2024年8月に当時世界最高齢の117歳と168日で亡くなったマリア・ブラニャス・モレラさんの研究により、長寿の秘密を科学的に解明する手がかりが発見されました。

The Multiomics Blueprint of Extreme Human Lifespan | bioRxiv

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.02.24.639740v1

Study on World's Oldest Woman Confirms How to Live Past 100 : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/study-on-worlds-oldest-woman-confirms-how-to-live-past-100

スペインのホセ・カレーラス白血病研究所の研究者らが率いる研究チームによると、ブラニャスさんが暮らしていたカタルーニャ州の女性の平均寿命は86歳とのこと。100歳以上のお年寄りの中でも、110歳以上生きる「スーパーセンテナリアン」は10人に1人と非常にまれですが、平均より30年以上も長生きしたブラニャスさんは特に珍しいケースと言えます。

研究者らが、さまざまな分析技術とインタビューを駆使してブラニャスさんの生活史を調べたところ、ブラニャスさんが長寿と健康的な老化のために推奨される多くの項目を満たしていることが確かめられました。



まず、ブラニャスさんは精神的、社会的、身体的に活発なライフスタイルを送っており、家族や友人と充実した時間を過ごすなど、認知症予防のための要素はすべて備わっていました。また、食事も長寿につながるとされている地中海式料理を中心に、健康的な食生活を送っていました。

特に注目されているのが、ブラニャスさんの好物であるヨーグルトで、ストレプトコッカス・サーモフィルス菌とラクトバチルス・デルブルエッキイー亜種ブルガリクス菌を含むヨーグルトを毎日3種類食べていたというブラニャスさんの腸内細菌叢(そう)のバランスは実年齢よりはるかに若々しい状態だったとのこと。

研究者らは論文の中で「微生物は、私たちの体の代謝物の構成だけでなく、炎症、腸の透過性、認知、骨と筋肉の健康を決定する上でも重要な役割を果たしています」と指摘しました。



また、生まれ持った遺伝子も重要で、ブラニャスさんは免疫システムの強さや心臓病に対する保護効果、がんリスクの低減に関連する遺伝子を多く持っていたとのこと。

年を重ねる中で遺伝子に蓄積されるDNAメチル化を利用して生物学的な年齢を分析する「エピジェネティック・クロック」に関する調査でも、ブラニャスさんの遺伝子は実年齢より若々しいことが確かめられました。

この結果について、研究チームは「驚くべきことに、DNAメチル化に基づく年齢の異なるアルゴリズムはすべて同じ結果で、M116(ブラニャスさんのこと)は実年齢より生物学的年齢の方がはるかに若く、これは分析対象となった3つの異なる組織すべてで起きていました」と報告しました。

研究チームは他にも、ブラニャスさんの代謝が非常に効率的で「悪玉コレステロール」の値は低く、「善玉コレステロール」の値は高いこと、また炎症レベルが低いことなどを挙げています。



ブラニャスさん自身は、長生きの理由を「規則正しい生活と快適な環境」としていましたが、それ以外にも複数の要因が長寿を支えていたことが、今回の研究により示唆されています。

「この研究から見えてきたことは、極端な高齢になることと不健康になることは同じではなく、ふたつのプロセスは分子レベルで区別することができる、という点です」と研究者らは論文に記しました。