BE:FIRST『2:BE』LIVE盤

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<CD Chart Focus>

参考:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2024-09-09/

 2024年9月9日付(9月4日発表)のオリコン週間アルバムランキングによると、BE:FIRSTの『2:BE』が推定売上枚数106,908枚で1位を獲得。その後、IVE『ALIVE』が推定売上枚数99,221枚で2位、米津玄師『LOST CORNER』が推定売上枚数48,388枚で3位と続いた。

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 今回取り上げるのは、1位となったBE:FIRSTの2ndアルバム『2:BE』。これで2作連続1位獲得となったBE:FIRSTは、今年春に初のドーム公演も成功させるなど、現在飛ぶ鳥を落とす勢いで成長中。ボーイズグループ群雄割拠の時代にあって、彼らがここまで大きな飛躍を遂げることができた理由の一つは、楽曲で表現されている彼らの“理念”や“姿勢”に多くの人々からの支持が集まっているからだろう。それは本作にも色濃く表れている。

 新録曲を中心に触れていこう。1曲目の「Slogan」は、アルバムの幕開けに相応しいパワフルなサウンドと彼らの高い意識がリリックに表現された一曲。“スローガン”と題されたこの曲は、〈実行 Masterplan まだ序盤〉や〈Mainstream かっ飛ばす ホームラン〉など、収録曲のタイトルをリリックに並べるギミック性と、声に出して歌いたくなるような語感の心地よさが同居している。なにより〈慢心も媚びもしないのが主義〉というパンチフレーズは、今後の彼らのさらなる飛躍を期待させるものだ。

 そして、音楽的にも面白い。2分半ほどの「Guilty」は、序盤で高揚した聴き手の気分を一旦落ち着かせる。サウンドの中心はシンセで、ミディアムテンポで刻まれるタイトなリズムがクールだ。ボーカルは伸びやかな表現と、静かに耳を刺激する息混じりの歌唱との対比に聴きごたえあり。ビートの強いR&B系の「Sapphire」は、浮遊感のあるシンセサウンドとエモーショナルなボーカルの絡み合いが魅力だ。低体温なトラックに対して熱量のある歌声が、主人公の悲哀を歌うこの曲の世界観に奥行きを与えている。ドラマチックで壮大なストリングスアレンジの施された「Metamorphose」も低い主旋律を歌う様子が印象的。ただ激しく力強く歌うだけではない深みを感じる。

 前曲で漂っていた不穏な空気が予兆していたかのように、一段と攻撃性を増すのが9曲目の「Genesis」。ソリッドな電子音が全編にわたり展開され、途中で大胆なリズムチェンジも行われる。歌詞は〈あれもこれも俺の餌になる餌になる/ご馳走様 ご馳走様 皆様〉といった畳み掛ける繰り返しのフレーズがクセになる。このあたりは制作に参加しているAile The Shotaのセンスだろうか。随所に散りばめられた宇宙規模のスケール感のワードチョイスもグループのイメージによく合っている。勢いがさらに加速する次の「Selfish」は、彼らの自由奔放さが表れた一曲。リリックにはシーシャやチーズ、ピザなどジャンキーなワードが登場し、全体的に子供のような遊び心を感じる。

 終盤に登場する「Bump Around」と「Blissful」は東京を拠点とするアーティスト集団・INIMIが手がけた作品で、いずれもグループの底知れない野心が全面に表れている。とりわけ「Bump Around」の〈普通って何?〉と問いかけるメッセージや、「Blissful」における〈常識はたまに邪魔になる/その先を探しにここまで来た〉の一節は象徴的だ。

 総じて、ヒップホップを主軸にした多種多様なトラックの上で、グループの持つ高い意識や理想、あるいは品格やプライドといったものまで表現されたアルバムと言える。そうした“人としてかくあるべき”といった姿勢が、BE:FIRSTの大きな人気を支えているのだろう。メンバーたちの魅力ももちろんだが、楽曲で表現されるある種のフィロソフィーが幅広い共感を呼んでいるように思う。しかも、そうした中にも「Guilty」や「Selfish」のような人間味のある一面も描かれる。その多面性を保ちながら、理想に向かってひた向きに切磋琢磨する彼らの姿勢が、現在のボーイズグループ全盛の時代を生き抜く鍵となるのかもしれない。

(文=荻原梓)