(写真:AFP=時事)

「令和の米騒動」とも呼ばれるコメ不足で、各地のスーパーで品薄状態が続いている。南海トラフ地震の臨時情報が出された際のパニック買いにより、品薄に拍車がかかった形だ。コメが手に入りにくくなった状況で、どういった商品がコメの代わりに買われているのだろうか。消費の動向をみていきたい。

実は足元で増加していたコメの購入

以前は日本人のコメ離れが進んでいるとも言われていたが、足元ではコメの購入は増えてきている。全国の男女約5万人の生活者から買い物データを継続的に聴取している「インテージSCI」から、コメの購入金額と購入率の推移を確認した。ここで購入金額とはコメを買った人の1カ月あたりの平均購入金額、購入率とはコメを買った人の割合だ。


巣ごもり需要が拡大した2020年をピークとして購入金額・購入率は2022年にかけて減少していたが、2023年に緩やかな増加に転じている。

2023年以降の月別の推移をみると、コメの購入金額は2023年10月に前月よりも137円高い2388円となった。10月は新米の流通が本格化する時期であることから、新米の値上がりで金額が伸長したのだろう。値上がりしたのは、肥料や燃料の価格といったコメの生産コストが上昇したためとみられる。


その後も購入金額は増加傾向にあり、2024年7月には前年7月よりも500円近く高い2788円となった。また購入率は、おもち料理の増える1月には落ち込むなど季節性が見られるものの前年同期よりは高い状態が続き、2024年3月以降は20%以上を維持している。コメの価格が上昇するなかでも、コメを買う人は増えていることがわかった。

パンや麺類といった小麦系の主食の価格が2022年ごろより上昇傾向にあったこともあり、多少値上がりしたとはいえコメのコスパのよさが支持されているようだ。

店頭で起きたコメの品薄

店頭での品薄状況を確認するため、全国約6000店舗の販売動向を追っている「インテージSRI+」から、スーパーマーケットにおけるコメの販売金額と商品数の前年比を見てみたい。


コメの販売金額は2024年に入ってから増加を続け、2024年8月5日週には前年比179.9%にまで伸長。8月8日に南海トラフ地震の臨時情報が発表されたことが影響したようだ。備蓄のためにコメを購入する動きだけではなく、店頭で品薄となっているという情報が拡散し、パニック買いも起きたものとうかがえる。

店頭での品薄状況の指標として、販売された商品数の前年比推移をみると、6月までは前年並みを維持していたが7月に入ってからじわじわ減少している。前年に猛暑で作柄のよいコメの供給が減少したことや、訪日客の増加を受け外食需要が拡大したことなどにより、需給逼迫の兆候がみられていたようだ。さらに、8月5日週には94.3%、12日週には85.7%、19日週は77.2%と急降下し、品薄が顕在化してきている。

コメはパックご飯などの保存食品と比べて賞味期限が限られることから、過去の災害では備蓄用の需要はそれほど伸びていなかった。今回前年と比べておよそ1.8倍にまで伸長していることから、パニック買いの影響は大きかったと言えそうだ。

パックご飯の販売金額が前年比約2倍に伸長

コメの代替品として、販売が伸びた商品はあったのだろうか。主食の種類別に販売金額の前年比を確認した。


パックご飯の販売金額は7月29日週までも前年をやや上回る水準で推移していたが、値上がりの影響によるもので販売数量はほぼ前年並みで推移していた。

販売金額が急伸したのは南海トラフ地震の臨時情報が発表された8月5日週だ。前年比139.8%と伸長し、翌週の8月12日週には147.6%に。その勢いは止まらず8月19日週は194.8%と前年の約2倍になった。コメの代替需要だけではなく、8月12日週には大型台風が関東などに接近したことで備蓄需要もいっそう高まったのだろう。

買いにくくなったコメの代替として売れたもの

コメの品薄が加速した8月12日週の前年比では、賞味期限が限られ備蓄しにくい食パンは伸び悩んだものの、そうめんやうどんといった乾麺132.4%、スパゲティ110.4%などは伸びがみられた。乾麺がとりわけ伸びたのは、夏場のそうめん需要を取り込んだためだ。伸びの要因としては、備蓄需要に加えて、買いにくくなったコメの代替需要も拡大していることが挙げられる。

南海トラフ地震の臨時情報が出されたことで加速しているコメの品薄。コメの代替としてパックご飯や麺類などの販売が伸びていることがわかった。臨時情報は1週間後には解除されたものの、台風や地震といった災害が続き備蓄用の需要は高止まりしている。

新米の季節にはコメの品薄解消が期待される。品薄により上昇した米の価格が落ち着いていくかも注目したい。

(木地 利光 : 市場アナリスト)