50代夫婦の「3カ月プチ別居」が迎えた意外な結末
プチ別居中に筆者が実際に過ごした部屋(写真:筆者撮影)
熟年離婚の件数は過去最高を更新し、「老後は別々の道を」と考える夫婦は今や少なくありません。しかし、その決断をする前に「プチ別居」を選択肢に入れるのはどうでしょうか。
筆者夫婦はアラフィフで「プチ別居」を実際に遂行し、その結果夫婦関係は良い方向に向かいました。
前編『離婚の前に「プチ別居」3カ月・30万円でする方法』に続き、その実体験をお伝えします。
後編の今回は「プチ別居が自分と家族にもたらした気づきと変化」についてです。
せっかくなら海の近くで
レオパレスに決めた後は、どこに住むかを考えました。自宅の近くで別居することも頭をよぎりましたが、それではなんだかおもしろくない。物件を探すうちに、せっかく人生はじめての一人暮らしをするのなら、ワクワクする暮らしを始めたいと思うように。
そしてたどり着いたのが、「3カ月、海の近くで暮らしてみる」という答えでした。そこからは、都内での仕事や自宅との行き来のことも考えて、希望エリアを神奈川県の逗子・葉山・鎌倉に絞って、レオパレスの物件を探していきました。
筆者がプチ別居中の滞在先に選んだ葉山の海(写真:筆者撮影)
私が物件探しを始めたのは7月の終わりで、実際に入居したのは8月末。ちょうど夏の間だけ海のそばに住みたいという人と入れ違いのタイミングで、空き物件が豊富でした。
また、コロナ禍という特殊な事態だったことも関係してか、希望する逗子市内で駅や海までもなんとか歩いて行ける範囲内に、<30%割引キャンペーン>をしている空室予定の物件を見つけて決定しました。
せっかく海のそばに3カ月住めるのだからと、引っ越してほどなく、逗子の隣、葉山にあるアウトドアフィットネスに入会。SUPやアウトリガーカヌーなど海のプログラムや、ハイキングやヨガなど、自然の中で体を動かすプログラムがたくさんあるフィットネスでした。
ここに通い始めたことで知り合いができ、心身共に健やかさを取り戻すことができました。それまでと変わらず仕事も継続できていたので、収入面でも困ることもありませんでした。
それまでとほとんど変わらない仕事時間を確保しながら、それまで家事をしていた時間を海や山でのフィットネスに使えるようになり、毎日がとても楽しく充実していました。
プチ別居生活を満喫する筆者(写真:筆者提供)
家族のようすは?
家族のほうは、すでに子どもたちが大学生になっていたこともあり、自分の家事は自分でやるというルールで回っていたようです。
さすがに3カ月となると、洗濯物や使ったお皿を溜めたままではいられないし、外食ばかりでは飽きがきます。
母がいると何となく「やってくれるもの」と思ってしまう家事でも、思い切って母が抜ければ「男3人のシェアハウス生活」として成り立つようになるのは発見でした。
また3カ月間、お互いまったく会わなかったわけではなく、行き来する機会もありました。そこで、プチ別居生活がお互いうまくいっていることを確認できたことは安心感につながりました。
海のある逗子・葉山の暮らしがあまりに気に入った私は、オールシーズン海のそばで暮らしたくなり、別居生活をさらに1年延長することを家族にお願いして受け入れてもらいました。
期間延長にあたっては、レオパレスから別の賃貸物件に引っ越しをすることに。短期で暮らすには十分でしたが、さらに1年住むとなると、より快適な物件に住みたいと思ったからです。
そのため、ここで改めて礼金や敷金、家具家電の購入などが発生しました。
予定の90日よりもレオパレスからは10日ほど早く引き上げることになったのですが、未経過の日数分の賃料が後日返金されたのはありがたかったです(契約プランによってこの辺りは異なるようです)。
その後、家族のところに定期的に顔を出しては、掃除や買い物をサポートしつつ、海のそばでの一人暮らしを1年余り楽しませてもらいました。
いまは都内のマンションに戻り、家族とともに暮らしています。3カ月プチ別居期間を経たことで、家族全員の家事スキルが向上して、家族それぞれの自由度が今まで以上に増したように思います。
また、家族間のコミュニケーションはずいぶんと増えました。コロナ禍以前、ごく普通のコミュニケーションを見失っていた我が家からは想像もできませんが、いまでは一緒にスーパーに買い物に行ったり、テレビを見てあれこれ意見を言い合ったり、その日の仕事の話をしたり、未来について語ったり。ごく普通のおだやかな日々を過ごしています。
これから老後に向かうにあたって、日常を心穏やかに過ごせることが何より貴重だと思うので、ほんとうに驚いています。
案外、海外旅行と同じくらいの費用でできる
まだお子さんが小さい場合や介護が必要なご家族がいる場合など、プチ別居が実現可能な人ばかりではないと思います。ただ、実現できる環境にあって離婚が頭をよぎるなら、意外と海外旅行をするくらいの費用で実現可能なプチ別居をまずはさむことは、とってもおすすめです。
3カ月の後にそのまま別れるのか、延長するのか、戻るのかーー。別居しないと見えない景色を見てから判断するのもアリではないでしょうか。
(氏家 祥美 : ファイナンシャルプランナー、ハートマネー代表)