推し活が“推し喝”に…押し付ける理想は幻想?アイドル「元カレ目線で語る人が年々増えた」 ファン「買った商品が不良品だったら苦情を言う感覚」

先日、とあるアイドルファンのポストが炎上する騒ぎに。そこには「涙の説教タイムへ」。この一言とともにイベント参加券の写真をアップして推しを説教しに行くとアピール。
【映像】ファンから実際に届いた“生々しい”DMのスクショ(長文)
投稿者に話を聞くと、推しが怪しいものをプロモーションしていたから仕事は選んだほうがいいと注意しに行くつもりだったという。しかし、ポストを見た他のファンから批判の声が殺到した。
ファンだからこそ推しには理想の姿であってほしい。しかし、推しの行動への要求はどこまで許されるのか。アイドルグループ『にっぽんワチャチャ』の鈴木Mob.さんは、約5年のアイドル活動の中で「ファンからの押し付け、めちゃくちゃあった」と話す。とはいえファンを蔑ろにはできないため、アイドルたちは日々葛藤しながら活動をしている。
一方、推す側はどんな思いで理想を伝えるのか。アイドルや芸人が大好きなサトシさん(20代)は、応援していた芸人の舞台を見たあと、「あなたたちが面白いものをできることは知っています!もっと本気でやってください」とクレームに近い願望を直接DM。またSNS上で「コントより漫才のほうがいい」などと要望していた。ただ、こうした行動は決して理想を押し付けているわけではないという。
理想の間で交錯するアイドルとファン。果たして分かり合える道筋はあるのか。『ABEMA Prime』では、当事者と共に、理想の押し付けについて考えた。
■ファンから理想を押し付けられるアイドル・鈴木Mob.さん

鈴木Mob.さんは、ファンから言われた押し付けについて、「『髪型変えたら推し変する』とか。キャラクターについても、私は20歳になりたての頃にアイドルデビューして、そのときはお酒を全然飲んでいなかったが、もう25歳でお酒を飲むようになったら、『お酒飲まないキャラどこ行ったの?』みたいなことはよく言われる」と明かす。
「SNSでは曲やダンス以外でバズらないで」との声もあるそうだが、「『今日バズったよね、好き度が減った』みたいなことを細かく送ってくださるファンの方、直接言ってくださる方もいる。特典会でアイドルはチェキ会があるので、そこで『ごめん、ひとつ』みたいな感じでお説教タイムがあったりする」。
実際にファンからのDMでは「あの頃に戻ってください。そして、もう一度輝いてください。このままだと、推せなくなります」と送られてきたことも…。この内容に対して、「自分は今こう思われているんだ、というアンケートをとった気持ちになる。今後どうしていこうかという参考にするようにはしている」と考えている。
しかし、「目の前のお客さんだけを満足させるアイドルはこの世にごまんといる。だから今後続けるために、もっと好きになってもらう、もっと見つけてもらうためには、今のレベルでしか売れないのだから、どんどん進んでいかなくてはいけない。自分が売れていくために進んでいることを指摘される方は、結構多いなと感じる」と本心を語った。
ファンからの意見については、「全く聞かないわけではなく、生配信で『こういう問題があるんだけど、みんなどうしよう?』みたいな感じでファンの方と会議をするようにしている。すごい否定派の人は逆に少ない」と述べた。
■ファンの理想に答えてほしい!“推す側”の要望

芸人・歌手・アイドルなど幅広いジャンルで推し活をしているサトシさん。芸人にDMを送ったりしていたが、どういった思いで伝えているのか。「買った商品が不良品だったら苦情を言う感覚だ。『自分の好みじゃない、もう次は行かなくていい』となるパターンと、『これ面白いか?誰が見てもお笑いライブとして成り立ってない』と思うときの2パターンある。前者の時は、押し付けは一切しない。さすがにサボっているとしか考えられないときに苦情を言う」と答えた。
推しに求める理想像は「ファンの意見を一回全部聞く」ことだといい、「芸人に意見をしたら露骨に嫌われたことがある。全てその通りにしろと言っているわけではない。一回全部聞く。それでどうするか、なぜそうしたかを答える。それが演者側のやるべきこと、やる責任がある」と主張。
サトシさんは直接届くような形で意見を送っているが、ファンの中には、「仲間同士のコミュニティでコソコソ言う。アイドルや本人に好かれたいから、媚びを売る人はいるが、意味が分からない」。
演者側については「お客さんを楽しませる仕事なのに、なぜか立場が逆転している。例えば、好きな髪色でもなくなったアイドルに『わー、かわいい』と言ってあげなきゃいけない。また、好きな方向性の曲ではなくなったときに盛り上げなきゃいけないのは違うだろう」との考えを述べた。
■あなたの理想≠私の理想 どうして人は押し付けてしまうのか?

どうして人は理想を押し付けてしまうのか。人間環境大学講師の二宮有輝先生によると、「相手を自分の一部としてみてしまう」といい、「完璧を求めるときに自分に足りない部分を相手で埋め合わせようとする」「 “ヒト”ではな、自分の価値や自尊心に必要な一つの“モノ”としてみている」という。
Mob.さんは、最近のファンについて、「元カレみたいな目線で語ってくる人は年々増えてきたと思う。昔はこうだったのにな、みたいな。人は進化していく。年も取っていく。そのままで居続けるより前進していく方が魅力的になっていくと思う。あの頃を語れるというのも一つの趣味なのではないかと思った」との見方を示す。
一方で、サトシさんは「“こういう理由だから私はこうしている。だからあなたの思い通りにはならない”という説明がちょっとあるだけで納得できるかもしれない」と述べた。
芸人さんに意見して嫌われたというサトシさんに対して、Mob.さんは「応援してくださるエネルギーは伝わる。サトシさんも一歩間違えてしまっただけで、『ごめんね、まだ応援するよ』と言ってもらえたら、演者さんは嬉しいと思う」とアドバイスする。
また、 「アイドルは歌って踊ってステージを見せる。お笑い芸人はネタを見せて楽しませる。お笑い芸人は意見を聞いて『そうだね、そうだね』とメンタルケアをするのは仕事ではない。だからそこの職業を見間違えてはいけない」と指摘した。
(『ABEMA Prime』より)