『リアルサウンドテック×野村ケンジ オーディオLABO Session1』が大盛況のうちに終了!

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 先週末、代官山の蔦屋書店1号館 2階 音楽フロアで開催された『リアルサウンドテック×野村ケンジ オーディオLABO Session1』が、大盛況のうちに終了した。カルチャーメディアの「リアルサウンドテック」が、オーディオビジュアルに造詣の深い野村ケンジ氏をコンシェルジュに迎えて開催したイベントで、ヘッドホン・イヤホンの展示&試聴が(一部製品は購入も)できる、画期的な内容となっていた。その様子を詳細にレポートしたい。

参考:【画像】『オーディオLABO Session1』注目の5つのブランド

 本件のニュースを編集担当から聞いてまず思ったのが、「なぜ代官山でオーディオイベントを開催するの?」ということだった。そこで初日(7月20日)に会場に足を運び、イベントの様子を拝見することに。蔦屋書店に着いてエスカレーターで2階に上がると、正面に試聴コーナーがあり、そこで野村氏が来場者の質問ににこやかに対応している。そんな野村氏に、まず今回の企画の狙いからうかがった。

 「代官山でイベントを開催したのには、ふたつの意図がありました。まずオーディオマニアじゃない人に高級オーディオに触れてもらう機会を作りたいと思ったのが第一です。さらにメーカーのスタッフに、自分たちの製品をユーザーに買ってもらう楽しさを知ってもらいたいということでした。実はメーカーの企画担当者がエンドユーザーに直接お会いする機会は少ないようなのです。

 またオーディオの試聴イベントは、どうしてもマニアの人たちが集まる、クローズな雰囲気になりがちです。でも今回はそれとは違うカジュアルな体験会にしたくて、あえて既存の売り場の中に試聴ブースを設置してもらいました」(野村氏)

 たしかに従来のヘッドホンやイヤホンの展示・試聴会は特設会場で開催されることが多く、参加するのは敷居が高いと感じている方も多いだろう。しかし代官山で、しかも蔦屋書店のようなオープンなスペースなら、普段オーディオイベントに足を運ばない方にも体験の場を提供できるのでは、という狙いもよく分かる。

 実際に20日のイベントでは小さなお子さんと一緒の家族連れや、若い世代が積極的に試聴してくれることも多かったという。しかもお客さんのほぼ全員がイヤホンやヘッドホンを愛用していて、展示してある製品でどんな音が聴けるのかにも興味を持ってくれたそうだ。また海外からの旅行者が、音のよさに驚いて数台まとめて購入して帰るというケースもあったそうだ。

 そんな『オーディオLABO Session1』では、5つの注目ブランドが展示されていた。それぞれのブースの注目製品や展示内容のポイントを野村氏に解説していただいたので、以下で紹介したい。

「nwm(ヌーム)」(CAP)nwmの展示ブースの様子。中央に新製品の『nwm ONE』のブラックとホワイトが置かれ、その横には『MBE001』などの既発売モデルが並んでいた

 nwmは2021年に誕生したNTTソノリティのオーディオブランドで、独自の音響技術「PSZ=Personalized Sound Zone」(音漏れを最小限に抑える)と「Magic Focus Voice」(騒音の中から必要な“声”だけを取り出す)を採用したイヤホンやヘッドホンを発売している。

 会場では、18日に発表されたばかりのヘッドホン『nwm ONE』がいち早く体験可能だった。円形イヤーパッドの真ん中に、12mmトゥイーターと35mmウーファーを使った同軸型ドライバーが取り付けられたオープン型ヘッドホンで、「PSZ」技術を組み合わせることで、音漏れを防いでいる。

 野村氏は、「『nwm ONE』は、中空にユニットが浮いている斬新なデザインのヘッドホンで、オープン型なのに音漏れがほとんどないという、不思議な製品です。ドライバーの角度も変えられるので、自分が聞きやすい位置に簡単に調整できるのもいいですね。ユニークだし、実用性もあるという意味でも、ぜひ多くの方に聞いてもらえればと思っています」とその魅力を解説してくれた。

