飛行機も鉄道も「ペット同伴」が当たり前? 北欧を旅すると、日本人にとっては意外な光景があります。

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飛行機の客室にペットを持ち込むか否か。日本の航空会社では、国内線の1社を除き客室へのペット持ち込みはできず、貨物として預ける形になります。

一方、ヨーロッパやアメリカなど、ペットと客室で一緒に過ごすことができる、また飛行機以外の乗り物に同乗可能な国もあるのです。

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フィンランドは空港も客室内もペットと一緒


フィンランドの首都ヘルシンキ。その近郊にあるヘルシンキ・ヴァンター国際空港は、日本各地をはじめ、アジアや北米、そしてヨーロッパ各地からの便が多く発着しています。

筆者がよく訪れるこの空港では、空港内でペット連れの搭乗客を見かける機会が結構あります。ペットを抱いて保安検査場を一緒に通過し、搭乗ゲートからそのまま機内に入っていくのを最初に見た時は、ただただ驚きました。

また、客室内でも筆者の隣の座席下に置かれたバッグの中でゴソゴソと何かが動いていて、見てみるとペット用のキャリーバッグに入れられた犬だった、という経験も。

周りの客もそれに対して何も言わないどころか、客室乗務員がペットを見て一気に笑顔になったのを目撃したこともあります。

「フィンエアー」のペット同伴ルールは、料金1匹1万円〜


ヘルシンキを拠点とするフィンエアーでは、ペットを客室に持ち込むことができます。

その動物とは「ネコ」「小型犬」「ウサギ」「カメ」「ハリネズミ」です。「大型犬」と「フェレット」は貨物室積み込みで対応しています。

ルールとして、まず、ペットとペット用キャリーの合計重量が「最大8キロ」で座席下に収まるサイズであること。ペット用キャリーは1人1個(2匹まで)、各便2人まで。なお、ネコと犬、フェレットのEU加盟国間の移動は、獣医から購入できるペット用パスポートの所持も必須です。

気になる費用は、ヨーロッパ内で60〜65ユーロ(約1万円)、長距離便では120〜140ユーロ(約2万円)となっています。補助犬や介助犬は無料。

EU圏ではフィンエアーのほか、エールフランスやルフトハンザドイツ、アメリカのデルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空などでも客室へペットを同伴できます。

またカタール航空など中東系航空会社では「ハヤブサ」を同伴できるサービスがありますが、これは中東の富裕層の間でハヤブサがペットとして定着しているのが理由です。

長距離列車に「ペット同伴車両」、アプリで指定可


フィンランドでは、ペット連れの旅行は飛行機だけではありません。タンペレ駅を目指してヘルシンキ中央駅からVR(フィンランド鉄道)の列車に乗ると、筆者が乗車した2階席の下にある1階席が「ペット同伴車両」でした。

スマートフォンのアプリで座席指定する際、犬マークがある席はペット同伴できる席になっています。ドア越しにペット同伴車両を見ると、通路に大型犬がいました。ちなみにペットは座席を利用することもできますし、ゲージに入れる必要もありません。

近距離列車や地下鉄でも、もちろんペット同伴可能。ペットだけでなく、自転車を畳まずにそのまま乗車可能な車両も連結されています。

路線バスでは、前方のクロスシートが空いていると思ったら、大型犬が座っていたことも!

日本で「唯一」ペット同伴できる航空会社


日本では、客室へペットを持ち込むことができる航空会社は、羽田−福岡線、北九州線などを運航するスターフライヤーのみ。「FLY WITH PET!」というサービスで、2024年1月15日より国内線全路線、全便にサービスを拡大しました。

ただ、欧米などとはルールが異なります。座席はカバーがかけられた「最後列の窓側席」限定で、ペットが入ったケージを固縛するため、客室でケージから出すことは不可。持込可能動物は、指定サイズのケージに入る「小型犬」「ネコ」のみ。料金は1匹5万円です。

日本航空(以下、JAL)やANA(全日本空輸)などその他の航空会社は、ペットは貨物扱いとなり、料金はJALだと路線や搭乗日によって異なり、5500〜7700円。ピーチ・アビエーションやジェットスターなどの格安航空会社(LCC)では、貨物としてもペットを預けることはできません。

日本を含むアジアは持込禁止が多い、その理由は?


2024年1月2日に東京・羽田空港で起きたJAL便と海上保安庁の航空機との衝突事故では、JAL便に搭載されていたペット2匹が機体炎上で亡くなり話題となりました。その後、客室へのペット持ち込み可否を巡り、ペット愛好家らによる署名活動まで起こる事態にも発展しました。

日本を含むアジアでは、韓国を除き、客室へのペット持ち込みは大半の航空会社で認められていません。そのアジア諸国と、欧米などの国・地域を単純に比較することには、無理があります。

欧米などへ行った際、飛行機や列車、バスなど公共交通機関に飼い主がペットと一緒に乗っているのを見かけるかもしれません。こういった光景は、これらの国・地域ではごく普通。

あくまでペットに対する「文化の差」なのです。

この記事の筆者:シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに取材、執筆、撮影。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も行う。​​​​​​​
(文:シカマ アキ)