【小川 匡則】「彼は全く反省してない」パパ活辞職・宮澤博行の衆院選出馬表明に元秘書が実名で決意の告発
わずか5ヶ月で再出馬
「この自民党政治を一旦お休みいただいて、改革をできる、そういう政治体制にしなければいけません」
自民党で石破茂新総裁が誕生した直後となる9月30日午前。静岡県磐田市で次期衆院選への出馬表明を行ったのは、約5ヶ月前に衆議院議員を辞職をした宮澤博行氏だ。
宮澤氏といえば、自民党旧安倍派の裏金問題について、昨年12月13日に記者団に対して「はっきり申し上げます。しゃべるな!しゃべるな!これですよ!」と吠え、派閥からの口止めがあったと証言したことで一躍時の人となった。
ところが今年4月23日、週刊文春に女性問題を追及されると発売を前にしてあっさり議員辞職をして世間を唖然とさせた。
自民党は宮澤氏が抜けた静岡3区の支部長選任を急ぎ、8月23日に後任として掛川市議会議長の山本裕三氏を選出した。静岡3区は前回、宮澤氏が立憲民主党の小山展弘氏に1万2千票近く差をつけられて敗れている。今回は宮澤氏の不祥事で自民党の信用が失墜した上に、さらに無所属で宮澤氏が出馬することで「保守分裂」選挙となる。
宮澤氏は記者会見で「禊は済んだのか」という質問に対して、「今回の選挙を通じて、有権者が判断する。『禊は済んだ』ではなく、まさにこの戦いが禊だ」と意気込みを語っている。
「人としてありえない」
こうした動きに対して、これまで宮澤氏を支えていた事務所や自民党の関係者は怒りを隠さない。
「自民党のおかげでここまで議員をやれたのに、(自民党の妨害をするかのように無所属で)立候補するというのは人としてあり得ないです」
こう語るのは地元秘書として6月末の事務所閉鎖まで行動を共にした森井征五氏だ。
「あのスキャンダル、そして議員辞職は青天の霹靂でした。あの日、宮澤さんは午前中に事務所にやってきて、その場で『申し訳ないが議員辞職することになった』と頭を下げ、そして東京へと向かっていきました。何が原因なのかもわからず、報道機関から問い合わせが来ても何も答えられませんでした」
宮澤氏は今回出馬を決めた経緯について「徐々に自分の気持ちが高まっていった。挨拶周りで全域に行ったのが7月の末ぐらいで、そのあたりから熟慮を始めた」と語っている。しかし、これがそもそも嘘だと森井氏は苦々しい表情で指摘する。
「辞職した直後の連休明けに宮澤さんは私に『3つのプランがある』と言ってきました。1つ目は『次期3区支部長に改めて私が返り咲く』、2つ目は『次の支部長が決まらないまま選挙に突入する』、3つ目は『自分以外が支部長に選ばれたら私は無所属で出る』。この時点でこう言っていたんです。だから、当初はメディアに出演しても自民党批判は控えていた。ところが早晩に自民党が次の支部長選定に着手したとわかるや、一気に自民党批判に転じたんです」
森井氏は「この点だけ見ても、彼は全く反省などしておらず、自分のことしか考えていない。およそ国会議員には不適格な人品骨柄と言わざるを得ない」と厳しく断じる。
常人では理解できない「怪物」
森井氏は宮澤氏が突如として辞職した翌日、これまでの感謝の気持ちを綴ったメッセージを宮澤氏に送った。
返信があったのはその翌日。その内容は驚くべきものだった。
「記事はかなり大きいものですが、決して私の政治家人生が終わったとは思っていません。森井さんは私にとって必要な方ですので、終わったという判断はしないでください」
森井氏はため息をつきながら語る。
「この人の判断基準は自分のことしか考えてなくて、自分に役に立つ人間か、立たない人間か。普通の感覚では『こんなことになったのに暖かいメッセージありがとう』とか言うでしょうが、それがないんです。この人はまともな挨拶すらできないんです」
森井氏は他にも宮澤氏の信じ難い光景を目の当たりにしたという。
「不祥事で辞職した直後の4月末のことです。地元の女性支援者に対して宮澤さんの奥様が涙を流しながら謝罪して回っている間、宮澤さんは各方面で『不倫パパ活は楽しかった』『好きな女性のタイプは(銀河鉄道の)メーテル』などの不適切な発言を繰り返していたと聞きます」
宮澤氏に対して怒りを露わにするのは森井氏だけではない。自民党静岡県連で幹事長も務めた野崎正蔵元県議はこう話す。
「反省はしてないんじゃないですか。私のところにも特段挨拶にもお詫びにも来たこともない」
その上で、無所属で出馬することには戸惑いを隠せない。
「どういう理由で出るのかわからない。自民票は当然減る。痛手になるのは(自民党公認候補の)山本さんになるのは間違いない。自民党を過半数割れさせると無所属の自分に出番があるというが、どこに活躍の場があるのか。政治は基本、信頼です。信頼をひっくり返した人間に誰がついていくのか。ちょっと常人では理解できないので、私は怪物君と呼んでいます」
旧統一教会とも関係が
さらに、他の地元関係者は「宮澤は旧統一教会とも深い関係にあった」と語る。
「衆院選のときには午前と午後でそれぞれ5人ずつ派遣してもらっていて、電話かけをしてもらってました。もちろん無償です。宮澤も統一教会の信者だと認識していました。地元の統一教会支部にも定期的に出向いていました。党が行った調査に対しては相当濁して回答していたようですが、実際には最も関係の深い議員の一人でした」
旧統一教会とのつながりについて宮澤氏本人に問うと、「報道されている通り」とした上で、次のように語った。
「一人一人がどの団体の方なのかというのは把握しておりません。支援団体の一つという認識でした。(支部に)定期的に行ったという記憶はないですね」
また、推薦確認書については「署名はしたが、提出はしていない」と否定した。
再び前出の森井氏が語る。
「宮澤さんのことを恨んでいるわけではないし、人間的に嫌っているわけでもない。しかし、それでも今回の告発に踏み切ったのは「国会議員になれたのは自民党のおかげなのにその恩義を蔑ろにするのは『不忠』の極みです。多くの有権者や支援者の方々の思いも裏切った。そういうことも含め、宮澤さんが選挙に出るのはもはや『不正』としか言いようがないです」
こうした批判の声があることを宮澤氏にぶつけると、次のように語った。
「私も自民党には大変お世話になりましたし、自民党のためにも貢献させていただきました。言い合いになってしまっては本当に悲しいことですので、あまり私の方からは言いたくありません。私も貢献してきたのに、こういった形になってしまうというのは私としても非常に残念に感じております」
宮澤氏の一連の言動に対する有権者からの「回答」は、まもなく得票数という形で出ることになる。