「売り上げ毎年100億円増」の3COINS コロナ禍で飛躍した理由「ターゲット層を絞り、母体のアパレル会社のノウハウを応用」
「スリコ」で知られる生活雑貨を販売する3COINSは、ブランドのバージョンアップ後、コロナ禍も後押しして毎年100億円も売上を伸ばしています。30代~40代女性にターゲットを絞ったブランド戦略とは。
【写真】「たしかに昔これだった!」バージョンアップでガラリと変わったスリコ店内と商品の移り変わり「ポップからナチュラルに」(全6枚)
おうちアイテムがコロナ禍でヒット
── コロナ禍で売り上げを伸ばし、ブランドの知名度も上がりました。どのような企業努力が背景にあったのか教えてください。
小林さん:ブランドを2019年頃からバージョンアップさせたのですが、その後にコロナ禍に見舞われました。生活雑貨を主力商品として扱うなかで、おうちカフェなど自宅で楽しめるアイテムを充実させたことが功を奏したと思います。
また、これまでビーチやアウトドアなどの屋外でのレジャーアイテムの需要も多かったのですが、コロナ禍でガラリと変更しました。マスクを中心とした衛生商品や、キッチン雑貨やインテリアなどのアイテムに一気にシフトチェンジしたことと、商品開発から販売までを迅速に対応したところも大きかったと思います。
── ブランドのバージョンアップはどのように行ったのですか。
小林さん:プチプラ雑貨が身近になりお客様の選択肢も増えているなか、改めて何か新しいことをしていかねばらならないという時期でした。ほかとの差別化を図るにあたって、アプリを導入してお客さま情報の集計を行ったところ、予想と違ったデータが得られました。これまでは20、30代のかわいいものが好きな女性のお客さまが多いことを念頭に商品や店舗作りをしていたのですが、改めてデータを見てみると、30代から40代の女性のお客さまが多いということがわかりました。
そこからかわいさよりも、もっとベーシックに使えるものに方向性を変え、現在の主力商品であるベージュなどを基調としたナチュラルカラーで、柄に関しても無地や英字が入っただけというシンプルなものにデザインを変更しました。店舗も、これまでは黄緑やピンクを使ったマルシェのようなかわいらしい内装でしたが、深緑を基調とした落ち着いた木目調などに変更し、誰でも入りやすいお店に変更しています。
── コロナ禍以降、毎年約100億円ずつ売り上げが伸びていると伺っています。店舗数は10年前のおよそ3倍の344店舗まで増えました。
小林さん:ターゲット層より若い世代にも展開をしていきたかったのですが、やはりブランドがメインで展開する生活雑貨との相性もあるので、ボリュームゾーンの30代から40代の女性のお客さまに響く、よりよい商品を届けていこうという方向性で進めていることも影響していると思います。
また、それまでキッズアイテムはクリスマスやハロウィンなどのイベント時に期間限定で商品を販売していましたが、子育て世代のお客さまが非常に多く、需要が多いことわかりましたので、キッズコーナーを常設にしたことによる反響も多くいただいております。
アパレルの4週間サイクルを商品に応用
── 毎週、新商品が出るそうですが、新しい商品はどのように生まれるのでしょうか。
小林さん:各カテゴリーに企画担当者が1、2人いまして、商品開発は「あったら便利」「こういうものが欲しい」という担当者の思いから始まります。アジア圏への海外出張などで見つけた商品を参考にすることもあり、色や使用感などを日本のお客さまが使いやすいようブラッシュアップしています。
企画担当者の趣味が色濃く反映されている商品もあります。今年の人気商品となった推し活グッズは、実際にアイドルの推し活をしている担当者が作っていますので「これ、なんで知ってるの!?」と言った反響をいただくような、リアルに欲しいものが商品化されているとのことで評判もいいです。スタッフの個性を活かした柔軟な環境づくりも会社として心がけています。
── 申し上げにくいのですが、お店に入ると以前よりも300円以上の商品が多くなった印象を受けます。
小林さん:商品の300円均一というのは2015年ころからなくなっています。現在、300円商品は全体の6割ほどです。やはり300円で販売できる商品は限られてきますので、値段で妥協するのではなく、500円、1000円になってしまうけれども、それ以上の付加価値をつけて、「スリコでしか買えない」という商品で満足していただけるアイテムを作っています。
── 人気商品はすぐ売り切れてしまうそうですね。
小林さん:毎週発売される新商品の販売期間は2週間から1か月です。特に売れたものは再生産をかけていき、数か月後に再入荷という形で入ってきます。さらに人気であれば定番商品となります。常にお店を新鮮な状態で保つことを大切にしていますので、季節商材に関しても基本的に1か月で売り切れる数を生産しています。母体であるパルの4週間MDによる在庫管理を徹底しています。
── 今年でブランド誕生から30周年だそうですね。改めて今後どのようにブランドを展開していきたいですか。
小林さん:3COINSのブランドコンセプトである「あなたの“ちょっと幸せ”をお手伝いする雑貨店」を常に念頭に置いて商品作りや店頭での接客をしております。プチプラ雑貨が世間にたくさんあるなかで、「スリコでいい」ではなく、「スリコがいい」と思ってもらえるブランドにしようというのを心がけており、お客様の生活に寄り添うようなブランドであり続けるための努力を重ねていきたいです。
取材・文/内橋明日香 写真提供/(株)パル