「幸せな家庭」の夢打ち砕く37歳女子のつらい現実

写真拡大


幸せな家庭がほしいだけなのに……。バリキャリ37歳の婚活はつらいことばかりのよう(写真:studio-sonic/PIXTA)

婚活はこじらしてしまうと、ゴールが見えなくなってくる。

スタートした時点では前向きだったのに、うまくいかないことが続くとだんだんと自信をなくし、驚くほどネガティブになってしまう。そんな経験はないだろうか? 

仲人をしながら婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、婚活事情をさまざまなテーマ別に考えていく当連載。今回は、ネガティブになってしまう心理状態を分析しながら、その解決方法を一緒に考えていこう。

相談所なら結婚相手に出会える!

えいこ(37歳、仮名)は有名女子大を卒業後、外資系企業に就職した。年収も800万円越えのバリキャリだ。学生時代から真面目で勤勉なタイプ。その性格は仕事にも表れ、会社での評価も高く、部署のチームリーダーを任されていた。

また、美人でスタイルもよく、一見モテるタイプなのだが、「男性とはいい加減な気持ちで付き合うことができないので、恋愛経験は少ないほう」だと言う。

「私は、小学校から女子大まで女性ばかりの環境にいたので、男性と気軽な友だち付き合いができないんです。付き合うなら、彼氏彼女の関係になる。大学時代に1人、20代のときに1人、付き合っていた男性がいました。20代のときの方は、25歳から28歳までお付き合いして、結婚の話も出たのですが、私は仕事が面白くて、結婚に踏み切れなかった」

誘われれば合コンにも出かけたが、頻繁ではなかった。また婚活アプリは信用できず登録することもなく、ときが過ぎた。

「いい人がいたら、結婚したい」とは思っていたものの出会いはなく、最近、改めて自分を取り巻く環境を見回してみると、恋愛模様が様変わりしていることに気がついた。

「いいなと思う男性は、すでに既婚者で恋愛の対象外になっていました。また、そんな既婚男性からも声がかかるようになって、それもまたショック。遊び相手として見られているということですから」

そこで真剣に結婚を考えるようになり、結婚相談所での婚活を決意した。

「つい最近、結婚相談所で結婚した友だちが、『30代なら、まだまだたくさんのお見合いが組めるよ』と言っていたので」

もう遠回りしている時間はない、という気持ちが強かった。

やることなすこと空回り

「相談所なら、年齢、学歴、年収もわかるし、お写真でどんな方か見た目もある程度チェックできる。あとは、お会いしてフィーリングや価値観を確かめればいいですよね」

こうして、かなり意気込んで婚活をスタートさせた。

お見合い写真は、婚活写真を得意とするスタジオで撮影し、清楚ながらも華やかなイメージに撮れたショットを、サイトに登録した。すると、驚くほどたくさんの申し込みが来た。

ただ、申し込みをかけてくるのは、40代後半の男性が圧倒的に多く、なかには50代、60代からの申し込みもあった。これは、婚活では起こりうる事象だ。

男性は、歳を重ねるほどできるだけ年齢の離れた女性との結婚を夢見るようになる。対して女性は、なるべく歳の近い相手との結婚を望んでいる。また女性の場合も、歳を重ねるほどに、その思いが強くなる。

「やっぱり30歳も後半になると、こんな歳の離れた人からしか、申し込みが来ないのですね」

やる気満々だった気持ちが、ここでくじかれた。

ただ、このときは筆者が“若い女性と結婚したいと思う男性心理”を話し、「歳の近い男性と結婚したいなら、どんどんこちらからお申し込みをかけましょう」と勧めた。

そこで、男性の年齢が40歳までで、自分と同等の年収かそれより高い20人に申し込みをかけた。しかし、それは1件も受諾をされなかった。アラフォーで年収が1000万近い男性は、20代、もしくは30代前半の女性と結婚したいと思っているからだ。

申し込みが受諾されなかったことで、えいこはまた自信を失ってしまった。

期待が次々と打ち砕かれた

婚活をスタートさせたときの、「素敵なパートナーに出会えるかも」「幸せな家庭が築けるかも」といった前向きな期待が次々に打ち砕かれ、ポジティブだった気持ちが急激にネガティブな方向に裏返った。

