LGエレクトロニクスVSソフトウエアソリューションチーム長のバレンティン・ジャニオート氏が5日に米デトロイトで開かれた世界的自動車技術見本市「オートテック・デトロイト2024」で、「SDVに向けた旅程」を主題にLGアルファウェアを紹介している。[写真 LG電子]

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「テスラの工場はデータを中心に組まれている工場だ」。テスラと働いたことがある米国の専門家がした話だ。筆者が米国出張中に世界的なデジタル転換専門家らが集まったカンファレンスで、ソフトウエア中心製造業(SDM)を話題に対話した中でこうした話が出た。

テスラが「データ中心工場」を運営しているというのはどういう話なのか。モノのインターネット、デジタルツイン、人工知能(AI)、仮想PLC制御装置、ロボットなど、自動化とスマート化技術が発展しているという意味だ。ハードウエアがしていた部分をソフトウエアが代替し、これらの技術を供給する供給会社の生態系が形成されたという意味だ。こうした工場がソフトウエア中心工場だ。こうした工場を土台にした製造業をソフトウエア中心製造業といえる。ここではソフトウエアシステムを活用して開発、製造工程活動、供給網連結活動を統制して調整する。

既存のハードウエア中心製造業では、ソフトウエアとデータが生産ライン内にあったり、単位工場内に閉じ込められていた。しかしソフトウエア中心製造業ではソフトウエアとデータが生産ライン間にあったり、供給網工場間で相互に連結され連動される。それだけでなくデータが流れる。こうした製造業では既存の生産ライン単位の最適化を超え単位工場全体次元で効果的な措置を取ることができる。

供給網全体次元でさらに柔軟で効果的な措置をし、より柔軟な顧客指向的な製品とサービスを可能にする。ドイツのフォルクスワーゲンの場合、4月のハノーバー見本市でのカンファレンスでソフトウエア中心製造の進展状況を共有した。柔軟性競争力向上次元でソフトウエア中心製造工場は避けられないと明らかにした。

こうした変化の流れをハードウエア人材中心の既存の製造企業が理解することは難しく対応することも難しい。米国のクリーンエネルギーとスマート製造革新コンソーシアム(CESMII)と米国自動車協議会(USCAR)共同の自動車スマート製造ロードマップ報告書(2023年)はこうした製造業の変化を論じながら企業がデジタル思考方式と態度を備えなければならないと注文した。ハードウエア中心製造業からソフトウエア中心製造業への転換は製造業の歴史に一線を引く途轍もないパラダイム変化だ。世界の産業史はこうした急激な変化の過程で既存のパラダイムに安住した産業強国は没落し新しいパラダイムを受け入れた競争国は繁栄したことを生々しく見せる。

同じように企業でも類似のパターンがみられる。ソフトウエアが強い米国でも例外ではない。テスラはソフトウエア中心製造で競争力の上昇街道を走っている。これに対し米国の既存の自動車業界はソフトウエア中心の製造転換を通じた競争力向上に困難を経験している。ハードウエア中心の人材、組織構造、プロセスを備えている既存の自動車業界はソフトウエア中心製造を通じて競争力を強化したテスラとの競争で遅れをとるほかない。

最近韓国の自動車業界が「ソフトウエア中心自動車(SDV)」への転換を宣言して協力連合体を構成したのはうれしいことだ。ソフトウエア中心自動車転換の推進はソフトウエア中心製造業へ進む青信号であるためだ。製造業界の変化を導くカギはハードウエアを背景に成長した現在の製造業のリーダーが握っている。

ハードウエア中心思考のために新しい変化は理解し難く、理解しても受け入れにくい変化だ。骨と肉を削る心情でソフトウエアマインドが強い人材が果敢にリーダーシップを発揮するようにし、これを支援する変化を図らなければならない。これに向け人材、組織構造、業務プロセスをソフトウエア中心企業型に転換しなければならない。

政府はハードウエア中心製造業界の声を分けて傾聴する必要がある。ハードウエア中心政策立案と推進になじむ人材と組織構造などを大々的に変えなければならない。ソフトウエア中心製造業に必要な産業政策を積極的に展開していかなければならない。

韓国は1970〜80年代の重化学工業政策で産業のパラダイムを成功裏に変えた経験がある。これからはハードウエア中心の製造業からソフトウエア中心の製造業へ産業のパラダイムを画期的に変えなければならない。勇気を持って変化してこそ企業も国も未来が明るくなるだろう。

イム・チェソン/建国(コングク)大学経営学部教授、韓国インダストリー4.0協会理事

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