―中東リスクやトランプ関税に左右されない、成長株のトレジャーボックスに刮目せよ―

 週末20日の東京株式市場は売り買いともに方向感のつかみにくい地合いとなり、日経平均株価は前の日の終値を挟んでもみ合う展開となった。今週はトランプ関税を巡る交渉の行方に加え、日米の金融政策決定会合のほか英国やスイス中銀なども政策金利を発表する中銀ウィークにあたり、イベントドリブン戦略への思惑が漂ったが、それらをまとめて隅に追いやったのが中東における地政学リスクの潮流であった。

 イスラエルとイランの軍事衝突ではトランプ米大統領が直接介入の可能性に言及し、にわかに中東情勢が緊迫化した。トランプ氏は今後2週間以内に、イランへの軍事攻撃を行うかどうかの決断を下すとしており、マーケットは中東有事に身構える状況を強いられている。ただし、足もとで投資マインドが弱気に傾いているということでもない。週末の東京市場は下値に対しても抵抗力を発揮し、強弱観が錯綜する中で日経平均はプラス圏とマイナス圏の狭間をさまよい続けた。

●中東有事に影響されないAI関連が全軍躍動へ

 中東情勢については当面予断を許さないが、個別株に対する物色意欲そのものは失われていない。プライム市場の値下がり銘柄数はほぼ7割に達したが、小型株指数についてはプラス圏で推移する時間帯も多く、主力株に代わって相対的に時価総額の小さい銘柄群には根強く投資資金が流入した。来週以降の展望として、先物主導で振り回される大型株は視界不良の地合いを余儀なくされそうだが、海外株市場や為替の動向に影響を受けにくい内需系の中小型株には物色の矛先がむしろ強まるケースも考えられる。

 そして、今最も熱いテーマ物色の対象といえば、「生成AI」や「AIエージェント」をはじめとする人工知能(AI)関連株である。最近の半導体株やデータセンター周辺株への見直し機運は、AI用半導体やAIソリューションビジネスに関する再評価にもつながり、関連銘柄にニューマネーが流れ込み始めた。既に米国ではAI周辺の銘柄に株価を数倍化させるなど居どころを大きく変える銘柄が相次いでおり、東京市場もそれに追随する動きが想定できる。今回は、AI全盛時代にハード面からのアプローチで確実に注目度が高まるであろう「エッジAI」をテーマに掲げ、活躍が期待される有望株に光を当てる。

●放置できない生成AI拡大による電力問題

  生成AI市場の拡大が驚異的なスピードで進んでいる。これによって生じる膨大なデータ処理需要が、データセンター建設特需をもたらしているのは周知の通りだ。この場合のデータセンターというのは、いわゆるAIデータセンターであり、内部には大容量のAIサーバーが設置されている。そして、このAIサーバーには同時並行的な演算処理を強みとするGPUが大量に搭載され、膨大な電力消費需要を生み出している。生成AIは既にビジネス分野にとどまらず、我々の日常とも完全に同期した状況にあるが、基本的にクラウドサービスによって提供されるため、今のような強烈な勢いでデータセンターが増設されれば、それに比例する形で電力問題が俎上に載ることは避けられない。

 また、生成AIを利用する側にとってもクラウドサービスの弱点は多々ある。利用者が集中すればレスポンスの遅延が生じるだけで使い勝手が悪くなる。更に、プライバシー保護などセキュリティー面のリスクも無視できない。まして今は、皮肉なことに疲れを知らないAIがサイバー犯罪の原動力となっているような時代で油断がならない。