三浦の規格外食材を使った定食が評判! 食べるだけでフードロス削減できる食堂とは

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神奈川県三浦にある、規格外野菜や未利用魚を活用した料理を提供することでフードロス削減に貢献している「もったいない食堂」をご紹介。

〈「食」で社会貢献〉

2030年までの国際目標「SDGs」(=Sustainable Development Goals〈持続可能な開発目標〉の略)など、より良い世界を目指す取り組みに関心が高まっている昨今。何をすればいいのかわからない……という人は、まずお店選びから意識してみては? この連載では「食」を通じての社会貢献など、みんなが笑顔になれる取り組みをしているお店をご紹介。

今回訪れたのは、通常では市場に流通せず破棄されてしまう規格外野菜や未利用魚をおいしく活用した料理を提供することで、フードロス削減に貢献している「もったいない食堂」。三浦海岸に近い住宅街にあり、2階のテラスから海が見える開放的な空間も魅力の食堂だ。

スタートは「もったいない野菜をなんとかしたい」との思いから

京浜急行線三浦海岸駅、または津久井浜駅からそれぞれ徒歩約10分。海に面した通りから1本入った住宅街に立つ。古民家をリノベーションした趣のある建物で、白いのれんとのぼりが目印

「遡ると、子どもの頃から青果店に近所で採れた野菜が売っていないことに違和感があったんです」と語るのは、オーナーの西村まさゆきさん。
大人になり、農家を継いだ友人の祖母にその疑問を投げかけたところ、農産物は流通のための規格に合う「規格内野菜」と、その基準を満たしていない「規格外野菜」とに選別されていること。また規格外野菜は売り物にならないため、ほとんどが破棄されていることを教えてもらったという。

「全国共通の規格を設けることで、決まったサイズの段ボールの中に、サイズも品質も一定の野菜が何個入っているかが箱を開けなくてもわかる。つまり取引する上での信頼ですよね。これにより買う側は安心してオーダーできるし、農家さんもたくさん買ってもらえて安定した収入が得られる。消費者にも農家にもちゃんとメリットがあって悪いことではないんです。ただ、その一方で弾かれてしまうものが出てくる。規格外と言っても、形がちょっと不揃いだったりするだけで、味や品質は問題ないので捨ててしまうのはもったいない。それも売れたらもっといいんじゃないの?と考えたのがスタートでした」

オーナーの西村まさゆきさん

そこでまずは、友人とともに規格外野菜を回収して販売する事業計画を立てた。しかし、野菜を無料で譲ってもらえるとしても、運搬費や人件費など、必要経費を加味して価格設定をすると、スーパーよりも高い値段になってしまうことが判明。
「SDGsの意識が広まった今なら売れるかもしれませんが、それをやろうとしたのは10年ほど前。この値段で買う人はいないと判断し、泣く泣く断念しました」

それでも、規格外野菜をなんとかしたいという思いは沸々とし続けていた。やがて2020年にコロナ禍でキッチンカー販売の補助金が支給されることを知り、新たな考えが浮かぶ。
「高い野菜は売れなくても、料理なら買ってくれる人がいるんじゃないかと。さらにキッチンカーなら設備投資も少なく済むということで、2021年に青空レストランのような形でオープンしました」
その時から、コンセプトに共感した現在の料理長・安斎敦郎さんが調理を担当することに。

キッチンカーはすぐに評判となり、翌年には固定店舗での販売に移行、さらに規模を拡大して2024年8月に現在の場所に移転した。

その日入荷した野菜の種類や量を見てメニューを決定している 写真:お店から

こうして、念願だった規格外野菜の販売が、料理を提供する形でついに実現。その時からルールを決めて実践しているのが、野菜は無料で提供してもらうのではなく、農家さんに決めてもらった値段で買い取るということ。
「それを成立させるために、お店から10分圏内の距離にある農家さんに限定して取り引きすることにしました。回収のための経費や、仕分けしてもらう手間や時間をかけることなく、農家さんが“今日あるよ”と連絡をくれた時にすぐに取りに行けるように」

この日入荷した魚は、太刀魚とムツの幼魚「ムツゴ」。尾の部分が食べられて欠けていたり、口元に傷があったりして市場には出せないが味や鮮度には遜色ない。ムツゴは、サイズが小さく、さばく手間のわりに食べられる身が少ないため市場で値が付きにくいという

近隣の農家や畜産などの生産者、漁師など、理解して協力してくれる人が少しずつ増え、最近では自ら届けてくれることも増えてきたそう。
「量も値段もわからない状態で仕入れることも多く、正直怖い部分もありますが、基本的には言い値で全量買い取っています。もちろんそれは、食べに来てくれる人たちがいるから。ただおいしい料理ではなく、コンセプトをきちんとお客様に伝えることで、ちょっと高い定食でもそれが生産者さんのプラスアルファの収入になっているとご理解いただいています。協力したいと思っていても、これまでは接点がなかったとおっしゃる方が多いですね」

