「党勢を盛り返すのは難しい」…「100万票」減で総選挙最大の敗者は「公明党」 「石井代表」の“自信過剰”以外の敗因は?
第50回衆議院議員選挙で自公連立政権の過半数割れが決まった。なかでも注目されたのが、公明党の石井啓一代表(66)の落選だ。小選挙区の埼玉14区から立候補したが、比例代表との重複立候補をしていなかったため比例復活もない。党代表に就任した9月28日からちょうど1カ月後のことだった。
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【写真をみる】今は“苦虫を噛みつぶしたような顔”なのに… 公明党・石井代表の「天使のような子ども時代」が意外すぎる!
自身の落選が決まった直後、カメラの前をコソコソと無言で通り過ぎた石井代表は、翌日の記者会見ではこう語った。
石井代表:この度の衆議院選挙におきまして我が党が公認候補を擁立いたしました11の小選挙区のうち7小選挙区で惜敗をし、4小選挙区で当選。比例区は20人の当選に留まり、合計は24議席と公示前の32議席を割り込む大変に残念な結果となりました。公明党に対して深いご理解、ご支援をお寄せくださった国民、有権者の皆さま、とりわけ、超短期決戦の中、最後の最後まで血のにじむような奮闘を続け、公明党を大きく押し上げてくださった全国の党員、支持者の皆さま、創価学会員の皆さまに心からお礼を申し上げます。
ちなみに、7選挙区の落選には、支持母体の創価学会が言うところの“常勝”とされる大阪の4選挙区での全敗が含まれる。また、比例区での総得票数は約596万票で、前回2021年10月の衆院選(約711万票)から115万票減、22年7月の参院選(約618万票)から22万票減で、史上最少の得票数となった。
会見で自身の敗因を尋ねられた石井代表はこう答えた。
石井代表:これは端的に言うと、私の力不足によるものというのが全てでありますけども、バックグランドとしては“政治と金”の問題で厳しい逆風であったという環境条件もあったと思います。
本当にそれだけなのだろうか。公明党の関係者に聞いた。
学会の女性部で不人気
「石井代表が落選と聞いた時は、驚きと同時に『やっぱりな』とも思いました。彼は自信過剰なタイプですからね。幹事長だった昨年、10増10減となった今回の衆院選の自民党との選挙区調整が上手くいかなくなると、『信頼関係は地に落ちた』とまで言い放って連立崩壊の危機を招きました。その10増10減のひとつである埼玉14区に自ら出馬した結果、落選したわけです」
鼻っ柱の強さが問題だと?
「そればかりではありません。支持母体である創価学会から熱心な応援を受けるには、選挙運動を取り仕切る女性部の支持が欠かせません。公明党議員は選挙ポスターの写真を10枚ほど撮り、それを女性部に見てもらって決めていたこともあったほど。優しくてイケメンの候補者が人気なのです。前代表の山口那津男さん(72)は“なっちゃん”と呼ばれて親しまれましたが、石井代表のように苦虫を噛みつぶしたような顔で面白いことを言うわけでもない人は人気がありません。メガネを変えたところで人柄まで変わるわけではありませんから」
それにしても、党代表が落選とは……。
F票集まらず
「公明党の代表が落選したのはこれが2度目。2009年の衆院選でも当時の太田昭宏代表(79)が比例代表に重複立候補せずに挑んだ小選挙区(東京12区)で落選しました。この時の衆院選は自公の過半数割れどころではなく、自民党が結党以来、初めて衆議院の第1党の座を失い、その結果、民主党政権が誕生しました。公明党は大阪4選挙区を含む8選挙区で全敗し、公示前から10議席減らした21議席となりました。今回の選挙とよく似ているように感じます」
もっとも、09年の衆院選で公明党は、比例区で約805万票も獲得していた。
「それだけに今回の596万票、とうとう600万票を割ってしまったことはショックです。学会員の高齢化により熱心に運動してくれる人も減り、F(フレンド)票を集めるのも難しくなったからでしょう」
ネット上でもF票集めの電話は不評だ。
《毎回選挙投票前になると全く付き合いのない元小学校の同級生の母親ら(創価支部の幹部)から代わる代わる公明に投票するよう電話が掛かってくる…早く無くなってくれないかなこの政党》
