ロッテ・佐々木

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 考える時間が多い1年間だっただろう。ロッテ・佐々木朗希投手(22)は今季、自己最多の9勝を挙げた。だが、右上肢のコンディショニング不良などで2度離脱。直球の球速も思わしくなかった。昨季は平均球速が159キロだったのに対し、今季は156キロと3キロも遅い。吉井監督にも「良い時は何もしないで160キロを超える。今年は同じように投げても160キロを超えない」とこぼしていた。

 その原因を吉井監督が説明し、大きな要因の一つとしてフォームだと話した。

 「彼の最大の球速が出る特徴としては、肩の最大外旋位がすごく大きくて、そこから加速する距離がちゃんととれるということ。それであの(160キロ超えの)球を投げられていた。今年は外旋の角度が浅いので、その分スピードが出ない」

 昨季は自己最速の165キロをたたき出したが、それは足からの力を下から順に腕まで伝えられるフォームを取っていたからだ。足からの力をうまく使えていれば、自然と上半身にねじれができ肩を引くことができるためテークバックも大きく取れる。指揮官は「足からのパワーが伝わると、一緒に(上半身が)回ってる感じになって、外旋が大きくなる」と身ぶり手ぶりを交えて詳しく説明した。

 ただ、今季の佐々木は「それがきていない」と監督は言う。修正には「一回、癖がついてしまっているのでなかなか。(急いで修正すると)コントロールも変わってくる。今の投げ方でリリースの位置を安定させているから、そこが変わるとまたここも変わってくる」と話し“突貫工事”でフォームを今季中に直すのは至難だ。

 今季はスライダーの軌道も変わった。昨季はダルビッシュに教わった横に動くスライダーだったが、今季は縦に落ちる軌道が多い。佐々木はこの変化について「握りは一緒。(意識を)変えているつもりはないです」と話していたが、この変化は速い直球を投げる上では良い作用をもたらすという。

 吉井監督は「勘違いをすると腕だけの力で投げる感じになるが、スライダーはあまり意識しないのでうまくタイミングが合って、下からのパワーが伝わる投げ方が自然にできることがある。朗希が縦のスライダーを投げている時は、メカニズム的にはうまくいっている。知らず知らずのうちに直球を投げると、たまたまうまくいく。そこでもしコツをつかめば、(フォームが)元に戻る可能性がある」

 今季はスライダーを多く使っており、直球の調子が悪ければ途中でスライダーを軸に切り替える時もある。佐々木も「去年よりうまく使えている」と手応えを感じている。試合に勝つためにも直球の進化にも、スライダーの存在は大きい。

 佐々木朗希といえば剛速球。指揮官は160キロ超えを連発していた昨年のフォームに戻るには「時間をかけてやるしかない」と言うが、まだ22歳の右腕に時間はたっぷりある。プロ2年目の2022年には20歳5カ月で完全試合を達成した才能あふれる若武者。納得のいく投球ができるようになった時には、どの舞台でも戦える豪腕となるだろう。