9月26日、いわゆる「袴田事件」の再審判決が言い渡されます。「LIVEしずおか」では判決当日まで事件が現代に問いかける問題に迫るシリーズ企画をお送りしています。

【写真を見る】「証拠開示は我々がいくらやっても無力」検証「袴田事件」(2)58年の歴史が問う司法のあり方 9.26再審判決

9月19日、都内では国会議員や市民2500人以上が参加する集会が開かれ、袴田さんの無罪判決を求めました。58年続く袴田事件は再審=裁判のやり直しをめぐる国の法律を変えつつあります。

「FREEHAKAMATA!」

音楽の聖地、「野音」。袴田事件の判決まで1週間となった9月19日、袴田巖さんの姉、ひで子さんがステージに立ちました。

<袴田さんの姉 ひで子さん>

「私たちの裁判もあと1週間でございます。1週間後には判決が下されるものです。私は巖は無実だから無罪だと思っています」

事件から58年が経った袴田事件。なぜこれほどの時間が費やされたのか。指摘されるのが再審について定める「再審法」の不備です。

1966年、旧清水市で起きた「袴田事件」をめぐっては1980年に袴田さんは死刑が確定し、翌年から再審を求めました。

再審が認められるには「無罪の可能性を示す新しい証拠の提出」が必要です。袴田さんの弁護団は検察に証拠の開示を求めましたが、検察は長らく一切の証拠を出しませんでした。

<静岡地裁(2014)>

「再審開始です」

再審の扉を開いたのは検察から開示された証拠でした。事件から40年以上が経ち、ようやく開示された犯行着衣のカラー写真やネガ。着衣についていた血痕の赤みについての真偽の判断が袴田さんの再審開始につながりました。

<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>

「やっぱり、証拠開示で出てくる証拠は、検察官が公判には出さないでおこうという風に判断した証拠ですよね。被告人にとっては、弁護人にとっては、みんな有利な証拠なんですよ」

「再審法」には証拠開示に関するルールがありません。そのため、弁護側が開示を求めても検察に開示の義務はないため応じず、年月ばかりが経過するのです。

<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>

「証拠開示というのは、本当に我々がいくらやっても無力だったというのがあって。検察官のその時点での裁量だけで決まってるということですね」

指摘される「再審法」の不備はそれだけではありません。1度は袴田さんの再審開始が認められましたが、検察の不服申し立てによって取り消されました。結局、再審が確定するまでには9年の月日がかかりました。

日弁連は検察が決定に不服を申し立てる「抗告」は「冤罪被害者の救済を遅らせる」と批判しています。

<再審法改正実現本部 鴨志田祐美弁護士>

「検察官は言いたいことがあれば再審公判で有罪を主張すると、袴田事件でもそうでしたように、言いたいことは言えるわけですよね。(裁判を)やり直すかどうか決める場所でいつまでもやってる必要はないということで全く無用な制度だと思います」

「袴田事件」をきっかけに再審法改正の機運が全国的に高まっています。2024年、「再審法」の改正を目指す超党派の議員連盟が結成され、現在300人以上の国会議員が名を連ねています。

法務大臣に提出した要望書には、証拠開示の制度化、検察による抗告の禁止などが盛り込まれました。

<袴田さんの姉 ひで子さん>

「47年間、巖が拘置所で頑張った。その頑張りを再審法にぜひ皆様のお力で改正なりしていただきたい思っています」

30歳で逮捕された袴田さんは現在88歳。死刑の恐怖におびえながら過ごした半世紀近くに及ぶ獄中生活の影響で、精神が不安定となる状態は今も続いています。

あまりにも長い袴田事件の歴史は司法の在り方を変えつつあります。日弁連によりますと、12道府県の議会を含むおよそ350の地方議会では再審法改正を求める意見書が採択されています。

袴田さんの判決は来週、9月26日の午後2時から言い渡されます。