※イメージです(以下、同じ)
 近年、女性を狙った卑劣な盗撮の被害が増えています。

 警察庁の統計によると、2010年の盗撮事件の検挙件数は1741件。これが2019年には、2倍以上の3953件にまで膨れ上がっているのです。

 盗撮はどのような場所で、どのような方法で行われるのか。また、どのような人間が犯行を行なっているのか。9月2日に新刊『盗撮をやめられない男たち』を出版した斉藤章佳氏(大船榎本クリニック精神保健福祉部長)が解説します(以下、『盗撮をやめられない男たち』より抜粋、再編集/初公開日は2021年9月3日 記事は取材時の状況)。

◆スマホの「無音アプリ」で盗撮を行う

 警察庁発表の「犯行供用物別の検挙件数」によると、2019年に検挙された盗撮事犯3953件のうち、実に2871件が「スマートフォン」(以下、スマホ)によるものでした。盗撮に 使われる機器は、全体の72%をスマホが占めているのです。次に多いのは「小型(秘匿型)カメラ」、その次に「カメラ付き携帯電話」「デジタルカメラ」と続きます。このカメラ付き携帯電話は、いわゆるガラケーといっていいでしょう。
 年ごとに数字を追っていくと、時代の流れとともにスマホの割合が増加していることがわかります。逆にカメラ付き携帯電話やビデオカメラの数は減少傾向にあります。これは、世間のスマホの普及率や携帯電話市場の変化と連動していると考えられます。

 さらに、当クリニックで治療する盗撮加害者521人への調査でも、「盗撮方法」はスマホが69%で全体の7割を占めています。そしてスマホで盗撮した人の約90%は「無音アプリ」を使用していることが明らかになりました。

 ちなみに治療プログラムを始めた15年前は、のぞきがきっかけで治療に訪れる人も一定の割合でいましたが、近年はかなり減少傾向にあります。以前ならのぞき行為に耽溺していた人たちが、スマホでの盗撮に流れてきているからと考えられます。

◆盗撮多発スポットは、駅構内、電車、商業施設

 犯行手口に続いて、盗撮の行われる場所についても見ていきましょう。警察庁の「犯行場所別の検挙件数」によれば、盗撮被害が多いのは「駅構内」「電車」です。2019年には、この2つを合計すると1219件となり、全体の約3割を占めます。2つの合計に次いで多いのは、「ショッピングモールなどの商業施設」で977件です。

 当クリニックの統計でも、主な盗撮場所は「階段」(26%)、「エスカレーター」(22%)、「トイレ」(13%)となっていますが、詳しく話を聞いてみると、実はこれらのほとんどが駅構内です。ここに「電車内」(8%)を合わせれば、盗撮行為の多くが鉄道・駅構内で行われていることになります。

 盗撮加害者の大半はサラリーマンなどの勤め人です。特に都市部では、彼らの交通手段である駅がおのずと犯行現場になっているのだと考えられます。

◆盗撮加害者は若年層に多い

 榎本クリニックで、2006年5月から2020年3月の間に実施した、窃視障害(盗撮・のぞきを繰り返す性依存症)と診断された521人の患者に対するヒアリング調査は、日本初の盗撮・のぞきに関する大規模な統計データとなります。この調査によって、盗撮加害者の平均的なパーソナリティが見えてきました。

 まず、「初診時の年齢」ですが、「10代」が5%(26人)、「20代」が33%(172人)、「30代」が40%(208人)を占め、10代から30代を合わせると 78%で約8割を占めており、平均年齢でいうと28.3歳です。検挙件数や、治療に訪れる相談者の割合からみて、盗撮とともに日本の二大性犯罪といえる犯罪に「痴漢」がありますが、盗撮加害者の平均年齢は、痴漢加害者の平均年齢よりも、若年層が多い傾向にあります。