(C)MBS

写真拡大

〈オリックス−西武〉◇24日◇京セラドーム大阪

 同期入団の固い絆が生んだ運命に見えた。今季限りでの現役引退を表明したオリックス・小田裕也外野手(34)はあふれる思いをこらえられなかった。6回2死。2014年同期入団で苦楽を共にしてきた西野真弘内野手(34)が中越え三塁打を放つ。すると、代走で登場した小田は颯爽と1塁ベンチから3塁へ向かい、西野と強く抱き合った。“相棒”が用意してくれた最高の演出に「お互いにグッときていたんで、目が見れない状態」だった。

 プロ10年間を共にしてきた2人。1年目から切磋琢磨する仲だったが、その関係性は3年前からより一層深まった。シーズンに向けて1月に行っている、小田、そして東洋大で同級生だった楽天・鈴木大地内野手(35)の2人が主体の自主トレキャンプに西野も参加するようになったからだ。このキャンプは一般的なプロ野球選手の自主トレとは一風変わった時間を過ごす。

宿泊場所は廃校を改装した宿 野球と向き合う共同生活「自然に会話も増える」

 寒空の高知県宿毛市。朝9時から、昼食を挟み午後5時まで球場でみっちり練習。そして、泊まるのはなんと廃校を改装した山の上にある木造建築の宿。夕食は、家庭科室でトレーナーの妻が調理。全員揃って手を合わせてから食事をする。洗い物当番は先輩後輩関係なくじゃんけんで決定。さらに、音楽室にウエイト器具を置き、体育館には打撃練習用の防球ネットを張り、夕食後も自主練習を行う。就寝は、教室をリノベーションした畳部屋に布団を敷いてみんなで寝る。

 まるで学生時代のような環境。ここにはキャンプを主催する田中昌彦トレーナーのある狙いがある。「シーズンを戦い抜く体力や技術を養うことはもちろんですが、一番はメンタル強化を目的にしています。プロ野球選手は環境に恵まれている。昔を思い出し、今ある環境に感謝することで、練習に対する姿勢や物事の考え方が変わるからです」

 廃校に泊まり、とことん野球と向き合う共同生活の時間がより絆を深めていった。

 「キャンプに向けて、一緒にバットを振って、走りこんでとやっているとお互いのやりたいことが分かるようになりますよね。そして一緒の部屋で寝るし、自然に会話も増えるので、小田さんをより意識するようになりました。2月のキャンプ入ってからも、自分のバッティングはどう見えますか?とかアドバイスも求めるようになりました」と西野は話す。

 1年の始まりから同じ環境で練習に励んできた2人。プロ野球人生の幕引きが最高の巡り合わせとなったのも偶然ではなかったのかもしれない。

 「お互いにチームでの役割が違うからこそ、小田さんを尊敬していますし、こういう関係でいられたのかなと思います。難しい場面で出場するプレッシャーはものすごいものがあると思うし…言葉にはできない色々な感謝の思いがありますね。最後に神様が良い場面を作らせてくれたのかなと思います」

 ユニフォームを脱いだとしても、“10年間”つらい時も楽しい時も共に過ごした仲間は一生の友達だ。