 会場で『nwm ONE』を試聴した皆さんも、音漏れ防止の効果と音のよさにびっくりしていた様子。中には『nwm ONE』のデザインに一目惚れし、音を確認するために代官山まで足を運んでくれた人もいたほどだ。その平石さんは、もちろん音を聞いたうえで『nwm ONE』の購入を決定、箱を抱えて嬉しそうに帰路についていた。

 「Shokz(ショックス)」(CAP)Shokzブースには骨伝導型防水イヤホンの『OPENSWIM PRO』や、完全ワイヤレスイヤホン『OPENFIT AIR』も並んでおり、これらも視聴可能でした

 様々なスタイルのオープン型イヤホンを販売しているShokzでは、5月に発売されたばかりの『OOENFIT AIR』と『OPENSWIM PRO』を展示し、多くの方がその音を体験していた。

 特に注目を集めていたのが、水深2mに2時間沈めても音楽の再生が可能な『OPENSWIM PRO』だ。展示コーナーに置かれた水槽の中には『OPENSWIM PRO』が沈められており、小さなお子さんたちが興味津々で覗き込んでいるのも可愛らしかった。

「『OPENSWIM PRO』は骨伝導タイプのイヤホンで、Bluetooth再生に加えてMP3プレーヤー機能も内蔵していて、水泳などのスポーツ時にも音切れの心配がないのがポイントです。もちろん本体を水洗いできるので、普段使いのイヤホンとしてもお薦めです。Shokzはイヤホンファンの間では知られていますが、ブランドとしてもっと幅広い層の方にアプローチしたいというお話もいただいていました。それもあって今回のイベントに出展してもらいましたが、いい機会になったのではないでしょうか」(野村氏)

「Oriolus」「LUXURY&PRECISION」

(CAP)デジタルオーディオプレーヤーやイヤホンのハイエンドモデルなど、OriolusとLUXURY&PRECISIONの人気モデルが並んだサイラスのブース

 「Oriolus」はサイラス、ヒビノインターサウンドのエンジニアリングチームとマスター・ラオウが共同で立ち上げたオーディオブランド。「LUXURY&PRECISION」は、精密機器グレードの性能、美しい音色と質感の追求をポリシーとし、音楽本来の魅力を最大限に引き出し、聴く者に深い感動を与える「音楽に対する真の敬意」を体現したオーディオ製品を開発している。

 会場では、Oriolusの全世界999台限定ポータブルプレーヤー『DPS-L2』や、ハイブリッドカナル型イヤホン『Traillii JP』などの試聴が可能だった。『DPS-L2』はその特徴的なデザインも好評で、手に取ってしげしげと眺めている来場者もいたほどだ。

 LUXURY&PRECISIONからは近日発売予定のUSB DACポータブルアンプ『W2 Ultra』が展示されていた。シーラスロジックのDACチップCS43131を搭載し、音質改善を実現した注目製品だ。他にも本体に天然木バックパネルと金メッキ真鍮フレームを採用した高級機『LP6』も並んでおり、その落ち着いたデザインが奥様方に人気だったそうだ。

 野村氏は、「『W2 Ultra』は、5万円前後のドングルタイプのハイエンドDACの中では、かなり使い勝手のいい製品になっていると思います。『LP6』は見た目もお洒落だし、ボディに木材を使っているなど仕上がりも綺麗です。『DPS-L2』もウォークマンファンにはたまらないでしょう」と、音質だけではない両ブランドの魅力について解説してくれた。

「Initial A」

 オーディオ評論家の野村ケンジ氏協力の下、音にこだわったものづくりに挑戦していくコミュニティ「#オトモノ」から生まれたブランドが「Initial A(イニシャルエー)」だ。代表を務める安藤さんは某社でプロダクトプランナーやデザイナーを経て独立。オーディオガジェットの可能性、特にリケーブルイヤホンの面白さに惹かれ日々、可能性を追求しているという。(CAP)一番左にあるのが安藤氏がオススメするリケーブルイヤホンの「結(ゆい)」。

 野村氏の盟友でもある安藤氏にオススメアイテムを尋ねた所、「まずは、結(ゆい)を知ってもらいたいですね。リケーブルでも珍しいインナーイヤー型のイヤホンになります。カナル型が全盛の時代ですが、インナーイヤー型の方が使いやすいというユーザーさんも意外と多く、潜在的なニーズはあります。最近では海外ユーザーからも“世界でも珍しいイヤホン”とコメントを頂戴するのが嬉しいです」(安藤氏)とのこと。

