この秋はじまる新番組に異変が…!ヒロミ、東野、有働ら「ベテランMC」が続々登場…時代に逆行するテレビは「若者をあきらめた」のか

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2020年以降の若返りから一転

民放各局は改編期に突入し、連日ネット上には今秋で終了する番組や大型特番などの話題がアップされている。そのどちらの中でも予告されているのが、今秋スタートの新番組。予告映像や出演者の番宣が行われているが、多少のテレビ好きなら、ある傾向に気づいたのではないか。

そのある傾向とは、新番組のMCがベテランに偏っていること。これまで中堅タレントがMCを務めてきた放送枠でベテランの起用が目立っている。下記に主なところをあげていこう。

・TBS月曜21時枠

『ジョンソン』かまいたち(山内健司43歳、濱家隆一40歳)、モグライダー(芝大輔41歳、ともしげ42歳)、見取り図(盛山晋太郎38歳、リリー40歳)、ニューヨーク(嶋佐和也38歳、屋敷裕政38歳)

『THE MC3』中居正広(52歳)、東野幸治(57歳)、ヒロミ(59歳)

・TBS水曜20時枠

『世界くらべてみたら』国分太一(50歳)、上白石萌音(26歳)

『巷のウワサ大検証!それって実際どうなの会』生瀬勝久(63歳)

・フジ木曜21時枠

『オドオド×ハラハラ』オードリー(若林正恭46歳、春日俊彰45歳)、ハライチ(岩井勇気38歳、澤部佑38歳)

『この世界は1ダフル』東野幸治57歳、渡辺翔太31歳

・フジ金曜21時枠

ドラマ『ザ・共通テン!』ヒロミ(59歳)、ホラン千秋(35歳)

・フジ土曜18時30分枠

『イタズラジャーニー』かまいたち(山内健司43歳、濱家隆一40歳)、チョコレートプラネット(松尾駿42歳、長田庄平44歳)

『ネタパレ』南原清隆(59歳)、陣内智則(50歳)、増田貴久(38歳) ※金曜23時40分から枠移動

・テレビ朝日 日曜21時枠

『サンデーステーション』小木逸平(50歳)、渡辺瑠海(27歳)

『有働タイムズ』有働由美子(55歳)

局を越えてほぼすべての曜日でメイン出演者をベテランに切り替えたことがわかるだろう。

2020年春の視聴率調査リニューアル以降、民放各局はコア層(主に13〜49歳)の個人視聴率獲得に向けた番組制作を続け、だからこそバラエティもドラマも出演者の若返りを図ってきた。

これらを見てネット上には、「テレビは若者をあきらめた」という声もあがっているが、なぜ今秋の改編ではコア層の年代とはかけ離れたベテランのMCを起用するのか。

民放主要4局が中高年層を意識

『THE MC3』で中居正広(52歳)、東野幸治(57歳)、ヒロミ(59歳)、『それって実際どうなの会』で生瀬勝久(63歳)を起用するTBSは、今秋から「LTV4‐59」という新指標を採り入れることを発表した。

「LTV4‐59」とは「Leveraged Timeless Value 4−59」の略で「4歳〜59歳の個人視聴率」を示す指標。これまでTBSのメインターゲット層は4〜49歳だったが、今秋から上限が59歳まで10歳引き上げられる。つまり「60歳以上の高齢層を除くすべての視聴者層をターゲットにする」ということだろう。

また、日本テレビは今秋の改編で編成戦略の見直しを発表。しかし、同局は今春の改編で「コアターゲットに振り切る」というコアマックス戦略、「視聴率でも配信再生数でも圧倒的に勝つ」「TVer総再生数トップ」を目指す総合編成戦略を掲げたばかりだった。わずか半年間で「個人全体視聴率とコアターゲット視聴率の3冠」という従来の目標に戻すことになる。

短期間での戦略変更についてコンテンツ戦略局の江成真二総合編成センター部長は、「それぞれの番組の強みを生かした形で数字を取っていこうと」などとコメントしていた。これは「個人全体視聴率を獲るために、これまで軽視しがちだった中高年層に強い番組も評価しよう」という方針の変更にほかならない。

ちなみに、テレビ朝日はこれまで全年齢層を対象にしたオールターゲット戦略を掲げつつ、リアルタイム視聴の多い中高年層をベースにした編成を続けてきた。

それはゴールデン・プライムタイムのMCを池上彰(74歳)、所ジョージ(69歳)、石原良純(62歳)、出川哲朗(60歳)、林修(59歳)、長嶋一茂(58歳)、高嶋ちさ子(56歳)、さまぁ〜ず(三村マサカズ57歳、大竹一樹56歳)、ネプチューン(名倉潤55歳、原田泰造54歳、堀内健54歳)、くりぃむしちゅー(上田晋也54歳、有田哲平53歳)、サンドウィッチマン(伊達みきお50歳、富澤たけし50歳)などのベテランが担っていることからわかるだろう。その中高年層をベースにした編成戦略は今秋も変わっていない。

「一緒に笑えるだけで、しあわせ」というターゲットの年齢層をぼかすようなテーマを掲げつつ、今秋の新番組に東野やヒロミを起用したフジテレビも含め、民放主要4局が「ベテランに頼る」という戦略で一致したことは間違いないだろう。

