛費拡大の恩恵をダイレクトに享受できる立ち位置にある。

2025年度から3カ年の中期経営計画では、成長戦略の一環として計120億円以上の設備投資を計画している。防衛関連製品向けの固体推進薬などの製造設備の整備には80億円以上を投じる見込みだ。中長期的にロケットの打ち上げ本数が増加することを見据えた投資とみられ、化学品事業の利益成長を大きく押し上げる期待がある。

シンフォニア(6507)

■株価(6月27日時点終値)9930円

国内唯一の航空機向け電源システムメーカーで、戦闘機、輸送機、各種ヘリコプターなど、殆どの国産航空機に同社製品が搭載されている。また、宇宙分野においても「イプシロン」や「H3」などの国産ロケット向けの飛行制御機器、電装品などで実績を積んでいる。ミサイル関連予算の増加は、同社に十分な恩恵をもたらそう。

2028年3月期を最終年度とする新たな中期経営計画(中計)では、最終年度に「受注高1,700億円、売上高1,600億円、営業利益225億円(営業利益率14%)」の達成を目指す。中計期間3年間の営業利益の年平均成長率は12.7%を見込み、目標達成に向けて約500億円の投資を実行する計画だ。設備投資には約380億円が振り向けられる見込みだが、防衛関連の設備投資には補助金が付与されるケースが多く、投資効率を高める結果につながる公算は大きいだろう。

株価はすでに大きく反応しているが、2024年3月期時点で約10〜15%の防衛関連製品の売上高構成比が中計期間中に飛躍的に伸びることを踏まえれば、依然として上昇余地は大きいとみる。

最近では、日本政府が米国の次世代ミサイル防衛システム「ゴールデン・ドーム」構想に協力する可能性なども報じられている。ミサイル発射を覚知するために宇宙に設置するセンサーや迎撃装置、指揮統制機能などを備えた多層的な防衛システムとなる構想である。防衛ビジネスは単なる防衛力の強化に留まらず、技術革新を伴う成長テーマとして注目される機会が増えていきそうだ。

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