真田広之のエミー賞受賞に沈黙を貫く渡辺謙

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 仕立てのよいベージュのジャケットを身にまとった渡辺謙(64才)が、やや上気した赤ら顔で夜の街を闊歩する。隣には、昨年6月に再々婚を発表した妻がピタリと寄り添っている。 

【写真】渡辺謙と妻のツーショット。妻は全身ホワイト系の装い、渡辺も白いジャケット姿

 一時は道ならぬ恋を歩んだふたり。いまや周囲が送る好奇の眼差しもお構いなしに、この日のように堂々とふたりで食事に出かけられるようになった。9月下旬の東京・六本木。楽しい食事の席で、渡辺はあの日本人俳優の快挙について、どんな言葉を口にしたのだろうか。長年、比較されてきた“後輩”への祝辞か、それとも──。 

 9月16日(日本時間)、“米テレビ界のアカデミー賞”と称されるエミー賞が発表され、作品賞や主演男優賞など史上最多の18冠に輝いたドラマ『SHOGUN 将軍』。今作で主役とプロデューサーを務めた真田広之(63才)の名声は、いまや世界中に轟いている。 

 その真田に先んじ、国際派俳優として道を切り開いてきたのが、渡辺だった。2003年の映画『ラスト サムライ』で武士団のリーダー・勝元盛次を演じ、アカデミー賞助演男優賞にノミネート。真田も勝元の家臣・氏尾役で出演していたが、当時は役柄も知名度も渡辺に対して“一歩下がった”立場だった。 

「もともとキーマンの勝元役は、真田さんが演じるはずだったのが、なぜか渡辺さんに変更になったのです。それでも真田さんは、ことあるごとに衣装や小道具、所作などに口を出していましたね。当時から『間違った日本人像を壊したい』という思いがとても強かった」(映画関係者) 

“アカデミー級”の俳優となった渡辺はその後、日本に拠点を残しつつ、海外でも積極的に活動。ミュージカル『王様と私』でトニー賞のミュージカル部門主演男優賞にノミネートされるなど、日本を代表するハリウッド俳優として知られるようになった。一方の真田は、2005年に拠点をハリウッドに移したものの、鳴かず飛ばずの状態が続いた。

「アジア人役の需要が少ないうえ、当時の真田さんは英語も日常会話がやっとの状態。小柄で体格面での不利もあり、なかなか役に恵まれませんでした。英語のレッスンとオーディションに明け暮れる日々で、40代半ばにして“下積み生活”を余儀なくされていました。同い年で親友の佐藤浩市さん(63才)に『もういいんじゃないか?』と帰国を促されたこともあったそうです。 

 それでもアメリカに留まり続けたのは、『ラスト サムライ』から一貫する、『誤解されがちな日本の描かれ方を自分たちの世代で終わりにしたい』という決意があったからでした」(前出・映画関係者) 

 やがて、映画『ウルヴァリン:SAMURAI』や『アベンジャーズ/エンドゲーム』などのメジャー作品にも出演し、日本人像を世界に発信し続けてきた真田。そして『SHOGUN 将軍』によって、彼の思いは成就されたのだった。実はこのエミー賞は当初、“真田VS渡辺”という構図が予想されていたという。 

「渡辺さんが主演するドラマ『TOKYO VICE』のシーズン2がノミネートされるとみられていて、“日本人対決が実現か”という声もありました。しかし、蓋を開けてみれば『TOKYO VICE』はノミネートすらされませんでした。 

 近年、真田さんは渡辺さんよりも精力的にハリウッド作品に出演していて、その中で、今回の受賞となった。過去、アカデミー賞が手に届くところまでいった渡辺さんですが、いまでは真田さんを追いかける立場になっていますね」(芸能関係者) 

 今回、多くの俳優陣が真田の快挙に祝福のメッセージを寄せたが、渡辺は沈黙を貫く。同じ日本人のハリウッド俳優として、複雑な心情があるのかもしれない。 

※女性セブン2024年10月10日号