盛りだくさんの定食など創意工夫を重ねたメニューを提供

「もったいない定食」2,530円。メインの魚は、アジやサバなど、入荷状況に応じて数種から選ぶことができる。写真は+200円の地魚フライ

メニューの一番人気は、メインの魚料理と野菜の副菜7種、小鉢に、炊き込みご飯とお味噌汁、ドリンクという盛りだくさんな日替わり定食「もったいない定食」に、デザートの「三浦プリン」をつけた「もったいない満喫セット」2,890円。

この日のメニューは、佐島でとれたサバのカレーフライと、副菜はスズキのハーブマリネ、フレッシュミントを使用したキャロットラペ、レンコンの海苔きんぴら、そら豆の塩ゆで、素揚げしたさつまいもの塩バター和え、放牧豚のコロッケ、キャベツとオーガニックパクチーのナムル。やりいかの煮付けの小鉢に、放牧豚とひじきの炊き込みご飯といろいろきのこの味噌汁。見た目も華やかで、どれも丁寧に作られたことがわかる料理が並ぶ。

野菜の副菜7種

料理はすべて化学調味料不使用。海とできるだけ変わらない塩を造るために「天地返し」という技法で作られた山口県・油谷島産の「100ZEN海の塩」など、自然の恵みを生かした調味料を使用。素材本来の味を生かしつつ、体に優しく満足感の高い味わいとなっている。
また、メニューにはそれぞれ独自に定めたフードロス削減率が表示されており「もったいない定食」「もったいない満喫セット」はフードロス削減率70〜90%!

「三浦プリン」単品550円

「三浦プリン」は、放牧牛のミルクと平飼い卵、きび糖に、塩こうじをブレンド。濃厚な硬めプリンに、ほろ苦いカラメルソースを合わせている。
写真のプレーンとともに、夏は枝豆、秋はカボチャ、冬はさつまいもといちごなど、季節ごとの規格外・余剰の野菜や果物を使ったフレーバーも用意されている。

「日替わりカレー」1,980円のフードロス削減率は40〜60%。写真はチキンカレー。入荷状況により放牧豚を使用することも

もったいない定食と同じ7種の副菜に、カレーを組み合わせた「日替わりカレー」も、規格外食材を上手に生かした逸品。
チキンカレーには、卵を産まなくなった「親鳥」の肉を使用。通常、若鶏に比べて肉質が硬いため一般の市場には流通しないが、6時間かけてじっくり煮込むことで、やわらかく旨みたっぷりに。辛さは控えめながら7種のスパイスによる奥深さもあり、味わいは本格派だ。

「フルーツソーダ」660円

季節ごとの果物を使ったフルーツソーダも、幅広い世代に人気。この日の果物はいちご。近隣のいちご農家で、いちご狩りの季節が終わり処分されてしまう小さく形が不揃いのいちごや、熟れすぎたいちごをシロップにしてソーダ割りに。ソーダの爽やかな刺激とともに、いちごの甘酸っぱい風味が口いっぱいに広がる。

海辺の雰囲気を感じられる空間で贅沢ランチを

店内は柱や梁に古民家の趣を残しつつ、吹き抜けの天井など開放感があってくつろげる雰囲気

全20席ある現在の場所に移転してからは、子ども連れのファミリーや団体客も訪れるようになり、食材の仕入れ量もアップしているという。
副菜を残さず食べられたらガチャポンを回してご褒美がもらえるという、食育を意識したお子様向けメニューも好評だ。

すぐ近くの北下浦漁港で余っていた漁具の「ブイ」を再利用したライトもいい雰囲気
2階のテラス席からは、金田湾が見える
店内の一角では料理に使用している「100ZEN海の塩」のほか、未利用魚を活用した出汁醤油なども販売
これまで喫茶店「御自愛喫茶」として営業していた2階も一体となり、6月からは全席で食事・喫茶利用が可能に

生産者、お店、消費者の誰もが無理することなく、フードロス削減のサイクルを実現させている「もったいない食堂」。今後についても、そのスタイルは変えないと西村さん。
「取引する生産者さんの範囲が最近では車で30分圏内まで広がっていますが、今後店舗を増やすなどは考えていません。それよりも今できることをより良くしていけたら。環境問題についても、そんなに躍起になって考えることはないと思っているんです。うちの店も毎日といわず2、3カ月に一度、三浦まで足をのばして、三浦の食材で作った料理を食べるちょっとした贅沢ランチとして利用していただければいいのかなと。それだけで、生産者さんに直接エネルギーとして届きますから」

義務感ではなく、時々おいしいランチを堪能するだけ。それが誰かの力になる。そんな選択なら、誰でも気軽に続けていけそうだ。

※価格はすべて税込


<店舗情報>
◆もったいない食堂
住所 : 神奈川県三浦市南下浦町上宮田530
TEL : 050-5595-2176

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/

文:當間優子、食べログマガジン編集部 撮影:ジェイムス・オザワ

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