Image: Science Animated / YouTube

バクテリア最強説。

パソコンやスマホなどのガジェットや電気自動車のバッテリー、再生可能エネルギーに使用されているリチウムやコバルトをはじめとするレアメタルは、気候変動や環境問題を解決して、持続可能な社会を実現するために必要不可欠です。

とはいえ、需要に供給が追いつかない状況のため、電子廃棄物などからリサイクルすべきという声が挙がっています。電子廃棄物に眠っているレアメタルのリサイクル率はたった1%なので、金脈のようなものです。

持続可能な社会の鍵になるレアメタル

なかなか重い腰を上げない人間に代わって、「バクテリアにレアメタルをリサイクルしてもらえばいいじゃん」と、エジンバラ大学の科学者たちはトライしているようですよ!

使い古したバッテリーや電子廃棄物から、リチウムやコバルト、マンガン、ニッケルなどの鉱物を抽出してリサイクルするために、バクテリアを活用できるといいます。

レアメタルの必要性について、同大学の生物科学教授であるルイーズ・ホースフォール氏は次のように話しています。

石油化学製品への依存をやめて、暖房や輸送、動力源を電化しようとすれば、鉱物資源の需要はますます高くなるでしょう。

太陽光発電やドローン、3Dプリンター、水素燃料電池、風力タービン、電気自動車のモーターなどは、すべて鉱物を必要としています。その多くは、それらの技術の鍵となるレアメタルです。

解毒作業でレアメタルを吐き出す

そんな期待を一身に背負ったバクテリアは、いったいどうやってレアメタルをリサイクルするというのでしょうか。

ホースフォール氏によると、バッテリーや自動車から採取した廃棄物を溶かして、バクテリアの菌株と混在させると、バクテリアはそれを毒だと判断して鉱物の原子に取りつき、ナノ粒子にして吐き出すのだそうです。毒殺されないためには浄化して吐き出さなきゃ、と。つまり、解毒作業の中でレアメタルを抽出してくれているのです。

研究チームは、自然界に存在するバクテリアの菌株を使って特定の鉱物に付着させ、固体化した化学物質として沈殿させて抽出することに成功しました。これまでにマンガン、ニッケル、リチウム、コバルトを抽出できたとのことです。

今後は特定の鉱物を効率よく抽出するために、バクテリアの遺伝子を組み換えて、生産量を増やす計画だといいます。その次の段階は、バクテリアが抽出したレアメタルを、電子機器やバッテリー、再生可能エネルギーなどの素材として再利用できるのを実証すること。

ホースフォール氏はその意義について

(再利用できれば)グリーンテクノロジーを活用した循環型経済の実現に貢献しているといえます。

新しい法律では、今後10年で新たに導入されるグリーンテクノロジー機器に、かなりの割合のリサイクル鉱物を使用する義務があります。この困難な目標を達成するには、バクテリアが不可欠なのです。

と述べています。

バッテリーや再エネなどに使用されるリチウムとコバルトは、生産国が偏っているのに加えて、サプライチェーンの人権侵害が問題になっています。

リチウムは現在オーストラリアとチリ、中国が世界全体の大半を生産しています。コバルトは70%がコンゴ民主共和国で採掘されていますが、児童労働や強制労働が問題になっています。

電子廃棄物や古いバッテリーなどに含まれるレアメタルをリサイクルできれば、より持続可能で健全なサプライチェーンに支えられた循環型経済の構築につながります。

バクテリアさん、お世話になります。

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Source: The Guardian

Reference: 世界経済フォーラム, University of Edinburgh