 またコミュニティを通じて続々と新アイテムを開発しており、現在はゲーミング用のりケーブルイヤホンを開発中で会場ではプロトタイプが披露されていた。「#オトモノ」ではゲーム好きのユーザーさんも集まってきており、「今後はゲーム×オーディオガジェットの可能性も探ってみたい」とのこと。今後の展開が楽しみなブランドだ。

 「HIFIMAN(ハイファイマン)」

 アメリカで2007年に誕生したHIFIMANは、ヘッドホンやイヤホン、オーディオプレーヤーを発売しているブランドで、日本でもファンは多い。今回は、先日発表された『SUSVARA UNIVEILED』とGolden Waveのヘッドホンアンプ『PRELUDE』という組み合わせでの試聴体験が可能だった。

 『SUSVARA UNIVEILED』は超高級モデルだが、もう少しお手軽な価格帯の製品を聞きたいという方のためにヘッドホンシステムの『mini Shangri-La』や『ANANDA NANO』なども置かれており、来場者の予算や希望に応じたヘッドホン体験ができる貴重な空間になっていた。

 この展示について野村氏は、「『SUSVARA UNIVEILED』は、パーツのひとつひとつまでじっくり吟味し、細心の注意を払って組み上げ、仕上げていった製品だと感じました。結果として、上質のお酒みたいに、すーっと体に入ってくるような音が実現されていますね。その点が本当に素晴らしいので、ぜひ皆さんに聞いてもらえればと思っています。

 また完全ワイヤレスイヤホンの『SVANAR Wireless』シリーズは3モデルを展示していますが、それぞれお値段もスペックも違います。その中で自分に一番あった製品はどれかを聞き比べて選んでもらいたいというのが、僕がイベントやってく上でのテーマでもあります」と、ご自身の思いも込めて語ってくれた。

「Shanling」「ELAC」

 「Shanling」は、ハイレゾポータブルプレーヤー、ポータブルアンプ、ヘッドホン、SACD/CDプレーヤーといった様々なオーディオ製品の研究開発、生産、加工、販売を行っているブランドだ。

 今回は新製品の自立型CDプレーヤー『EC Smart』に、ドイツEALCのアクティブスピーカー『DCB41-DS』を組み合わせたコンパクトシステムを展示、心地いい音を奏でていた。この音に引き寄せられる来場者も多く、どんな接続方法なのか、どんな使い方ができるのかといった点について野村氏に質問している人も見かけられた。

 他にもバッテリー内蔵ポータブルCDプレーヤー『EC Mini』やiBasso AudioのポータブルDACアンプ『DC-Elite』といった製品も並べられ、興味深そうに製品を眺めている来場者も多かった。

 これらの製品を展示した狙いについて野村氏は、「『EC Smart』はディスクがむき出しのままで再生できるシンプルなCDプレーヤーですが、とにかく佇まいが可愛い。デザインや色、置き方にこだわる、蔦屋書店のお客さんのような人にはぴったりじゃないかと。今回、会場での限定先行販売を実現していただきましたが、いち早く入手できる貴重な機会ということもあって、自分用にも買って帰りたいと思っているんです」と、自分が選んだ製品への愛着も含めて語っていた。

 最後に野村氏に今回のイベントの満足度と、これからの展開を訊ねてみた。

 「今回第一回のイベントを実施して、色々な課題も見えてきましたので、そこを修正することで、最初にお話したような体験をお客さんとメーカー担当者に届けることができればいいなと思っています。実は第二回を年内に実現しようと企画を進めているところなんです。

イヤホンやヘッドホンが気になっている人が、こんなイベントをやっているなら、ちょっと代官山まで行ってみようか、みたいなノリで参加してもらえるといいなぁと思います。いい音は人生を豊かにしてくれますので、音を聞いて好きだと思えたら、製品を買ってもらえると嬉しいですね」(野村氏)

 これまでのオーディオイベントとは一味違う試みである『オーディオLABO Session1』の、さらなる展開が楽しみだ。

(文・写真=出水哲)