試合後、インタビューに答える大谷(撮影・小林信行)

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 「ドジャース4−3パドレス」(25日、ロサンゼルス)

 ドジャースの大谷翔平選手(30)がパドレスとの首位攻防第2戦で決勝打を含む2安打2打点をマークし、チームの地区優勝マジック「2」再点灯に大きく貢献した。六回には二盗を成功させて56盗塁とし、イチローが持つ日本選手最多記録に並んだ。26日の首位攻防第3戦に勝てば、チームにとって4年連続、大谷にとっては初めての地区優勝が決まる。

 感情のリミッターを解除した。勝負どころで快音を響かせ、喜びを爆発させた。「各打席、チャンスのいい場面で回ってきたので。打てて少し感情的になって、うれしさが出たかなと思います」。チケット完売5万2310人が埋めた本拠地を熱狂させたパフォーマンス。MVPコールを巻き起こした。

 パ軍との首位攻防3連戦。前日の第1ラウンドは2点を追う九回裏無死一、二塁からまさかの三ゴロ三重殺であっけない幕切れ。ネクストサークルで敗戦を迎えた大谷だったが、そこに負の感情はなかった。「最後はああいう形で終わりましたけど、その前に1点取ってますし、簡単に終わらなかったところが重要」。プラス思考で第2ラウンドに臨んだ。

 取ったら取り返される目まぐるしい展開。大谷が絶叫したのは四回の攻撃だ。8番ラックスの適時打で2−2とし、なおも2死一、二塁の好機に時速188キロの弾丸打球を右翼フェンスに突き刺した。「カモーン!」。二塁ベース上から三塁側の自軍ベンチに向かって両手であおるポーズ。仲間たちの心を一つにした。

 3−3の六回2死一、二塁の打席では2本目の勝ち越し適時打だ。自信満々に見送った高め速球をストライクと判定。思わず、球審の方を振り返り、「NO WAY…(そりゃないよ…)」とつぶやくほど、外れていたが、集中力を切らさず、カウント2−2から高めシンカーを捉える。「場面に関係なく、自分のいい打席を送れれば、いい結果が出ると思っている」。鋭いゴロ打球がセンターへ抜けた瞬間、一塁へ走りながら、腹の底から3度、大声を上げた。

 2安打2打点に満足することなく、敵軍左腕から二盗にも成功。56盗塁でイチローに並んだ大谷は「憧れの選手。数が並んだからといってそれが変わることはもちろんない。引き続きチームの勝ちのために走るところは走っていきたい」と気持ちを新たにした。

 “熱男”と化した大谷にロバーツ監督は「先週あたりから普段は絶対に見ることのない感情を出している」と変化を指摘。「最高の選手がそれをすれば、全員が付いていく。彼は私が望むやり方を実践している」とにこやかに話した。

 ド軍は地区優勝マジック「2」が再点灯。26日の一戦に勝てば、大谷にとって初のシャンパンファイトが待っている。「そのためにここまで頑張ってきた。あす、ホーム(本拠地)のゲームで(達成)できれば特別」。美酒に酔いしれる瞬間は刻一刻と近づいている。