団塊ジュニアを評価指標に加えたい

では、なぜ2020年以降、出演者の若返りが進められていたにもかかわらず、今秋はその流れに逆行するようなベテランMCの起用に至ったのか。

そのヒントは前述した日本テレビ・江成総合編成センター部長の「それぞれの番組の強みを生かした形で数字を取っていこうと」というコメントにある。同局に限らず民放各局にとって、スポンサー受けのいいコア層が最重要であることは変わらない。しかし、コア層に特化した戦略を採用しても、急速に進む配信視聴の流れには勝てず、視聴率が取れないという状態が続いている。

一方でコア層から外れた50代以上には、「今でもリアルタイムでテレビを見る」という人がまだまだ多く、個人全体視聴率の獲得につながる。また、今年は毎年200万人が生まれた「全ての団塊ジュニア(1971〜1974年生まれ)が50代に突入した」というタイミングであり、「今なお元気で購買意欲のある彼らをターゲットに入れていきたい」という意味合いもあるようだ。

シンプルに言い換えると、「スポンサーが好む若者向けの番組を作ろうとしたけど視聴率が取れないから、やっぱりテレビをリアルタイムで見る中高年も指標に入れる」ということ。「それで多少売上が下がったとしても、これ以上時代の流れには逆らえない」というシビアな路線変更を感じさせられる。

ただ実際のところ、全年代とコア層の個人視聴率獲得を両立させることは難しく、どちらつかずになってしまうなどのリスクもあるだろう。本当は「視聴率が下がった分、配信再生数が増えているのだから、それを収益化していきたい」のだが、広告売上における両者の差は大きい。時代の変化に対応できず、「収入源をなかなか放送から配信に変えられない」というテレビ業界の課題が暗い影を落としている。

「テレビはつまらない」定着の元凶

振り返るとテレビ業界は21世紀に入って以降、「目先の結果を得ようとするあまり迷走し続けてきた」という感がある。

録画視聴が増えても、配信視聴が増えても、視聴率をベースにしたビジネススキームを変えられず、リアルタイム視聴を狙う番組制作を変えられなかった。そもそも録画や配信は視聴者が「その番組が見たい上に便利だから」というポジティブな理由で活用しているにもかかわらず、自局利益を優先させるためにリアルタイム視聴を狙う番組を作り続けている。

その結果、多くの人々が録画や配信でじっくり見たい番組より、一定の人がリアルタイムで見やすい番組が優先され、「テレビはつまらない」という声が増えてしまった。

また、2010年代に状況を悪化させたのが、中高年層の視聴が数字を大きく左右する世帯視聴率をベースにした番組制作。いち早くコア層に目を向けた日本テレビ以外は、視聴率低下を防ぎ、目先の数字を取るために、世帯視聴率を取りやすい番組制作に走ったことで、バラエティであるにもかかわらず、健康、生活情報、クイズ、日本礼賛などの中高年層が好むジャンルが量産された。

当然ながらMCは中高年層が信頼を寄せるベテランが重用されたが、これによって若年層に「テレビはつまらない」というイメージが定着した感は否めない。

2020年春の視聴率調査リニューアルでようやく番組もMCも中高年層向けからの若返りが図られていただけに、今秋のベテラン回帰には「また2010年代のような暗黒期に戻らないか」という不安がつきまとう。民放主要4局で唯一、今秋の改編でベテランを起用しない日本テレビも、あらためてその実態を見るとあやうさがうかがえる。

とんねるずMC復活も驚きはない

前述したように日本テレビは、いち早くコア層の個人視聴率獲得を進め、今春の改編でも「コアに振り切る」とまで言い切っていた。しかし、同局のゴールデンタイムで50代以上のベテランMCが出演しないのは、相葉雅紀(41歳)の『嗚呼!!みんなの動物園』と、劇団ひとり(47歳)、佐藤隆太(44歳)の『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』のみ。さらにどちらも40代であり、MCの年齢層はテレビ朝日に近いものがある。

この事実が物語っているのは、「ベテランMCの知名度と実力がなければ、コア層の個人視聴率を獲得する上で中核となる30・40代をつかむのは難しい」ということ。さらに言えば「現状の中堅MCは30・40代をつかめる人は少ない」「10・20代をつかめるMCはほぼいない」という厳しい現実がうかがえる。

余談だが、フジテレビが10月19日に『土曜プレミアム とんねるず特番(仮)』を放送するという。石橋貴明、木梨憲武はともに62歳の大ベテランだが、2人でフジテレビ系の番組に出演するのは『とんねるずのみなさんのおかげでした』最終回以来6年ぶりであり、特番にもベテラン回帰の傾向が見て取れる。

このような今秋の変化を踏まえると、遅くとも数年以内にはTBSに限らず他局のメインターゲット上限も49歳から59歳に引き上げられ、さらに64歳、69歳……と上がっていくかもしれない。すでに、とんねるずのレギュラー番組が復活しても驚きはないレベルだが、「高齢化社会に対応する」という大義こそあっても、若年層をつかむことはさらに難しくなっていくだろう。

今こそ目先の結果や個人の成績にとらわれすぎず、局の壁を超えて業界の数年先を見据えた番組制作が求められている気がしてならない。

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