「日本は島国だから…」エミン・ユルマズ氏が国際社会で「日本の安定感が際立っている」「少子高齢化も強み」と主張するワケ

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円安・物価高が直撃する中、日経平均が大暴落を記録するなど、経済の先行きに不安が高まっている。国内の少子高齢化を悲観する声も多いが、日本経済は果たして大丈夫なのだろうか。

第一生命経済研究所の永濱利廣氏との共著『「エブリシング・バブル」リスクの深層 日本経済復活のシナリオ』(講談社+α新書)を刊行したエコノミストのエミン・ユルマズ氏が、日本経済の見通しを解説する。

前編記事『中国や韓国に比べると日本の将来は明るい…エミン・ユルマズ氏が「日本の少子高齢化は気にしなくていい」と断言する理由』では、長期的な世界経済の観点から日本の窮状を見つめなおした。

労働力が余ってきている

労働力がいらなくなってきているのも世界的な流れです。

アメリカやヨーロッパでは移民排除の動きが進んでいますが、結局、少子高齢化が進む一方で、仕事がAIに奪われ始めているので、人手がいらなくなっていることの証左でもあります。もし本当に人手が必要なら、むしろ移民を呼び込もうとするはずです。

中国でも少子高齢化が進む一方で、労働力が余ってきています。

中国の2023年4〜6月の16〜24歳失業率は21.3%と20%を超えました。中国当局はあわてて若年層失業率の公開を取りやめ、算出方法を見直して2024年1月に公表を再開していますが、もちろんこの数字をそのまま受けとるわけにはいきません。中国の本当の若年層失業率は5割弱という説もあります。

「豊富な労働力」がもはや強みではなくなっているのです。

少子高齢化で世界はカオスに直面する

インドも人口の増加が続いており、2023年に中国を抜いて世界1位になりましたが、インドもいずれ労働力の余剰に直面するでしょう。

そもそもインド経済の強みは、ソフトウェア開発などIT産業ですが、これらはもともと労働力をあまり必要としない分野です。

労働力が余り、失業率が増加すると、どんな国でも国民には不満がたまり、政権交代のリスクも高まります。

モディ政権は一見安定しているようにも見えますが、6月に行われた総選挙では、モディ首相率いる与党が予想外に大きく議席を減らしました。モディ氏は3期目の首相に就任しましたが、連立を組むことになり、これをリスクと見て一時インド株は暴落しました。

もともとインドはもともとカオスを絵に描いたような国です。

そんな国で「人口余り」がどんな未来をもたらすか、慎重に見極める必要があります。

日本の安定感が際立っている

反面、日本は世界でも治安と社会の安定感においては世界でも有数の国。

おまけに少子高齢化で労働力の余剰はありません。島国だから不法移民が大勢押し寄せてくることもない。

半導体産業なども強く、ロボット・AIの普及によりメリットを受けられる立場にあります。

それを考えると、少子高齢化は少なくとも今後の日本経済の足かせにはならないと見ていいと思います。

映画「ターミネーター」が現実になる

AI・ロボット化によって大変革がもたらされるであろう分野に、軍事・防衛産業があります。

戦争には「新兵器の見本市」という側面がありますが、2022年に始まったウクライナでは、ドローンの脅威が戦場を席巻しています。

安価な自爆ドローンが、高価な戦車を次々に撃破したり、遠くロシア国内をドローンで攻撃したりと、猛威を奮っています。

現状のドローンは完全自律型ではなく、人間が遠隔操作していますが、いずれAIによって自動で敵を攻撃するドローンも実用化されるでしょう。

映画「ターミネーター」のような世界がやってくるわけですが、そうなると戦争のあり方が一変します。

近い将来、少なくとも最も危険な最前線での戦闘はドローンが担うようになるでしょう。そうなると、戦場で人が死ぬリスクがかなり低くなります。

「世界が戦争の時代に突入する」リスクも

これまで西側先進国が戦争を忌避していたのは、自国民が死ぬからです。

西側先進国はいずれも民主主義国であり、国民の命を犠牲にするような政策を実行できません。だからなるべく戦争を回避する方向で国家を運営してきたわけです。

ただ、戦争で人間が死ななくなると話は別です。

西側先進国にとって戦争を思いとどまる理由がなくなります。

特にアメリカのように非常に強力な戦力を保有する国は、もしかすると今後軍事と戦争に傾斜していくかもしれません。

日本でも防衛力の増強が叫ばれていますが、一方で少子高齢化による人手不足で人員増強が難しいようです。特に海上自衛隊では人員が足りず、艦艇の省力化などで対応しているそうですが、ドローンやAIの導入で解決できるかもしれません。

もともと自衛隊は憲法との兼ね合いもあり、シーレーン防衛や弾道ミサイル迎撃など、一部の機能に特化した装備でした。

ただ、中国の軍備増強と、尖閣諸島などへの領土的野心の高まりで、離島防衛や台湾有事対応など、求められる能力が増え、装備が追いついていない現状もあります。

一挙にドローン化を進めることは、防衛力の適切な増強にもなるため、うまく進む可能性が高い。

この面でも日本の少子高齢化は、一気に変革を進める力になりうる点で、大きなアドバンテージとも言えるのです。

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