「子どもの彼氏・彼女」にケチをつけたり、就活で「志望企業」をけなしたり…子どもに愛情を注ぎすぎた母親が「なぜか子どもの成長を妨害するワケ」

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日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。特に人生の後半、長生きをすればするほど、さまざまな困難が待ち受けています。

長生きとはすなわち老いることで、老いれば身体は弱り、能力は低下し、外見も衰えます。社会的にも経済的にも不遇になりがちで、病気の心配、介護の心配、さらには死の恐怖も迫ってきます。

そのため、最近ではうつ状態に陥る高齢者が増えており、せっかく長生きをしているのに、鬱々とした余生を送っている人が少なくありません。

実にもったいないことだと思います。

では、その状態を改善するには、どうすればいいのでしょうか。

医師・作家の久坂部羊さんが人生における「悩み」について解説します。

*本記事は、久坂部羊『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。

熱心な母親が陥る空の巣症候群

中高年の後半は、子育てが一段落する時期でもあります。

それまで仕事に追われつつも、熱心に子育てをしてきた母親は、子どもが立派に育って独り立ちすれば嬉しいはずです。ところが、子どもが就職や結婚で家を出ると、急に心に空洞ができたように感じ、精神的に落ち込む母親がいます。ひな鳥が巣立って、空になった巣に取り残されたような状況から、「空の巣症候群」と呼ばれます。

子育てに熱心なのはよいことですが、愛情を注ぎすぎて、子育てが自らの生き甲斐になっている母親は危険です。

場合によっては、せっかくこれまで成長を促しながら、無意識のうちに独り立ちを妨害したりします。そういう母親は子どもの側に立っているのではなく、自分の思い通りに育てたいと思っているので、子どもの反発を招くことも多々あります。

大学で講義をしていたとき、「空の巣症候群」になりそうな母親の見分け方を教えました。彼氏か彼女を紹介したとき、「あんな子のどこがいいの」とか、「もっとましな相手はいないの」などと言う母親や、就活のとき、自分が希望する企業をけなす母親です。いずれもケチをつけることで、息子や娘が自分から離れていくのを阻止したいという気持ちが表れています。

真に子どもの成長を願っている母親なら、大人になりつつある子どもの選択に、自分の価値観を押しつけたりしないはずです。

さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6〜7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。

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