会場にあるフォトスポット 『ネコヅメのよる』より

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 画家 / 絵本作家・町田尚子の、デビュー作から最新作までの絵本原画や装画などを集めた特別展が、芦屋市立美術博物館で開かれている。2025年6月15日(日)まで。

『ネコヅメのよる』原画 岩崎書店(2021年 / WAVE出版 2016年)

 町田尚子は、2007年に「小さな犬」でデビュー。絵本の物語を大胆な構図と繊細なタッチで描き、その文章が生きる空間を表現している。会場には初期の作品から最新作、同館のために描き下ろしたオリジナル作品、スケッチなどの関連資料250点以上が並ぶ。

『ねこはるすばん』原画 ほるぷ出版(2020年)

 タイトルの「隙あらば猫」は町田の座右の銘で、猫を主人公にした絵本だけでなく、童話や怪談絵本にもどこかにわき役として猫が登場する。まさに「隙あらば猫」だ。絵の中の猫たちは、毛並みからしぐさ、表情まで緻密に表現され、こちらをじーっと見て、何かを語り掛けてくるようだ。その背景には町田の鋭い観察眼と猫を慈しむ眼差しがある。それらはスケッチや関連資料からも感じとることができる。絵本制作のためのメモやスケッチには、登場する猫1匹1匹について特徴や名前が記されている。

『どすこいみいちゃんパンやさん』原画 ほるぷ出版 (2023年)みいちゃんは保護猫。耳の形からわかる
『ネコヅメのよる』原画 岩崎書店(2021年 / WAVE出版 2016年)

 芦屋市立美術博物館のために描かれた作品は3点。同館1階の吹き抜けに展示されている『出発進行!』は、まさにこの場所を描いたもの。「『ラッパを持つ猫』は、小出楢重の『ラッパを持てる少年』(1923年)をモチーフにしたのではないかと考えられます」と、同館・広報担当の乾紀子さん。同館の敷地内にある小出楢重のアトリエ前と思われる場所で、ラッパを持って立つ猫。その衣服も「小出の作品と似ています」と話す。残る1点は同館の搬入口が描かれており、「こんなところに注目してもらえるとはびっくりでした」という。

『ラッパを持つ猫』原画 2025年 芦屋市立美術博物館 描き下ろし作品
芦屋市立美術博物館敷地内にある小出楢重のアトリエ(外観)

絵本を描くコツがあるとしたら、
それは、猫のあとをついていくこと。
だいじなのは、
最後まで猫のすがたを見失わないこと。」 とは町田の言葉。

 どの作品にもそんな町田の思いが詰まっている。

会場にあるフォトスポット 『ネコヅメのよる』より

■「隙あらば猫 町田尚子絵本原画展」
2025年3月15日(土)〜6月15日(日)
芦屋市立美術博物館 (芦屋市伊勢町12-25)
休館日:月曜日(5月5日(祝)は開館)、5月7日(水)
10:00〜17:00(入館は16:30まで)

芦屋市立美術博物館