卵管不妊手術は女性の卵管を切除したり、結んで閉鎖したり、除去したりすることによって妊娠できなくする不妊手術の一種です。多くの人は「卵管不妊手術をしたらもう妊娠しない」と考えていますが、実際には人々の予想よりかなり高い確率で、卵管不妊手術後の女性が妊娠するケースがあることがわかりました。

Pregnancy after Tubal Sterilization in the United States, 2002 to 2015 | NEJM Evidence

https://evidence.nejm.org/doi/10.1056/EVIDoa2400023



What Are the Chances You’ll Get Pregnant After a Tubal Ligation? | UC San Francisco

https://www.ucsf.edu/news/2024/08/428281/what-are-chances-youll-get-pregnant-after-tubal-ligation

Having Your Tubes Tied May Not Be as Reliable For Birth Control as You Think : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/having-your-tubes-tied-may-not-be-as-reliable-for-birth-control-as-you-think

複数の州で中絶サービスへのアクセスが制限されているアメリカでは、恒久的な避妊法の1つとして卵管不妊手術への注目が高まっています。アメリカ全土の統計によると、30〜39歳の女性の21%、40歳以上の女性の39%が卵管不妊手術を受けているとのこと。卵管不妊手術を受けるのは、特に低所得層や慢性疾患を持つ女性で一般的だそうです。

アメリカ産科婦人科学会は患者に対し、卵管不妊手術を受けた後に妊娠する確率は1%未満であるとアドバイスしています。そして多くの場合、患者自身も「もう避妊具を使う必要がなくなった」と認識しています。

ところが、アメリカ産科婦人科学会の数字は20世紀後半に実施された研究に基づいたものであり、実際の数字は異なっている可能性があるとのこと。卵管不妊手術を受けたにもかかわらず妊娠してしまった場合、母親や生まれてくる子ども、あるいは中絶された子どもへの影響は深刻です。

そこで、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のエレノア・ビムラ・シュワルツ教授らの研究チームは、2002年・2006年〜2010年・2011〜2013年・2013年〜2015年にアメリカに住む女性から収集した「National Survey of Family Growth(NSFG:全米家族成長調査)」のデータを分析しました。4つのデータ収集時期にまたがる被験者のうち、4184人が卵管不妊手術を受けていました。



分析の結果、卵管不妊手術後に妊娠する確率は4つのデータ収集時期によって異なりましたが、全体として参加者の2.9%〜5.2%が「卵管不妊手術を受けた後に妊娠した」ということが判明しました。

データ収集が2013年〜2015年に行われた最も新しいグループでも、手術後最初の12カ月以内に2.9%が妊娠していました。手術後120カ月(10年)以内に妊娠する推定確率は、なんと8.4%に達したと報告されています。

今回の研究結果からは、卵管不妊手術が妊娠を防ぐ最善の方法ではないことがわかります。実際、腕の皮下などに挿入して避妊効果を発揮するホルモンを分泌する避妊インプラントや、避妊リング(子宮内避妊具:IUD)を使っている女性の方が、卵管不妊手術を受けた人よりも妊娠しにくいとのことです。

シュワルツ氏は、「自分に合った避妊法を選ぶ時、人々は安全性・利便性・即効性などさまざまなことを考慮します。永続的な避妊法を選んだ人にとって、妊娠したことを知るのはとてもつらいことですが、残念ながらこれはかなり一般的であることが判明しました」とコメントしました。