【木村 隆志】「重病ではなくひと安心」とはいかない…浜田雅功の休養で、テレビ・広告・芸能の各業界がザワついている「本当の理由」
「GW明けには復帰」の報道も
10日、吉本興業がダウンタウン・浜田雅功の一時休養を発表すると、Xのトレンド1位を記録するなど日本中に衝撃が走った。しかし、現在では「ホッとしている」という人が多いのではないか。
当初は「体の不調」「当面の間、静養することが望ましい」という吉本興業の公式コメントに具体性がなかったからか、一部で“重病説”や“レギュラー降板説”などが流れていた。
ただ、妻・小川菜摘が自身のブログで「ゆっくり過ごしてもらおうと思っています（たまには好きなゴルフを楽しみながら）」などのコメントをアップ。さらに周辺関係者による「重病ではない」などの声も徐々にあがりはじめており、「ゴールデンウィーク明けの復帰を予定」という安心材料になりそうな記事も報じられている。
相方・松本人志の活動休止から1年以上の時が過ぎ、浜田も休養することで「ダウンタウンが消えた」と心配していたファンにとっては、ひと安心というところだろう。
ところがその一方でテレビ、広告、芸能の各業界関係者は、「重病ではなかったからひと安心」とは言えず不安を抱く事情がある。
「浜田の穴」は大きな問題ではない
もし2〜3ヵ月の限定的なものだったとしても、浜田が休養することの影響は大きい。
実際、浜田はこの1週間だけでも、『ジャンクSPORTS』（フジテレビ系）、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで！』（日本テレビ系）、『水曜日のダウンタウン』（TBS系）、『プレバト!!』（MBS・TBS系）、『ダウンタウンDX』（読売テレビ・日本テレビ系）、『オオカミ少年 ハマダ歌謡祭』（TBS系）、さらに関西ローカルの番組にも出演していた。
ただ、これらはすでに構成・演出が視聴者に浸透し、番組自体のファンも多い。どんなに浜田が象徴的な存在だとしても、数ヵ月程度の不在だけで見切られるリスクは低く、むしろ「浜田雅功不在」を希少価値とみなし、何らかの実験的なトライをすることも可能だろう。吉本興業には“代役”ではなく一度限りの“代打”をこなせる後輩が多いことも含め、「浜田の穴埋め」という点での不安は少ないはずだ。
ではテレビ局、広告代理店、芸能事務所の関係者は、どんなことに不安を抱いているのか。そのヒントは昨秋の番組改編にある。
昨秋から「ベテラン回帰」の流れ
昨秋の番組改編期、民放各局は意外な編成戦略で一致していた。
その最たるところは、TBSの新番組『THE MC3』。中堅芸人のかまいたち、モグライダー、見取り図、ニューヨークがメインの『ジョンソン』を終了させて、ベテランの中居正広（52歳）、東野幸治（57歳）、ヒロミ（60歳）を起用した同番組をスタートさせた。
その他でも、TBSは生瀬勝久（64歳）がMCを務める『巷のウワサ大検証！それって実際どうなの会』のレギュラー放送をスタート。フジテレビも新番組の『この世界は1ダフル』に東野幸治（57歳）、『ザ・共通テン』にヒロミ（60歳）を起用。テレビ朝日も有働由美子（55歳）の冠番組『有働Times』をスタートさせるなど、「ベテラン回帰」という一致した戦略を見せていた。
この戦略は唐突なものではなく背景がある。さかのぼること5年前の2020年の春、コロナ禍の衝撃で忘れられがちだが、テレビ業界は視聴率調査の大幅なリニューアルによって戦略の変更を求められた。
それまでは日本テレビを除くほとんどのテレビ局が、年齢層を問わず視聴率を上げることに注力していた。録画視聴に加えて配信視聴も増え、リアルタイムでテレビを見る人が減る中、視聴率を取るために中高年層狙いの番組に偏っていたのだが、リニューアルで様相が一変。年齢性別などの細かい視聴データが得られることになり、スポンサーの求める主に10〜40代の視聴者層をターゲットに据えた番組制作が進められていった。
