4日前に国立競技場で鮮烈ゴールを決め、注目度が急上昇。その中学生MF長南開史(柏U-15)は、「想像以上に記事とか、連絡とかも来てびっくりしました」という「NEXT GENERATION MATCH」(U-18Jリーグ選抜4-1日本高校選抜)から気持ちを切り替えてU-17日本代表での活動をスタートした。

 パラグアイ遠征(2月12日〜2月24日)出発前に行われたトレーニングでは、時折笑顔も。6対6+2では1、2学年上の選手たちと激しく競り合い、その中で精度や一番見て欲しいという「追い越すプレー」も表現しようとしていた。

 FW吉田湊海(鹿島ユース)やFW浅田大翔(横浜FM)ら計5人がキッカーを務めたPK練習では、5人目で登場して右足で成功。その後は、他のDFとともにロングボール対応のメニューに取り組んでいた。現在、自身に不足していると感じているのが守備だ。

「やっぱ守備です。攻撃参加は結構自分の中でできてるなと思っているけど、ヘディングとか1対1の対応とかがまだまだ全然。(ヘディングは)『もっと飛ばせ』って言われていて、守備がまだまだだなと思ってます」と説明。全体練習後の自主練でもヘディングに取り組んでいた。

「NEXT GENERATION MATCH」では、2017年大会の久保建英(レアル・ソシエダ)以来2人目となる中学3年生でのU-18Jリーグ選抜入り。左SBとして先発し、右SH、左SHを務めた。複数のポジションでサッカーIQや技術力の高さ、そして高校3年生で構成された日本高校選抜に球際で上回る強さも披露。さらに、試合終了間際にはセカンドボールを左中間で拾うと、そのままドリブルで攻め上がり、左足シュートをニア上へ突き刺した。

「あの点までは結構バテてて、あんまインパクト残せなくて……。あのシーンでも(味方が後方から)オーバーラップしてたけれど、インパクト残すために自分で打つっていう選択をしました」。そのインパクトは自身が想像していた以上。各メディアが大きく取り上げ、SNSでも「すごい!」「バケモン」「うますぎ」などの声が挙がるなど大きな反響を呼んだ。

 この試合で先制ゴールを決めた吉田とともにハットトリックを掲げていたというが、最後に関係者たちが“全部持っていった”と評した一発。長南にとって新たなターニングポイントになる一戦となったようだ。

 長南は昨年6月1日の日本クラブユース選手権(U-18)大会関東予選で柏U-18での公式戦デビュー。6月22日の横浜FCユース戦で”高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEASTデビュー戦も果たしている。後半戦は先発の座を掴んだが、ターニングポイントになった試合があったという。

「最初、プレミア出て2試合目にめちゃめちゃ当たり負けとかして。相手は尚志です。(藤田優人)監督にも『このままじゃ(U-18チームで出続けるのは)無理だよ』って言われて。そこから強度とかももう一回見つめ直して、そこからまた強度高くできてるかなって感じです」。6月30日の尚志高戦で強度不足を痛感。だが、「負けないように」と意識を変えて臨んだ次戦(7月7日)では、リーグ屈指の強度を誇る青森山田高戦に球際で競り勝ち、運ぶドリブル、スルーパスでも存在感を放った。

 そして、続く流通経済大柏高戦(7月13日)で初先発。自身を変えた一戦は「尚志戦です」と言い切る長南は、自信となった「NEXT GENERATION MATCH」をまた成長への大きなきっかけにするか、注目だ。

 浮ついた部分は見られない。U-17日本代表活動初日後には、「もうあの日(「NEXT GENERATION MATCH」)であの気持ちは忘れて、もうこの代表っていうのがあったので、この次に向けて切り替えてたっていう感じです」とコメント。航空機で2度の乗り継ぎを含むパラグアイ遠征は「こんな長い移動は初めてなので、移動した中で自分がどれだけできるかっていうのが楽しみなので、そういうところも意識していきたい」。と力を込めた。

 U-17日本代表の廣山望監督は各選手の成長を期待し、長南については「(DFの経験はまだ浅いが)コツコツやっていけば、それだけ成長する余地はある選手だから、この海外遠征の機会を逃さず、成長の糧にして欲しい」とコメント。中学生で唯一U-17日本代表入りしている長南が、代表活動も成長のきっかけにする。

 柏U-15時代はボランチやトップ下でもプレー。柏U-18では主に右SBなどを務めてきたが、スピードも活かせるSBのポジションが自分には合っているという。「サイドバックで世界、取りたいです」。目標はSBで世界一になること、またU17アジアカップなどで活躍し、U-20日本代表に「(今年)入りたいです。目指してやっています」。そのためには年上の選手相手でも圧倒しなければならないと考えている。

「プレミア(リーグ)とかでも2個上とか3個上とかとやっている中で、もっともっとこう、年代関係なく圧倒したいなって思ってるので。この海外とやるのも、圧倒して勝ちたいなと思っています」。それが簡単にできるとは考えていない。今年、初参加した柏トップチームでのキャンプでは打ちのめされるほどの差を痛感。「もう課題ばっかでした。全然、自分のプレーを出せなかったから、そういうところも課題」。だからこそ、一つ一つの練習、遠征、試合をコツコツと積み重ねながら大舞台で活躍するための力を身につける。


(取材・文 吉田太郎)