どこが間違い?「10km÷5km=2km」に潜むワナ
単純だけど案外間違える人が多いこの問題、わかりますか?
「算数から勉強をやり直して、どうにか東大に入れた今になって感じるのは、『こんなに世界が違って見えるようになる勉強はほかにない』ということです」
そう語るのが、2浪、偏差値35から奇跡の東大合格を果たした西岡壱誠氏。東大受験を決めたとき「小学校の算数」からやり直したという西岡氏は、こう語ります。
「算数の考え方は、『思考の武器』として、その後の人生でも使えるものです。算数や数学の問題で使えるだけでなく、あらゆる勉強に、仕事に、人生に、大きくつながるものなのです」
そんな「思考の武器」を解説した45万部突破シリーズの最新刊、『「数字のセンス」と「地頭力」がいっきに身につく 東大算数』が刊行され、発売後すぐに3刷と好評を博しています。
ここでは、数字のセンスを高める上で、「単位」に注目するのがなぜ大切なのか、解説します。
「10km÷5km」の答えは「2km」ではない
小学生の算数の勉強で難しいのが、単位を扱う問題です。
「1kmは何cmでしょうか?」
「秒速何cmで進んでいるでしょうか?」
といった問題ですね。
これらの問題は簡単なようで、意外にもかなり厄介です。みなさんも、一度は算数のテストで、単位を間違えて減点されてしまった苦い経験があるのではないでしょうか?
さて、そんな単位を使う算数の問題でいちばん難しいのが、割り算です。
例えばこちらの問題をご覧ください。
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とても簡単そうな問題ですよね。「10km÷5km」と見て、多くの人が「2km!」と即答することでしょう。しかしこの問題、答えは「2km」ではありません。
これは「2」だけ、単位をつけないのが正解になります。
「なんで!?」と思う人が多いでしょうが、これは単位というものがどのようなものなのかを考える上で、とても重要な問題です。
「単位」を意識する人は数字に強い
例えば、「10kmの距離を、5人でバトンリレーする場合、1人何kmを走ればいいか?」という問題の場合は、普通に「2km」と答えることになります。これには「km」という単位が必要です。
しかし、「10km÷5km」というのは、5人のバトンリレーとは違います。「10kmは、5kmが何個分ですか?」という意味です。ということは、ここには「km」はつきません。「2個分」またはただ「2」と答えなければなりません。
これを逆にすると、「5km×2=10km」となります。5kmが2つ分で10kmということですね。
これがもし「5km×2km」だったとしたら、これは面積になってしまいます。縦が「5km」、横が「2km」の四角形の面積を求める問題になってしまいますから、答えは「10km2」になります。
これが、「10km÷5km」の答えが「2km」ではない理由です。
これでもまだ納得できないという人もいると思いますので、こちらの式をご覧ください。
これは、「10km2÷5km=2km」という式です。面積が10km2で、縦の長さが5kmだったら、横の長さは何kmでしょうか? という問題ですね。
「単位」も、分子と分母を打ち消せる
さて、「割り算というのは、同じ数を消すものだ」ということを習った人も多いかもしれません。例えば「2×2÷2」は、2と2が両方なくなって、「2×●÷●」となり、残った「2」が答えになる、と。
「4÷6」は、分数に直すと「(2×2)/(2×3)」となり、分子の2と分母の2をなくして「(●×2)/(●×3)」で残った「2/3」が答えになる、ということですね。
これと同じように考えるのであれば、実は単位も、同じものをなくすことができます。面積とは「○km×○km」の掛け算のことであり、それを「○km」で割るから、「○km」同士で打ち消し合って「○km」となるわけです。
ここで、先ほどの「10km÷5km」に戻りましょう。これは、kmをkmで割っています。これは「2×5km÷5km」となりますから、「5km」を消すことになります。よって、残るのは「2」だけなのです。
この理屈がわかっていると、「距離と速さと時間」の勉強が楽になります。
「分速10cmで走っている物体は、1秒でどれくらい進む?」といった、速度の問題において、単位の理解はとても重要になります。
「距離=速さ✕時間」は単位を見ればすぐわかる
「距離と速さと時間」の関係が難しいと感じる人は多かったのではないでしょうか。「なんで60cm÷60秒で秒速が求められるんだ?」「速さと時間を掛けたら、どうなるんだっけ?」と悩んだ人もいるかもしれません。
これは、単位の勉強をしっかりしていればすぐにわかるのです。「距離÷時間=速さ」と言われてもよくわからないと思いますが、速さは「cm/秒」というような単位で表せることを思い出してください。
これは「cm」を「秒」で割った結果なのです。
「速さ×時間=距離」の頭文字をとって「はじき」で覚えよう! と習った人もいるかもしれませんが、そんな覚え方をしなくても、しっかり単位の勉強ができていれば自分で考えられるわけですね。みなさんぜひ参考にしてみてください。
(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)