Z李のXのアイコンと沢口孝侑容疑者

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 Xで90万人以上のフォロワーを持つ、謎のインフルエンサー集団「Z李」のメンバーが、2年前に集合住宅の一室に住居侵入した容疑で警視庁に逮捕された。彼らはいったい何者で、なぜ警察に狙われたのか?

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【写真】渋谷署に移送される「Z李」のツートップ

Z李の正体

 11月13日午前、警視庁渋谷警察署に容疑者2人を乗せた2台の車が入ってきた。田記正規容疑者(43)は後部座席の床に体を倒していたのか、手錠がかけられた手首しか見えなかった。沢口孝侑容疑者(38)も俯いたままで横顔しか窺えなかった。

 この2人こそがこの数年SNS上で猛威を振るってきた、暴露系インフルエンサー集団「Z李」のツートップである。

Z李のXのアイコンと沢口孝侑容疑者

「アカウントの大きな特徴はアウトロー調の文体。一見、一人が投稿しているアカウントに見えますが、『新宿租界』というグループに所属する複数のメンバーが共同で運営していると言われています。メンバーには格闘家や大手週刊誌の元記者もいる。リーダーの田記容疑者は元々横浜でスカウトマンをしていて、歌舞伎町を舞台にスカウトマンを描いた漫画『新宿スワン』のキャラクターのモデルになったとされる人物です」(グループ関係者)

 Z李がSNS界隈で注目され始めたのは5年くらい前のことである。実業家や人気YouTuberなど著名人の下半身スキャンダルや借金トラブルを次々とXに暴露し始めた。

「2020年12月、総資産100億円と言われる起業家が恵比寿の高級ラウンジ嬢にテキーラを一気飲みするゲームを仕掛けて、ラウンジ嬢が急性アルコール中毒で亡くなってしまった事件がSNS上で大きな騒ぎになりましたが、これを最初に暴いたのもZ李です。詫びを入れてくるまでとことん晒し続けるのが彼らのスタイル。“悪い奴ら”をとっちめる姿勢がフォロワーから喝采を浴び、タレコミもどんどん増えていった」(同)

フォロワーを総動員した“独自捜査”

 グループはこうして培った拡散力を生かして、食品・グッズのオンライン販売やオンラインカジノのアフィリエイトなどの商売を幅広く展開していた。

「ガーシー氏とも親しく、一時、ガーシー氏のキャラクターを描いたLINEスタンプの販売も行っていた。人気ラッパーと手を組んで、禁止薬物指定が入る直前に脱法大麻リキッドの販売をアカウントで告知し、1000人以上の客を集めて路上で叩き売りしたことも。こうしたスレスレのビジネスを展開する一方、ボランティア活動にも取り組み、新宿区大久保で保護猫カフェを運営したり、路上生活者向けの炊き出しも行ってきた」(同)

 まさに義賊のような活動である。だが、行き過ぎた行動が悪目立ちし、いつか逮捕されるのではないかとも長らくウワサされてきた。今回の逮捕容疑も“凸”が発端だった。

「22年7月、メンバーが所有するバイクが何者かに盗まれる事件が起こりました。彼らは『犯人の身柄に懸賞金300万円をかける』とXに告知。参考となるバイクの写真を投稿し、独自の捜査を始めたのです」(警視庁関係者)

 下記はその時の投稿内容だ。

〈ゼニ金の問題じゃないんだよな。車体代より高い懸賞金かけてるのを見ればわかるだろ?俺の大事にしているもの盗みやがって。俺と俺の仲間しか乗らない、新宿租界のロゴ入りの大事な単車だ。捕まえたら引くレベルのことしてやるよ。悪いこと言わないから返せ〉(Z李のXより)

児童一人しかいない部屋に集団で押し入った容疑者たち

 これらの投稿は瞬く間に拡散。11月になると、フォロワーからバイクの部品がバラされてヤフーオークションに出品されていた情報が寄せられた。出品されたヘッドライトを撮影した写真には男性の顔が映り込んでいて、とうとう犯人の身元までわかってしまった。

「すると、田記容疑者らは5人でその男性が住む集合団地に押しかけたのです」(同)

 その様子はXで実況された。

〈犯人へ。その後の情報提供でお前の兄弟やバラシ場の廃屋の事もわかった。親もわかった。盗難車の保管場所もわかった。本当に先に連絡しなくてもいいのか?もう着くぞ。〉(Z李のXより)

 だが、5人が部屋を訪ねると犯人の男は不在。在宅していたのは児童一人だった。

「にもかかわらず、5人は家の中に踏み込みベランダまで行って証拠品などを写真に収め、1時間以上室内に居座った」(同)

 これが住居侵入容疑にあたるとして、5人は逮捕されたのである。被害にあった男性はバイクを盗んだ負い目もあり、当初は被害届を出すことを渋ったというが、事件にしたい警視庁が必死に口説き落としたという。

 なぜ警察は2年前に起きた“微罪”を問うてまで、グループの摘発に踏み切ったのか。

暴力団対策課が動いた

「この1、2年、痴漢逮捕やコンサートチケットの転売をする人を私人の立場で取り締まり、現行犯逮捕する“私人逮捕系YouTuber”の暴走が続いています。その一環で、これ以上好き放題させまいとお灸を据えるつもりではないか。ちなみに昨年11月、『鬼滅の刃』の煉獄さんのコスプレで私人逮捕活動をしたとして逮捕された男もZ李の弟子を自称していました」

 一方、警察の本当の狙いは別にあるとの見立てもある。

「今回彼らを逮捕した部署は組織犯罪対策部の暴力団対策課。警視庁はグループが反社組織と繋がっているのではないかと疑っているのです。住居侵入事件は入口に過ぎず、組織犯罪を摘発しようとしている可能性はあります」(社会部記者)

 田記容疑者は昨年まで「週刊SPA!」で「飛鳥クリニックは今日も雨」というタイトルの小説を連載していた。

「自身をモデルとした歌舞伎町の住人であるアウトローが、町のトラブルを次々と解決していくという物語です。これまでに3冊書籍化され累計5万部以上売れています」(出版関係者)

NTTドコモの子会社制作でドラマ化

 この小説を原作としたドラマの制作が進行中なのである。

「制作したのはNTTドコモが提供する定額制動画配信サービス『Lemino』です。主演は森山未來ですでに撮影は終わっている。来年1月から配信開始と告知されていますが、さすがに今回の騒動でオクラになるかもしれません」(同)

 昨年4月に、田記容疑者は新宿のイベント会場で小説の出版記念トークショーを行ったが、この時も一悶着が起きていた。

「この頃からZ李を警視庁がマークしているという話が出回っていたので、民放の記者が会場に潜入して隠し撮りをしていた。だが、取り巻きにバレてしまい吊し上げに。写真を撮られた挙句、上司を呼び出されて謝罪させられた」(前出・社会部記者)

 謎のインフルエンサー集団は今回の逮捕で表舞台から退場するのか。それともカムバックできるのか。捜査の行方を見守りたい。

デイリー新潮編集部