伊豆半島の南部で唯一、出産への対応を行っている静岡県下田市の医院が2025年1月末をもって出産対応を取りやめます。出産ができる医療機関が地元からなくなることに波紋が広がっています。

【写真を見る】「これから若い子が産もうと思うか」出産できる医療機関が地元からなくなる 伊豆南部で唯一の医院が対応取りやめへ波紋広がる=静岡

<下田市 松木正一郎市長>

「賀茂地域で唯一の産科を扱っていたまちの首長として、市民の方々の生活を守る上でダメージが大きいと考えている。大きな問題」

人口減少が深刻な伊豆半島南部に新たな課題です。伊豆南部で唯一、出産対応を行う下田市の臼井医院が2025年1月末をもって出産対応を取りやめます。

開院以来60年間、分娩の対応を行い、ピーク時の2004年には年間で334件でした。しかし、少子化などにより取り扱いの数は年々減り、2023年は83件に。スタッフの人件費の確保や、分娩に対応する設備の維持が難しくなり、取りやめを決めました。

<臼井医院 臼井文男院長>

「申し訳ないとは思うんですけど、あくまで個人医療機関なので、このままやっていてもなかなか、事業継続というのは難しい。医療レベルの維持のために医療機械のコストが必要。それを無理すると患者のためにならない。皆さんにはご理解いただきたい」

臼井医院では、今後も産婦人科の健診は継続し、臨月が近づいた妊婦には、出産ができる医療機関を紹介するということです。臼井医院は、下田市と南伊豆町に住む人が多く利用しています。伊豆南部に住む人が最寄りの医療機関で分娩を希望する場合、2025年2月からは、伊豆の国市や伊東市まで50キロ以上、移動する必要があります。

地元の母親からは、驚きや不安の声が聞かれました。

<下田市に住む妊娠7か月の女性>

「びっくりしましたけど、先生も忙しいのかなって。少子化もありますし、決まったことならしょうがないかな。1人目をここで産んでいるので、2人目もここが、というのがあったんですけど」

<母親>

「これから産む子たちはそういうところ(近場で出産できる医療機関)がないと、こちらで産もうという気になれないと思う。不安ですし。これから若い子が産もうと思うかどうかですよね」

下田市は妊婦を経済的に支援する方針です。

<下田市市民保健課 吉田康敏課長>

「(分娩のために)遠方に必ず行かなければならないということになるので、つなぎとして遠方への交通費、宿泊費の支援の施策を議会に提案させていただきます」

下田市の松木市長は、賀茂地域の医療機関で新たな産科設置を目指し、県と話し合っています。

<下田市 松木正一郎市長>

「いざという時に場合によっては、土砂崩れで(伊豆半島北部に)行けなくなっちゃうかもしれない。こちらに(産める病院が)あることが望ましい」

移住の推進で過疎化を止めたい伊豆半島南部の市町ですが、重い課題を抱えることになりました。