若隆景 2敗堅守 安青錦を下し勝ち越し「一番一番集中してやっていく」

「大相撲夏場所・10日目」(20日、両国国技館)
小結・若隆景がウクライナ出身の安青錦を肩すかしで退け、勝ち越した。角界入り前に憧れを抱かれ、幕下時代に交流があった相手に、先輩の貫禄を示した。綱とりに挑む大関大の里は一山本を押し倒し、無傷10連勝で後続に2差をつけた。横綱豊昇龍は宇良を送り出し、昇進2場所目で初の勝ち越し。大関琴桜は関脇霧島に寄り切られて4敗。無敗の大の里を、2敗で豊昇龍、若隆景、伯桜鵬、安青錦が追う。
表情を変えず勝ち名乗りを受けた。若隆景は「最後の動きはいいのでは」とうなずいた。低い体勢で押し合い、右を差した。強引に前に出る安青錦に、右に回り込みながら肩すかしを決めた。
ロシア侵攻から逃れ、2023年秋場所で初土俵を踏んだ安青錦。アマ時代には、小さな体で下からの攻めを貫く若隆景が憧れだった。新入幕の春場所で11勝を挙げて敢闘賞。今場所は2日目から8連勝。若隆景は「前傾で勢いのある若い力士。対戦する番付に上がってきた。自分も負けないように」と警戒していた。
幕下時代の安青錦に稽古を付けたこともある。荒汐部屋の床山が、安治川部屋力士のまげを結う縁で自ら向かった。春巡業で「相撲もうまいし、体の力も強い。肌を合わせて分かった。本人に『すぐ上がるから』と言いました」と明かした。
その際は初めての巡業に戸惑う安青錦を、支度部屋で近くに呼んだ。「巡業初日に話したら『分からないことがたくさんある』と言っていたので」と面倒も見ていた。
23年春場所の琴ノ若(現琴桜)戦で右膝前十字靱帯(じんたい)を断裂。手術とリハビリで番付を下げたが、同年初場所以来となる三役として勝ち越し。完全復活ムードを示した。
師匠の荒汐親方(元幕内蒼国来)は「場所前に初めて稽古をこなせた」と話す。膝の痛みを訴えず、番数も1日10番弱から2倍ほど増えた。体重は久々140キロ台に。「(大関を)口に出すことはないけど、私は目指してほしい」と、さらなる成長を期待した。
11日目の相手は無敗の大の里。若隆景はクールな表情で「一番一番集中してやっていく」とキッパリ。綱とり一直線の大関を止めてみせる。