5回2死満塁、門脇の中前打で三塁を回る二塁走者・坂本(カメラ・相川 和寛)

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◆JERA セ・リーグ DeNA4―12巨人(26日・横浜)

 漂い始めていた暗雲を振り払うライナーが、横浜の夜空へ伸びていく。坂本はスタンドインを確信したように、バットを両手に握りながら左翼席中段に消えていく放物線を見つめた。「いい流れに乗せてもらいました。良かったです」。13試合ぶりの7号2ランは、岡本和との今季3度目、通算32度目のアベック弾。先に生還した一塁走者・長野に優しく頭をポンとたたかれると、照れくさそうな笑顔がはじけた。

 熟練の技だった。3点リードの4回無死一塁。高め129キロスライダーを手元まで引きつけ、振り抜いた。「いろいろ考えてやってます」と一直線に伸ばした左足を普段より大きく上げてタイミングを取ってジャストミート。快勝ペースが一転、不穏な空気となりかけていた一戦の主導権をたぐり寄せる完璧な一発に「和真と(中前打で出塁した)チョーさんが良い流れで回してくれたんで」とチームメートへの感謝を口にした。

 仲間を大切にする男らしい、粋な計らいがあった。18日のDeNA戦(東京D)。第2打席の登場曲を21年に使用していた「キミトユメノタメ」、第1、3打席で従来は第2打席でのみ使用していた「カンジルママニ」に変更して臨んだ。

 この2曲は18年、共通の知人を介して出会ったシンガー・ソングライター、maaboo(マーボー)が坂本のために作ったエールソングだ。同戦を観戦に訪れたmaabooの家族を思った、サプライズ演出。一方で、第4打席の「キセキ」のみ変更せず。それは、登場時に恒例となっている同曲の合唱を楽しみにするファンのためだった。支えてくれるたちへの思いがこもった、感謝の形だった。

 守備でも圧巻だった。初回にイレギュラーバウンドしたゴロを好捕すれば、5回には三塁線への打球をスライディングキャッチ。「それは最低限」と今季、幾度となく見せてきたホットコーナーでの華麗なグラブさばきで、またもチームを救った。前回、頂点に立ってから4年。仲間たちとともに目指し続けてきた悲願はもう、目の前にある。

(内田 拓希)