そんななかでもえいこは、まさお(44歳、仮名)、たかのり(44歳、仮名)、ゆうじ(43歳、仮名)の3人からの申し込みを受諾し、お見合いをした。

ところが、まさおは「会話のキャッチボールができない」、ゆうじは「43歳だが、見た目は50代に見えた」ということで、えいこからお断りを出した。

たかのりには、お見合い後に“交際希望”を出したのだが、彼からはお断りの返事がきた。その理由が、「しっかりし過ぎていて、自分では釣り合わないと思った」というものだった。

3件のお見合いがうまくいかず、えいこはすっかり自信をなくしてしまった。「婚活って、思っていたより大変なんですね。なんだか、疲れてきました。私に何か問題があるのでしょうね」と自嘲気味に言った。

婚活でうまくいかないことが積み重なると、ポジティブな気持ちを維持するのが難しくなっていく。心の中にネガティブな感情が蓄積され、それが疲労感やストレスにつながっていく。

えいこは早くも婚活疲れを起こしていた。

では、ポジティブだった気持ちがネガティブな心理状態に変わったとき、どんなふうに気持ちを切り替えたらいいのか。

まず筆者は、えいこに「今掲げている理想を、現実的なものへと見直しましょう」とアドバイスした。

理想を追い求める期待値が高すぎると、うまくいかなかったときに失望も大きくなる。例えば、近い年齢を希望するなら年収に目をつむる。自分と同等、もしくは高い年収を希望するなら年齢に目をつむる。それは妥協ではなく、妥当な考え方だ。

「具体的に、自分が今、結婚に求める条件をリスト化してみましょう」

相手に求める条件が多すぎる!

すると、えいこは下記の条件を書き出した。

「男性の年齢は、自分に近い」「年収は自分と同等、もしくはそれより高い」「実家暮らしでなく一人暮らし(実家暮らしの男性は身の回りのことを母親任せにしているから)」「再婚でもいいが、子どもがいない」「結婚後も共働き希望」「会社員、公務員。自営業なら1000万円越え」「家事育児を分担してくれる」「大らかな性格で、キレやすかったり大声を出したりしない」

次から次へと書き出すので、筆者はえいこに言った。

「これをすべて満たす男性は、おそらくいませんよね。このなかで、大切なものを3つくらいに絞りこみましょう」

次に、自分の良いところ、ほめられるところを書き出してもらった。これは、これは誰に見せるわけでもないので、書けるだけ書いていい。

「同年代の女性よりも年収が高い」「スタイル、見た目は若々しく維持している」「前向きに仕事の道を切り開いてきた」「信頼できる友だちが多い」などなど。自己評価が低くなっている自分に自信を持てるよう、自分をほめる言葉をたくさん書き出すことで、自己肯定感を上げる。

さらに、「人と比較しないことの大切さ」を伝えた。

えいこは結婚相談所で結婚した女友だちに相談所での婚活を勧められたのが、婚活を始めたきっかけだった。友だちは半年で結婚相手に巡り会えたそうだ。

しかし、初めてのお見合い結婚相手に巡り会える人もいれば、30回、40回お見合いしても巡り会えない人もいる。「あの人にできた結婚が、私にはできない」などと、自分を責めないことが婚活では大切なのだ。

「“ご縁“は、目には見えないもの。いつ訪れるかわからない。また、努力が実を結ばないのも婚活なんですよ」という話もした。

学生時代なら勉強を頑張れば、志望校に合格する。社会人になれば仕事を頑張れば、周りが評価してくれる。勉強や仕事は、努力したぶんだけ成果に結びつく。また、入試や就職試験、資格試験などは日にちが決まっており、そこに照準を合わせて勉強の計画を立てることができる。

「ところが、婚活はゴールが見えないんです。努力してもそれが空振りしてしまうこともある。ゴールが見えていないからこそ、息切れしてしまうんですね」

自己肯定感を上げることが大切


この連載の一覧はこちら

だからこそ、婚活がうまくいかなかったら、現在の活動の仕方を見直し、相手の条件を広げてみる。疲れていたら、まずは気持ちをリセットする。自己肯定感を上げるために、自分をほめる。

そして、弱音を吐ける相談者を見つけることが大切なのだ。そのために仲人の筆者がいることも告げた。

「どういう人が結婚できているのか。それはあきらめずに出会い続けた人なのですよ」と言うと、えいこに少し笑顔が戻った。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)