《選挙の時に毎回電話かけてきて、是非公明に〜って留守電入れてきてキモすぎる。入れるかボケ》
同様に、公明党議員が連続して国土交通大臣に就任していることにも批判がある。
外国免許の切り替え問題
「2012年の第2次安倍内閣以来ですから10年以上続いています。もちろん適材適所の人選ではなく、公明党への割り当てです。まあ、自民党議員に対しても派閥への割り当てがありますが」
さらに今、ネット上で問題となっているのは、国内で中国人が運転する車の事故が増えているのは、滞在するホテルの住所で取得できるほど外国人の外国免許の切り替えがやりやすくなったためであり、それは公明党のせいだというものだ。
《公明党は国交省を独占した挙げ句、ルール遵守の概念が無い、来日したばかりの中国人に免許証を斡旋して全国的に事故多発にした罪は重い。》
《負け議員が多すぎる!となった衆院戦。特に公明は直前の中国人免許や総裁選介入で自民支持者から拒否された。連立も潮時。》
「運転免許試験場に中国人が行列をなしているという報道から、こうした意見が広がっているようです。もっとも、運転免許試験場の管轄は国家公安委員会であって、国交省ではないんですけどね。ただし、今年4月の国土交通委員会で公明党の日下正喜氏(58)が外国人労働者のために『日本の免許への切り替えが円滑に行われるよう、関係機関が連携して対策を講じることも必要』と求めたことは事実です。ちなみに、日下氏は今回の衆院選で落選しましたが……」
9月29日、中国人の18歳の少年が、飲酒の上、一方通行の道路を時速100キロ超で逆走、一時停止の標識を無視して交差点に進入し、乗用車と衝突。運転していた日本人男性を死亡させて現行犯逮捕された。事件が起こった埼玉県川口市は、石井代表が落選した埼玉14区に隣接している。
公明党が中国人優遇と捉えられてしまうのはなぜなのか。
“政治と宗教”問題
「創価学会と公明党が中国びいきなこともあるのでしょう。そもそも中国との国交回復は田中角栄首相の成果ではなく、池田大作名誉会長の提言により公明党議員が事前に訪中したことでなされたという教えがあります。池田名誉会長が昨年亡くなった時には、中国の習近平国家主席から岸田文雄首相宛てに弔電も届きました」
今回の衆院選での敗北について、石井代表は自民党の“政治と金”の問題が逆風になったと言っている。
「公明党の支持母体は創価学会ですから、基本的に世間の波風に影響を受ける政党ではありません。むしろ逆風は“政治と宗教”の問題のほうが大きいと思います」
安倍晋三元首相が銃撃されたことを機に、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党との蜜月関係が問題となり、自民党は旧統一教会に選挙支援を求めないことを決めた。
「旧統一教会の場合、多額の献金や反日思想などの問題がありますが、そうした宗教団体が選挙支援を行うのはいかがなものかという“宗教不信”が広まっているように感じます。立正佼成会などもかつての勢いを失っていますし、創価学会だってこれまで何も問題がなかったわけではありません。宗教団体が信者を使って特定の政党を支援することに不信感が広がっているように思います」
後継者がいない
石井代表は辞任の意志を固めたと報じられているが、後任は誰になるのだろう。
「山口前代表のワンポイントリリーフというのが一番すんなり決まるでしょうが、本人がやりたがらないでしょうね。池田名誉会長が存命で、『やれ!』と言えば従うでしょうけど、そんな人はいませんから。そうなると後継者が見当たらないのです。衆議院議員の斉藤鉄夫氏(72)は党の内規にある定年69歳を超えていますし、問題視されている現在の国交相です。同じく政調会長の岡本三成氏(59)は人望がない。ホープと呼ばれた遠山清彦氏(55)は政治資金を飲食に使っていたことが報じられて衆議院議員を辞職。その後、貸金業法違反で起訴され、党からは除名処分を受けています。公明党の国会議員は年寄りか若手しかいないので、今後を託す中堅が育っていないのです」
公明党の今後はどうなるのか。
「正直言って創価学会の信者が減っているのですから、これから盛り返すことは難しいのではないでしょうか。そんな最中、自民党に対して『信頼関係は地に落ちた』とまで言い放った石井代表の見識は疑わざるを得ません」
デイリー新潮編集部