小泉進次郎元環境相

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野田聖子氏が会場に現れると……

 27日投開票の自民党総裁選。「本命」の小泉進次郎元環境相(43)は、空虚で不可解な珍回答を繰り返し、失笑を買う場面が少なからず見られた。「人脈」「政策」「家族」――三つの側面から見た彼の「急所」を徹底検証する。【前後編の前編】

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【写真】「わぁ、こんなにきれいな人がこの世にいるのか!」 対抗馬・石破氏は慶大時代、妻・佳子さんにひとめぼれしたという

 総裁選が告示された9月12日、小泉進次郎元環境相の選挙対策事務所が置かれた東京・永田町のシェアオフィス「みどり荘永田町」。2階に設けられた出陣式の会場はひどく暑かった。3台設置されているエアコンの設定温度はどれも20度となっているが、会場内は不快に感じるほど蒸し暑く、集まった報道陣の額には汗がにじんでいた。

小泉進次郎元環境相

 会場を仕切るのは推薦人に名を連ねる小林史明議員。開始時刻である正午が近くなるにつれ、加藤鮎子議員や三原じゅん子議員などが次々と来場する中、すでに集まっていた陣営の議員たちから大きな拍手が沸き起こった瞬間があった。前日、進次郎氏への支持を表明したばかりの野田聖子元総務相が会場に姿を現した時だ。遠慮がちに議員たちの輪の端に加わろうとした彼女は小林氏らに促され、中央辺りにいた三原氏の隣に立ったのだった。

「石破氏に乗るのが自然だったが……」

 野田氏を支持してきた大岡敏孝議員が明かす。

「小泉さんはひたすら野田さんを説得して口説き落としました。小泉さん本人が野田さんに連絡を取る前、私から小泉さんにこちらの陣営内の状況や方針を説明しました。すると小泉さんから“状況は分かりました。この先はトップ同士でやらせてもらっていいですか?”と言われました。小泉さんが野田さんを口説き始めたのが6日か7日くらい、両者の合意が成立したのは11日でした」

 6日は進次郎氏の出馬会見が行われた日である。

「『選択的夫婦別姓』に触れた進次郎氏の出馬会見を見て、野田氏は“進次郎君、こんなことを考えているんだ”となったのです」

 政治部デスクはそう話す。

「ただし、野田氏は最後の最後まで石破茂元幹事長と進次郎氏、どちらにつくかで悩んでいました。2005年の“郵政選挙”の際、野田氏に刺客を立てた父・小泉純一郎元首相の仕打ちを思い返せば、石破氏に乗るのが自然。にもかかわらず彼女が進次郎氏を選んだのは、彼が勝ち馬だと判断したということです」

「母親代わりに支えてほしい」

 野田氏が進次郎陣営の選対本部長に就くという見方もあったが、

「最終的には、彼女を選対本部長に据えると、“遠心力”が働いて陣営がバラバラになってしまう、という話になった。結果、推薦人に名を連ねるだけにとどまったのです」(同)

 陣営の一部が野田氏を選対本部長に据える案に拒否反応を示した背景に、彼女の夫・文信氏の件が影響しているのは間違いなかろう。

 2018年、本誌(「週刊新潮」)は〈「女性総理」の夢を壊した「野田聖子」総務相の「元反社夫」〉(8月2日号)という記事を掲載。対する文信氏は事実無根だとして発行元の新潮社を相手取って裁判を起こしたものの、22年8月、最高裁で文信氏が「元暴力団員だった」と認める判決が確定、新潮社の勝訴で終結している。

「進次郎氏が首相に就任したあかつきには野田氏を重要ポストで処遇する、との見方も出ていますが、夫の件を考えると、答弁を求められる閣僚に野田氏を登用するのは難しい。党役員として処遇できるかどうか、というところでしょう」(同)

 進次郎氏は野田氏に「母親代わりに支えてほしい」と頼んだそうだ。しかし、その母との“距離感”の取り方は今後、悩みの種となる可能性があるのだ。

菅前首相の健康問題

 一方、野田氏が母だとすると、政界における進次郎氏の“父”は菅義偉前首相をおいて他にはいるまい。

「進次郎氏が今回、総裁選への出馬を決断した背景には、“菅さんの恩に報いたい”との気持ちが強いことも大きく影響しています」(政治部記者)

 自ら直接議員に電話をかけるなど、進次郎氏の支持拡大に余念がない菅前首相。そんな重鎮にささやかれている“不安材料”は、

「健康問題です。9月8日に横浜・桜木町で進次郎氏と共に街頭演説した際のあまりに弱々しい姿は多くの人を驚かせました。手を振る仕草には力が入っておらず、演説でもすぐ言葉に詰まってしまうのです」

 と、永田町関係者。

「ですから、菅さんの目標は“進次郎政権の誕生”で、それを果たした後のことは考えていないのではないか、ともいわれているのです。菅さんが副総理副総裁に就くといった見方もありますが、体調面を考えると難しいのではないか、という声も出ています」

進次郎氏の“アキレス腱”

“人脈面”の懸念材料は進次郎氏の事務所内部にもある。それは、

「公設第一秘書の干場香名女(ほしばかなめ)氏です。彼女は元々、三菱商事にいて、出向先の日本ケンタッキー・フライド・チキンでマーケティングの仕事をしていた人物。17年に彼女が進次郎氏の秘書になってから、メディアの選別を行うなど、事務所がおかしくなったといわれています。進次郎氏が首相になった場合、彼女を首相秘書官に抜てきするのではないか、ともいわれており、彼のアキレス腱になるでしょう」(政治ジャーナリスト)

 進次郎氏は出馬会見で「最高のチーム」を作る、と述べた。しかし、予想されるチームの陣容はいささか心もとないのだ。また、首相として国家のかじ取りに当たる際、最終的な決断はチームではなく、一人でなさなければならないことは進次郎氏本人も重々承知であろう。

 果たして彼にそれができるのか――。

「あれでは議論軽視」

 テレビ番組に出演した際の発言だけを見ても、大きな疑問符を付けざるを得ない。例えば、進次郎氏を含む9人の候補者が出演した12日のテレ朝系「報道ステーション」。キャスターの大越健介から、

「菅さんを慕う人たちが派閥のような形になっているということはない?」

 と聞かれた進次郎氏の答えは、以下である。

「菅さんだろうと誰だろうと選挙になったら応援してくれたら一番ありがたいですよ。もう誰でも応援してほしいです」

 京都大学大学院教授で元内閣官房参与の藤井聡氏が言う。

「質問に対して、“誰が応援してくれてもうれしい”と無関係な話をしていますよね。つまり質問に答えていないわけですから、あれでは議論軽視ですよ」

 また、他の候補者が「防衛増税」について持論を展開する中、同じ質問を振られた進次郎氏は、

「これは岸田政権が相当な政治エネルギーを費やしたうえで決めたことですよね。私はそれを引き継ぎます」

 と答えるのみ。「防衛増税」について理解できていないのでは、という疑いすら抱いてしまうのだ。

 後編【「私が取材した時“小泉家を一生恨みます”と…」 進次郎氏が初めて明かした「小泉家の闇」とは】では、今回進次郎氏が初めて公に口にした「小泉家の闇」について、詳しく報じている。

「週刊新潮」2024年9月26日号 掲載