判定勝ちでボクシング初タイトルを獲得した那須川天心【写真:中戸川知世】

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WBOアジアパシフィックバンタム級王座決定戦

 ボクシングのWBOアジアパシフィック(AP)バンタム級(53.5キロ以下)王座決定戦10回戦が14日、東京・有明アリーナで行われ、同級1位・那須川天心(帝拳)が同級2位ジェルウィン・アシロ(フィリピン)に3-0の判定勝ち(98-91×2、97-92)した。ボクサー転向5戦目で初のタイトル挑戦。格闘技人生最軽量の53.5キロで戦い、熾烈なバンタム級世界戦線に割って入る実力を示せるか注目されていた。戦績は26歳の那須川が5勝(2KO)、23歳のアシロが9勝(4KO)1敗。試合はAmazon プライム・ビデオで生配信された。

 神童の登場に客席は一斉にスマホを構えた。入場から独自の世界観満載。那須川は初回、相手の打ち終わりに左を突き刺した。客席の少年ファンたちから「てんしーん!」の声が多数。しかし、打ち終わりを狙われる場面も。出てこない相手に攻めあぐねたが、5回に右フックなどでリズムをつくった。互いにヒートアップした6回は拳が激しく交錯。那須川は5戦目で最も被弾する試合になった。

 だが、8回にコーナーに追い詰め、左ストレートを打ち付けた。連打で削ると、見せ場は9回だ。左ボディーストレートが炸裂し、先制ダウン。拳を突き上げ、大歓声を浴びた。再開後も攻勢を強め、反撃に出る相手をいなす。最終10回は偶然のバッティングで左目上から流血。粘る相手と最後まで打ち合いを演じた。

 格闘技戦績47戦全勝(キックボクシングは42戦)でボクシング転向。昨年4月にデビューし、世界ランカー対決となった今年7月の4戦目は3回TKOの圧勝で成長を印象付けた。バンタム級の4つの世界王座はWBAに堤聖也、WBCに中谷潤人、IBFに西田凌佑、WBOに武居由樹が就き、日本人が独占。この日は武居、西田がリングサイドから観戦した。

 那須川は試合後の会見で、ボクシング転向後初の10ラウンドの戦いについて「スタミナ的には全く問題ない。全然今からもう1試合いけます。それくらいの気持ちはあります」などと振り返った。

 以下、会見全文。

――試合の感想。

「率直に相手が自分がやりたいことをやらせてくれなかった。研究されていたし、アマ200戦以上あって上手かった。10回を通して戦えたのはよかった。上が柔らかくて相手がうまかった。でも自分のペースで戦えたのは収穫。ダウンは打ってきたところを腹を打って飛ばした。終始プレッシャーをかけてしっかりとダウンを奪えたかなと」

――アジアのベルトを手にし、世界挑戦できる権利を得た。

「一個獲得したので、すぐに返上して次なる高みに進みたい。まあ来年じゃないですか。たぶんすぐじゃないと思うので、あと1試合から2試合か、段階を経て挑戦できれば。いつでも準備はできています」

――互いにカウンターを狙うと膠着する。

「圧力を変えて出そう、出そうとしたけど、突っ込んでくるだけなので、攻めに来る感じがなかった。だから、そこからどう仕掛けるかが課題になる。今までは来る相手にカウンターを狙って、自分から行くことがあまりなかった。だから次からもっと練習する必要がある」

――キックでも流血はない。

「ないですね。顔を切りつけられて、格闘家みたいですね」

――流血で燃えたか。

「どうだろう。あ、これが切れたか! みたいになった。1個の試合であまり経験しないことを2、3個できた。いろんなのが重なってよかった。ずっと冷静でしたね。セコンドの声は聞こえたし、ジャブも見えたし、相手の攻撃も見えていた」

――来年中の世界というのは。

「挑戦権も得て1年以上もやらないのはおかしい。ランキングも上だし、上の人にいつでもゴーサインを出せる状況にしたい」

大谷との“ニュース枠争い”は「政治的に無理でしょうね(笑)」

――リングインタビューで武居の名前を出したのは、この前のお返しか。

「お返しです。来てくれたので勝ちましたと報告だけしました」

――7回にいきなり右構えになった。

「パッと出ただけ。当然ストレートを警戒していた。フックとか変えてみようと。試合中、いろいろできましたね。右にしたり、くっと変えたり。練習でやっていないことも少しできた」

――世界王者4人のうち、この選手とやりたいとかはあるか。

「どうだろう……全員とやりたいんですよね。ベルトが欲しいからやるのではなく、強いからやる。昨日負けた拓真選手もベルトがあってもなくても強い。強いと言われる選手とやりたい。どういうふうに試合が組まれるか、僕も楽しみ」

――返上後に世界ランカーという考えか。

「その考えですかね。あまりベルトには興味がないです」

――控室で鏡を見た時は。

「いやぁ、ボクサーだなと思いますね。医務室に行って。これ縫うのは嫌だなと。テープで治るって聞いてよかった。二重になって見えづらいのがあった。焦るとダメなので、そういう時こそ足を使ってジャブを打つことを意識した」

――9回にダウンを奪取。相手のアシロはスリップと主張した。

「腹に当たってぶっ飛んだ。当たって倒れているからダウンじゃないですか。まあダウンであろうとなかろうと関係ないです」

――10ラウンドの試合をやってみて。

「凄い疲れたとかはないので問題ない。ただ、相手のペースになった時が課題。日々、自分のペースになるように練習しないといけない」

――世界への手応えは。

「すぐじゃないので。1年あるので。でも、挑戦権得ちゃったから。でも焦るつもりはない。ノーと言えばノーだし、OKが出れば行きたい」

――今日の試合と内容で明日のニュースはどうか。大谷翔平の試合もあった。

「(大谷は)勝ったんですか? じゃあ、それは政治的に無理でしょうね(笑)。政治的にも、まあまあ試合的にもですかね。テレビを見る人はKO好きですから。試合的にもでしょう。でも格闘技が好きな人は見てくれると思う」

(THE ANSWER編集部)