若年層にウケそうな企画やファミリー層向けの番組が増え、バラエティだけでなくドラマでも刑事・医療モノが減って恋愛・学園モノが復活。おのずと出演者も若返っていた。しかし、思うような結果が得られず、昨秋に「ターゲットの上限を40代から50・60代にまで引き上げる」という戦略の見直しに至った経緯がある。
同世代に影響を与えるパワフルな姿
ただ、各局が出演者の若返りを図っていた2020年春から昨秋の間も浜田は例外で、60代の大ベテランながら最前線でパワフルに活躍。結果的には、安定したスキルを見せて、全面的な世代交代をさせず、一定以上の結果を出し続けてきたことが、昨秋の「ベテラン回帰」につながったと言っていいかもしれない。
つまり、「浜田」というパワフルな大黒柱がいてこそ他のベテランたちも、そのスキルや健在ぶりを感じさせやすいのだが、今回の休養によって昨秋からの勢いが削がれてしまった感があるという。
しかも「ベテラン回帰」のシンボル的な番組であった『THE MC3』は、「中居正広のトラブルと引退によって放送中断され、新たなMCも決まっていない」という逆境下にある。
浜田に近い世代と知名度の芸人で言えば、出川哲朗（61歳）、内村光良（60歳）、南原清隆（60歳）、今田耕司（58歳）、太田光（59歳）、加藤浩次（55歳）、上田晋也（54歳）、有田哲平（54歳）、岡村隆史（54歳）あたりだろうか。
いずれもスキルへの不安がない一方で「以前より芸風が落ち着いた」というイメージがあり、浜田のようなツッコミやボケだけでなく、リアクションもロケも歌もこなすパワフルなベテランの希少さは際立っている。
また、くら寿司などのCMに出演している姿を見る限り、浜田は「ベテランがまだまだ元気」「ベテランであることを感じない」という好印象を同世代の芸人にも波及させている感があった。数いるベテランの1人ではなく、同世代に“現役感”を与える重要な存在ということなのだろう。
そのためテレビマンや広告マンの中には、「大病でなかったのであれば何よりだが、“休養”“加齢”“疲労”という印象が気になってしまう」という人もいる。吉本興業以外の芸能事務所関係者も、浜田は自社のベテラン・中堅タレントにさまざまな影響を及ぼす存在だけに、これまで同様のパワフルな姿で戻ってくることを願っているのではないか。
不透明な「松本人志との新たな仕事」
そしてもう1つ、主にテレビマンが気にかけているのは、松本人志の活動再開。
松本は昨年11月、文藝春秋などに損害賠償や訂正記事を求める訴訟を取り下げ、翌12月には独自のプラットフォームによる『ダウンタウンチャンネル（仮）』の来春スタートを示唆していた。さらに「復帰の場は浜田と2人で」という意思表示もしていただけに、浜田の休養に注目が集まるのは当然だろう。
はたして松本は浜田がテレビに復帰するまで『ダウンタウンチャンネル（仮）』のスタートを待つのか。それとも1人でスタートさせて復帰を待つ形にするのかはわからないが、間違いないのは浜田に新しい仕事が増えること。
これまでの仕事だけで休養せざるを得ないほどの状態になった以上、復帰後にかかわるコンテンツの数を増やすことは現実的ではないだろう。浜田自身とテレビ局にとって重要度の低い番組から整理していくことが予想されるが、松本との「ダウンタウンチャンネル（仮）」が軌道に乗り、評判を得るほどそのスピードは加速しかねない。
実際、配信での新たなコンテンツが「浜田にとって心身の負担が少なく、居心地のいい場所になる可能性がある」と不安視しているテレビマンもいるという。
松本は世間の感情を踏まえると、疑惑が残るままでテレビへの復帰はまだ難しそうなだけに、浜田の休養とは関係なく各番組で「ダウンタウンが不在」という状況が続いていく。
『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで！』、『水曜日のダウンタウン』、『ダウンタウンDX』という番組名のまま続けていくのか。それとも「松本の不在」に「浜田の負担軽減」という理由を加えることで終了に進んでいくのか。
2025年はダウンタウンの2人にとって転機の1年になるのかもしれない。
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