1回1死一、二塁、岡本和が左前に先制の適時打を放つ(カメラ・義村 治子)

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◆JERA セ・リーグ 広島5―4巨人(21日・マツダスタジアム)

 誇らしげに4番が右手をベンチに向かって掲げた。また岡本和真内野手(28)のバットが火を噴いた。初回にいきなり左翼線へ先制の適時打。ベンチの首脳陣、ナインも拍手喝采だ。勝負強さを発揮し、試合の主導権を引き寄せた。しかし、チームは3点リードの8回に4点を奪われて逆転負け。頼りになる男は敗戦の悔しさを受け止めた上で、気持ちを切り替えた。

 「負けたら意味がない。明日は勝てるように頑張っていきたいと思います」

 天敵攻略の先陣を切った。両チーム無得点の初回1死一、二塁。1ボール2ストライクから、アドゥワの外角低め129キロスライダーに食らいつき、左翼線へ適時打。「先制のチャンスでランナーをかえせて良かったです」。6回先頭では左前安打で出塁し、横川の適時打を呼び込む起点となった。試合前時点で今季25回2/3で4点しか奪えていなかった長身右腕を打ち砕いた。

 もう手がつけられない。8回には左前安打を放ち、今季初の2試合連続猛打賞。連続試合安打は今シーズン最長の11に伸びた。直近6試合では22打数10安打で打率4割5分5厘、4本塁打、8打点。シーズン佳境を迎えた状況で完全に目覚めた。

 地道に向き合ってきたからこそ勝負の時期に豪打がさく裂する。今季は打球速度やスイング軌道などのデータを確認する機会を意識的に増やした。「プラスになると思っているんで活用してる。コンディショニングにも使えると思いますし、バッティングをデータでみるのも必要だと思ってやってます」。打撃練習中はバットスピードやスイングの角度、インパクトのポイント、振りの加速度など、さまざまな数値を首脳陣やアナリストと確認。特に意識しているのは、バットが下から出過ぎていないかどうか。自身の感覚と客観的なデータをすり合わせながら、試行錯誤している。

 悔しい敗戦となったが、引きずってはいられない。22日からは2ゲーム差の2位・阪神と敵地・甲子園での2連戦に臨む。岡本和は主将らしくチームの思いを代弁した。「明日、また切り替えて頑張っていきたいと思います」。歓喜の瞬間が訪れるまで、先頭に立って道を切り開いていく。(宮内 孝太)