溝渕正季・明治学院大准教授(本人提供)

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 溝渕正季・明治学院大准教授(中東政治)の話 レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラにとって、指導者ナスララ師殺害による精神的打撃は大変大きい。

 全面的な反撃に出ざるを得ず、イスラエル側にも甚大な被害が出ると思う。ナスララ師を排除しても、40年以上存続してきたヒズボラの解体は現実的でなく、イスラエルが何を最終目標とするのか見えない。

 ヒズボラはナスララ師が死亡しても組織としては機能する。一方、反撃については、イスラエルが関与したとされる通信機器爆発の影響もあり、統率が取れたものにならない可能性がある。

 イスラエルはもともとヒズボラ攻撃の機会をうかがっていた。ヒズボラは10年ほど前に比べて約10倍のミサイルを備蓄し、隣国シリアの内戦で実戦経験も積んだ。イスラエルにとってパレスチナのイスラム組織ハマスより脅威だった。

 爆発した通信機器は、昨年10月にイスラエルがハマスと交戦を開始する前から仕込んでいたとの報道もある。国際社会がパレスチナ自治区ガザでの戦闘を止めなかったことで、どさくさに紛れ戦闘を始めた。

 ヒズボラを支援してきたイランは、改革派ペゼシュキアン大統領が核合意再建や経済制裁解除を目指している。やられっ放しとはいかないが、派手なこともしたくない。象徴的だが実質は伴わないようなイスラエル攻撃を指導部が考えているのではないか。