1カ月で見えた、25年度「新社会人」の特徴はコレだ
2025年度の新社会人の特徴と、上司ができる上手な付き合い方を紹介します(写真:Fast&Slow / PIXTA)
こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」の大野萌子です。
4月に新入社員を迎え、彼らとの関係作りに試行錯誤している方々も多いのではないでしょうか。入社早々、退職代行で辞職を申し出てきたなどと耳にしようものなら戦々恐々とするのもうなずけます。
昨今はハラスメント防止の義務化もあり、余計に気を遣わざるを得ない中で、彼らとうまく付き合っていくためのコツをお伝えできればと思います。
コロナ禍に青春を過ごした世代
まずは、彼らの特徴を知ることから始めましょう。もちろん、個々人の特性はありますので、十把一絡げというわけにはいきませんが、背景を知ることは大切です。
今年、大卒で入社した人たちの多くは、高校2年生の終わりから新型コロナウイルス感染拡大を経験し、その後、2023年5月に5類に移行したときには、大学3年生になっていました。高校最後の授業やイベント、大学受験、大学生生活のスタートは、閉ざされた環境の中にいたことになります。
受験期の葛藤や高校生活を締めくくるイベント、別れや出会いなどの、本来であれば怒涛の如く経験するであろうことが、オンライン上で行われてしまいました。明らかな経験値不足です。
これにより、人との関わりが希薄になってしまったため、他人との距離感をどのようにとっていいのかわからないという相談が目立ちます。怖くて慎重になりすぎるがあまり、距離を詰められないというものです。反対に、今までの分を取り戻そうと躍起になり、ぐいぐいいってしまうためにうまくいかないということも聞きます。いずれにせよ、うまく距離感がつかめないということが起きているのです。
人間関係は、実際の付き合いの中で、繰り返しやり取りをしながら学んでいくものです。コロナ禍ではそれが皆無になってしまっていたのですから、ある意味では苦戦するのも当然といえます。関わり方に慎重にならざるを得ない彼らには、こちらから歩み寄る姿勢が必要になります。
何を考えているかわからないから声をかけづらいとか、ハラスメントを案じて、できるだけ関わらないようにするでは、一向に距離は縮まりません。基本的に挨拶はすると思うので、プラスαとして声かけができるとよいですね。
しかし、その際の雑談の内容をどうしたらよいのかが、最近多く寄せられる悩みでもあります。天気と業務の話だけしかできないのはいただけません。プライバシーの侵害などという脅しに屈せずに、必要以上に神経質にならないことが大切です。
洋服が似合っているとか、髪を切ったこととか、休みの日は何をしているかを尋ねても、ハラスメントにはなりません。会話のきっかけにする分には、問題ないのです。相手が答えにくそうにしていたり言いよどんだりしているのに執拗に聞き出すことや、何も答えていないのに邪推で決めつけるようなことを言わなければ全く問題ありません。
雑談ができる関係性を作ることは、ちょっとした相談がしやすいことにつながります。あえて相談の時間をとってもらうほどではない、少し気になることや、些細な疑問点をやり取りできることが、職場のすれ違いをなくし、トラブルを早めに回避し、信頼関係を築くことになるのです。
人事担当者が話す新社会人の特徴とは
また、今年の新入社員の傾向について人事担当者に話を伺うと、「非常にまじめで基本的な能力の高さがあるが、挫折が少なく不確実さを避ける傾向が強い」という声を多く聞きます。
フルオンライン授業になったことで、それが顕著に表れているとも言えます。出席をとった後に大教室の後ろ扉からそっと出ていくということもせず、新歓コンパやサークル活動にのまれることもなく、ある意味では勉学に集中できる環境であったため、知識が豊富なのもうなずけます。
一方で、ネット検索がデフォルトで、何をするにも詳細に確かめてからでないと動けないという一面もあります。実際に、何かをする前に、徹底的に調べて比較します。
例えば、レストランで食事をする際には、まずお店のHPやインスタ等をチェックし、店の外観や内観、メニュー、値段、口コミ、アクセスを調べ、さらには、乗換案内で時間を決めてからでないと行動しないというのがデフォルトです。
こうした傾向をふまえると、見通しを立てた指示や指導が必要だということがおわかりいただけると思います。自主性を育てたいからと「適当に頼んだよ」では、全く動けないどころか、見捨てられたとさえ思ってしまいやすいのです。業務指示は、具体的に何を、どこまで、いつまでにやる必要があるのか、わからないときは、どこで調べる(誰に聞くとよいのか)を最初のうちは示す必要があります。
コピーの仕方がわからなくて、コピー機の前にたたずみスマホでやり方を検索していたということは何年か前から聞く光景でしたが、最近は、コピーを頼んだら、コンビニに行ってコピーして、領収書を持って戻ってきたという話も聞きました。コピーは、コンビニでするものというのがデフォルトになっていたのでしょう。決して笑えない話です。
こうした場合に、「そのくらいわからないでどうする」とあきれるのではなく、わからないことを前提にスモールステップで教えることが必要になってきます。「仕事は先輩や上司の背中を見て覚えろ」はもはや時代遅れだと思った方がよいです。
部下との相互のやり取りを意識しよう
実体験が欠落しているのは決して彼らの責任ではありません。わかりやすい言葉で、具体的に伝え、一方的に指示するだけでなく、それを理解したかを確認する相互のやり取りを心がけましょう。
そうして関わっていくことによって、相手の意向やスキルを知ることにもつながりますし、やり取りを通じて悩みや不調を早い段階で察知できるメリットもあります。気負わずに、率直に伝えることを大切にして、信頼関係を築いていただけたらと願います。
(大野 萌子 : 日本メンタルアップ支援機構 代表理事)