なんと「静寂」まで聴こえる…ハイレゾ音源が「耳で聴き取れる以上」の高い周波数までカバーする、じつに納得の理由

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類稀なる高音質で、話題になったネットオーディオ。しかし、割高な価格とダウンロードのわずらわしさから一部のマニアにしか支持されませんでしたが、高音質定額制配信サービスの出現で、大きく変わろうとしています。

ベテランと言われるオーディオ愛好家の中にも、CDやレコードなどの「パッケージメディア(パッケージ音源)」によるオーディオなら知識も経験もあるが、ネットワークが重要になった最近のオーディオに関しては、専門用語の意味もわかりにくいと感じている人もいるかと思います。

はじめてネットオーディオに挑戦するオーディオファンや音楽ファンを対象に、機材の選び方、高音質ストリーミングのセッティング、煩わしいネットの設定などなど、聴き放題の“1億曲ライブラリー”を手にするノウハウをご紹介しましょう。今回は、よく耳にする「ハイレゾ」についての解説です。

※この記事は、『ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう』の内容を再構成・再編集してお届けします。

CDの規格を上回る「ハイレゾ」

CDを上回る高音質を意味する「ハイレゾリューション・オーディオ(High-Resolution Audio)=ハイレゾ」という呼び方が市民権を得たのは2010年代前半のことでした。

ハイレゾの基準はCDの規格を上回るかどうかという点に注目し、音源とオーディオ機器それぞれについて、サンプリング周波数量子化ビット数の数値がCDの規格を上回るかどうかで判定します。

この2つの指標は音楽信号の情報量を判断する目安になります。オーディオ機器では単純に数値が大きければ音が良いというわけではありませんが、音源については録音方式に忠実な方が高音質を引き出しやすいなど、ある程度の参考になります。

サンプリング周波数、量子化ビット数の意味

一般にデジタル録音・再生の音質改善は、周波数範囲を広げることと、強弱の差をよりきめ細かくすることで実現します。前者はサンプリング周波数を上げること、後者は量子化ビット数を増やすことを意味します。

サンプリング周波数を上げると一定時間にサンプリング(標本化)する回数が増え、より高い周波数の音を録音・再生できるようになります。

一方の量子化ビット数を増やすと音楽信号の振幅を表現する単位が細かくなり、微妙な強弱の差を聴き取ることができるようになります。

重要な高域限界の情報を正確に再現する

CDのサンプリング周波数は44.1kHzなので、1秒間に44100回のサンプリングを行います。CDはそれによって人間の耳が聴き取ることができる約20kHzの高域限界 (可聴帯域の上限)を理論的にはほぼカバーできるとされています。それでは、さらに可聴帯域以上の高い周波数領域まで録音・再生を拡大すると、どんなメリットが生まれるのでしょうか?

高域限界に近い音域に含まれる情報は微細なものですが、重要な役割を担っています。例えば余韻や奥行きなどの空間情報、さらに楽器から音が出る瞬間(アタック)に生まれる複雑な倍音成分などが含まれます。特にアコースティック楽器を響きの豊かなコンサートホールやスタジオで録音した音源では、それらの微細な情報の有無で演奏の印象まで変わることがあり、ホールトーンの広がり、ステージの遠近感、楽器ごとの音色の違いなどを識別することができます。

情報を圧縮した従来のストリーミングではそこまで微妙な情報を引き出すことは難しく、実際に注意深く聴き比べてみると違いに気付きます。それらの微妙な情報まで忠実に記録し、正確に再生することがハイレゾの重要な存在理由の一つと考えられています。

ハイレゾ音源の課題

ハイレゾはデータ量が大きく、複数の方式が存在する一方、微細な情報を豊富に含むハイレゾ音源はそれだけデータのサイズが大きくなってしまうという課題があり、個別に音源を購入する場合は、通信環境によってはダウンロードの時間が長くなってしまいます。

2010年前後のインターネット環境では、それがハイレゾ音源の普及を妨げる要因の一つになっていました。しかし、その後の通信環境の改善によって、近年ではそこまで大きな障害になることは少なくなりました。

ただし、海外の音楽配信サイトから購入する場合など、思いがけず時間がかかることもあるので、購入する前にデータ量を確認しておく必要があります。

保存容量の確保の問題

データ量が増えることのもう一つの問題は、音源を保存するハードディスク(NAS)の容量が不足しがちになることです。192kHz/24bit またはそれ以上のPCM音源11.2 MHzのDSD音源を大量に購入して保存すると、1〜2TB程度のハードディスクではすぐに容量不足になってしまいます。

ここでPCMとDSDというのは、ダウンロードするハイレゾ音源のデジタル化の形式のことです。データ形式はPCMとDSDの2つだけではなく、実際のダウンロード型の音楽配信では、符号化形式(圧縮方法)の違いでさらに多くの形式が存在します。CDなどのパッケージメディアと異なり、ネットオーディオはデジタル化形式や符号化形式の知識がないと、オーディオシステムを組むことはもちろん、音楽配信サービスを利用することも難しくなります。

ただし、わかってしまえばそれほど複雑なことでもなく、以後ネットワークオーディオを存分に楽しむことができますから、理解しておくことをお薦めします。ここでは、データ形式の代表としてPCMとDSDのしくみをご紹介しましょう。

ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう

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