再審判決を前に心境を語る袴田巌さんの姉・ひで子さん(26日午前10時32分、浜松市で)=須藤菜々子撮影

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 1966年の静岡県一家4人殺害事件を巡り、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌被告(88)の再審で、静岡地裁が26日午後2時に判決を言い渡す。

 事件から58年。ようやく迎える再審判決に、袴田さんの姉・ひで子さん(91)は「無罪を期待している」と話し、地裁前には傍聴券を求める人たちが朝から長い列を作った。

 約48年間の身柄拘束で「拘禁症」を発症している袴田さんに代わり、「補佐人」として判決公判に臨むひで子さん。地裁に向かう前、浜松市の自宅マンション前で取材に応じた。ひで子さんは淡いベージュのジャケットに白いブラウス姿で、「平常心です。今日で本当に最終にしてもらいたい」と語った。

 ひで子さんによると、袴田さんはひで子さんの出発前に朝食を済ませ、「静岡に行ってくるからね」と呼びかけると「はい」と応じたという。

 戦後に死刑が確定した事件で再審判決が出たのは過去に4件(いずれも無罪)。今回は「島田事件」の判決(1989年)以来、35年ぶりとなる。

 地裁によると、同日午前には40席の一般傍聴席を求め、502人の傍聴希望者が訪れた。静岡市の男性会社員(53)は「中学時代に事件を知り、支援活動にも協力している。きょうの結果が再審に関する法改正のきっかけになってほしい」と話した。

 地裁近くでは支援者らが街頭に立ち、袴田さんの救済を訴えた。栃木県で起きた「足利事件」で無期懲役が確定した後、2010年に再審無罪となった菅家利和さん(77)も参加し、「今日の無罪判決で終わりにしてもらいたい」と訴えた。

 袴田さんの再審で最大の争点となっているのは、事件の1年2か月後に現場近くのみそタンクから見つかり、赤みのある血痕が付着していた「5点の衣類」の評価。検察側は袴田さんの犯行着衣だと主張する一方、弁護側は捜査機関による「捏造(ねつぞう)証拠」だと訴えている。

 再審は「無罪とすべき明らかな新証拠」が新たに見つかった場合にのみ開かれるため、袴田さんには無罪が言い渡される公算が大きい。