「人生が楽しくなった」と笑う高齢の父が「500万円むしり取られていた」一部始終。高齢者が高齢者を騙す“恐ろしい手口”

親近感や安心感を与えながら、孤独や寂しさに付け込む巧妙な罠。特にターゲットになりやすいのは、ひとり暮らしの高齢者や、家族とのコミュニケーションが減った方々。高齢の家族と離れて暮らしている人は特に、日常的な気配りやつながりが大切です。
◆金融会社に突然やってきた「高齢の父親を心配する女性」
沙彩さんが勤める金融会社に突然、慌てた様子で訪ねてきたのは、小西静香さん(仮名)と名乗る40代後半の女性。小西さんは10年ほど前に現在の夫と結婚し、子宝にも恵まれています。家庭内に問題はなく、確認したいのは実家でひとり暮らしをしている実の父親のことだと言います。
「小西さんは当社の顧客ではなかったので突然の来店に驚きましたが、ひとまずお話を聞くことにしました。すると、小西さんのお父さんは数年前に妻(小西さんの母)を亡くして独り身。子どもがいないうちは頻繁に様子を見に行っていた小西さんですが、それは出産をキッカケに変化します」
仕事と育児で多忙になり、就寝はいつも夜中で起床は朝5時頃という毎日。父親のことは気にはなりつつも、疲れから億劫な気持ちが先に立ち、足が遠のいていきました。ほぼ1年という間隔を空けて久しぶりに実家を訪ねると、気難しかった父親がやわらかくなっています。『人生が楽しくなった』と笑顔も見られるようになっていました。
「お父さんの様子が気になった小西さんですが、『よい変化だし、問題なさそう』と何も聞かずに実家をあとにしました。でもそれから半年ほど経って実家を訪ねたとき、大きな違和感をおぼえました。
実家にたくさんあったはずの骨董品が、なくなっていたそうです」
◆実家から消えた“亡き母”のお気に入りの絵画
なくなった骨董品は、ひとつだけでなくいくつも。そして、亡くなった母親が気に入っていた絵画も消えていました。昔から趣味でコツコツ集めていた骨董品だけでなく、絵画までゴッソリと消えていることに驚いた小西さんは、人生で初めて父親を問い詰めます。
「すると、小西さんのお父さんが、公園で知り合った浩美さん(仮名)という60代女性に頼まれ、貯金や毎月の年金をほぼ渡していたことが発覚。それでは足りなくなったため、これまでに購入してきた骨董品や絵画まで売っていたのです」
そして父は「これは、俺が好きでやっていること」などと言い、「浩美さんとの約束の時間だから」と出かけようとします。そこで小西さんはそっと父のあとをつけ、約束の場所へ。
◆500万円分以上のお金や品物の行き先は
「小西さんのお父さんは、『浩美さんが別れた旦那さんの借金を返済中で生活費に困っているから、いまだけ支えてあげている』と言っていたそうですが、すぐにそれはウソだと判明しました。
浩美さんという女性がお父さんと過ごした時間は、会ってからお金を受け取るまでのほんの30分程度。その後、お父さんが浩美さんのもとを去ってすぐに、派手でチャラチャラとした40代ぐらいの男が現れました。浩美さんはその男に甘えた様子で、お父さんから受け取ったお金を封筒ごと渡していたのです」
父の変化を感じてから半年とちょっとで500万円以上のお金や品物が消えていたこともあり、小西さんはピンときます。