新潟に快勝した川崎。大きな勝利を手にした。写真:滝川敏之

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[J1第32節]川崎 5−1 新潟/9月27日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

 痛恨の敗戦だった。

 新潟戦の5日前、川崎は9月22日にアウェーの31節・名古屋戦に臨んだが、試合終盤に退場者も出して0−2の敗戦。

 その4日前にはACLエリートのグループステージ初戦、アウェーでの蔚山戦で荒れたピッチのなかで渾身の勝利を掴み、その流れを持続させるためにも、降格圏から離れる勝点3を掴むためにも、名古屋戦には必勝を期して挑んでいた。

「何がなんでも勝ちたかったゲームでしたし、選手たちにもそういう話をして送り出しました。あれだけ多くのサポーターがいるなかで勝てなかったことを非常に残念に思っています。とにかく今日は隙を見せたチームがやられると思っていましたが、自分たちがそういう形になってしまった。ただ一つひとつ学んで、しっかりと結果に結びつけていきたい。ここからは本当に結果が大事なので、そこをしっかりと求めたいと思っています」

 鬼木達監督の言葉にもこれまでの以上の悔しさが詰まっていた。

 さらにこの名古屋戦ではチームの象徴であるMF大島僚太が負傷交代。様々な面で大きな痛手を負っていた。
【動画】川崎×新潟ハイライト
 新潟戦に向けて指揮官は改めて選手に呼びかけたという。

「もうやるしかない。この終盤に来て、疲れているとか、痛みがない選手はいない。自分たちもそうだし、どのチームの選手もそうだから、やっぱりもうやるべきことをしっかりやり続けるしかない」

 名古屋戦から新潟までの準備期間は4日。そのなかで鬼木監督は2日間をオフに当て、ACLのアウェー遠征を含めた疲労からの回復を図り、残りの2日で、いつも以上に新潟を意識した戦術練習を積んできたという。

 そして負傷者や出場停止者がいる限られた選手選考のなかで、披露したのが、攻撃時は4−3−3、守備時は4−4−2のような形になる可変システムであった。

 4ー4−2の布陣に当てはめた際には、エリソン、山田新が2トップで並び、ボックス型の中盤の左右にはマルシーニョと脇坂泰斗が入る。

 脇坂がバランスを取りながら、エリソン、山田、マルシーニョのパワーとスピードを活かす狙いは明白だった。

 すると一気呵成に18分までに2点を先行し、その後は守備がハマらない時間も短くなかったが、後半はよりショートカウンターも光り、5−1の快勝。大きな勝点3を掴んだ。

 この日は右SBで先発した佐々木旭も振り返る。

「全員がハードワークして球際を戦っていましたし、前回(名古屋戦で)すごい不甲斐ない試合をしてしまったので、全員でハードワークしようという話をしていましたし、良いゲームができたと思います。

 (名古屋戦は)国立でやった神戸戦(18節/●0−1)の時のように、すごい敗北感がありました。(ACLで)疲れて走れないというのはあんまりないと思っていて、結局は気持ちのところ。そこがしっか整っていれば、今日のような試合はできると思います。11人全員がそういう気持ちを持ってしっかり試合に入ることは大事かなと」

 今後もACL、ルヴァンカップを含めたハードスケジュールが続くなか、コンディション調整、選手選考は大事だが、やはり、厳しい戦いでも勝ち切るメンタルが何より大切になるのだろう。その成功体験ができたのはチームとして収穫と言える。

 そして、エリソン、山田を最前線に並べた、これまでの川崎の緻密さよりも、個々のフィジカルが色濃く出た戦い方が、ひとつの選択肢として持てたことも今後につながるはずである。

 川崎らしさを捨てることはないが、今後は試合によっては戦い方を選択する必要もあるだろう。

 そういった意味では鬼木監督の采配も、これまで以上に大切になりそうだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)