進次郎の「クビ切り改革」も、石破の「カネ持ち増税」も最悪だ…!大混乱の総裁選で「意外とまとも」な経済政策を掲げた候補者の名前

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泣いても笑ってもまもなく、小泉進次郎、石破茂、高市早苗の中から総理が決まる見通しだ。候補者の中で「マトモな経済政策」を掲げているのはいったい誰なのか?

前編記事『【進次郎は「日本経済の破壊者」か…「竹中平蔵」の顔がチラつく、「解雇規制見直し」の「絶望的な政治センスのなさ】』に続いて、各候補の政策を吟味する。

「痛み」を思い出した

進次郎が唱える、父親譲りの「規制緩和路線」について、市場関係者のあいだでは歓迎する声も多い。ところが明治大学教授(経済政策・マクロ経済学)の飯田泰之氏は、こんな懸念を語った。

「私が疑問なのは、解雇規制の見直しが、本当に雇用の流動性アップにつながるのかどうかです。会社からクビにされやすくなれば、いまの仕事にもっと必死でしがみつく人が増えるかもしれません。

ムリに転職させるのではなく、『人手が足りないから、いい人材を雇いたい』という需要が生じ、賃上げが進み、より給料の高い企業を労働者が選ぶ状況が生まれないと、こうした政策はうまくいかない。賃上げよりも規制緩和を先行させるのは、順序が逆なのではないかと思います」

進次郎は「現在の解雇規制は、昭和の高度成長期のもの」と述べ、暗に「時代遅れだ」と批判する。しかし「日本より解雇規制が緩い」とされる諸外国では、手厚いセーフティネットがセットになっている。

法政大学教授(財政学・公共経済学)の小黒一正氏が言う。

「北欧諸国では、政府も関与して労使交渉で生産性向上に準拠しつつ賃上げ率を決めたり、求職中は産業別の組合から失業手当が出て、それでも決まらないと国から手当が出る制度があります。またオーストラリアでは、休日出勤に平日の2倍の賃金を出す制度もある。労働者に有利なしくみも整備されているのです。

進次郎氏も徐々に軌道修正していますが、単に『できない人を解雇して訓練する』だけでは、本質的な問題の解決は難しいでしょう」

進次郎の掲げる雇用政策は、結局のところ「日本人はもっと頑張って働け」「優秀な人は待遇アップ、そうでない人は退場」というメッセージに映る。父の政権で味わった「痛み」を国民が思い出し、圧勝のシナリオに赤信号が灯った。

石破「金融所得課税の強化」の真実

いっぽう、進次郎を追撃する石破の泣き所となっている政策が、先にも触れた「金融所得課税の強化」だ。

かつては「金持ちから税金を取るのはいいことだ」と多くの人が歓迎したものだが、投資人口が増えている昨今、手放しでは喜ばれなくなった。

第一生命経済研究所の首席エコノミスト、永濱利廣氏は手厳しい。

「経済政策の基本は金融政策、財政政策、成長戦略です。基本政策が『利上げ容認・財政健全化・金融所得課税』となると、なかなか消費が喚起されず、限界があるでしょう。

日本の政治家はマクロ経済政策に踏み込み不足の感があります。日本のような大国の経済が、ミクロの政策だけで上向くことは難しいでしょう」

本当に可能なのか?

また、前出の飯田氏は、石破の政策の「政治的な難しさ」を指摘した。

「金融所得課税の強化は、石破氏の支持基盤である地方の庶民には支持されるかもしれませんが、どこまで可能なのか。

というのも、金融所得課税を見直すと配当金や証券会社などが払う税金にも影響が出ますから、法人税のあり方を見直す必要がある。さらには、所得税も見直そうという話になるでしょう。結局、『税の抜本改革』をやらざるを得ないのです。

現実味が薄いという点を考えると、庶民感情に訴えるためだけの政策ではないか、と見えてしまいます」

意外にも識者からの期待度が高かったのが、事前調査では支持率1〜3%に沈んでいる、党幹事長の茂木敏充だ。「増税ゼロ」を掲げ、岸田政権の「防衛増税」と「子育て支援金」に反旗を翻して物議を醸したが、法政大学教授(政治学)白鳥浩氏はこう評価する。

「ずっと『増税ゼロ』というわけではなく『経済成長で税収が伸びれば増税は必要ない』と言っていて、じつは最も現実味のある政策だと思います。

おそらく茂木氏は、進次郎氏との違いを明確にしようとしたのでしょう。68歳で、ここで目立つ政策を出さなければ後がない。たとえ今回はダメでも次の総裁選につなげよう、新首相が失敗すれば、自分にチャンスが巡ってくる――そんな思いも透けて見えます」

経済政策は新政権の命綱となる。冷徹な合理主義だけで押し切っても、逆に甘言を弄して人気取りに走っても、国民は必ずそっぽを向いてしまうだろう。

さらに【石破茂の「地方と高齢者にやさしい政治」は夢物語かも…10年経っても日本衰退は止まらなかった「地方創生の大失敗」】では、有力候補の一角・石破茂が掲げる「地方第一主義」の落とし穴について詳しく報じる。

「週刊現代」2024年9月28日号より

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