ミクシィの笠原健治社長(左)とドリコムの内藤裕紀社長(撮影:吉川忠行)

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1976年前後に生まれた若手のネット起業家を表す「ナナロク世代」が、ユーザー主導でネットサービスの質を高める「ウェブ2.0」ブームにうまく乗り、ビジネス界や証券市場に活気をもたらしている。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)など 個人目線のサービスや、「時価総額」よりも「面白さ」を追求するのが特徴で、大型買収を繰り返すソフトバンクの孫正義社長らの「第1世代」、楽天の三木谷浩史社長やライブドアの堀江貴文前社長の「第2世代」と一線を画す。今年、株式上場を果たし、「ナナロク」の代表格として知られるミクシィ、ドリコムの直近の業績が今週、そろって発表された。

ミクシィ SNS売り上げが収益をけん引

 ミクシィ<2121>が10日発表した2006年9月中間期の単体決算は、売上高は19億4700万円、営業利益は8億7900万円、純利益は4億4000万円だった。今回が上場後初めての中間決算で、前年同期との比較はできない。主力部門のSNS「mixi」が中間時点で前期実績のほぼ2倍の売上高を達成するなど、収益をけん引した。

 同日、東京都中央区の東京証券取引所で開いた記者発表会で小割洋一取締役は、「業績はおおむね予想通り進捗(ちょく)している」と上期を振り返り、9月の上場で資金調達した64億円については「動画や音楽の企画に投資していく」と説明した。通期の見込みは、売上高は前年同期の約2.5倍の47億8900万円、経常利益は同88.4%増の17億1900万円、純利益は同71.1%増の9億8600億円と据え置いた。

「『マイスペース』は脅威」──。小割取締役は、ソフトバンクと米ニューズ・コーポレーションが提携し7日から始めた世界最大手のSNS「マイスペース」日本語版ついてこう述べ、危機感をにじませた。

 SNSの先駆けとして「ウェブ2.0」の波にいち早く乗り、9月末時点で600万人の会員を抱える国内最大のサービスに成長した「mixi」。小割取締役は、「600万人の会員数が日本国内での強み」とした上で、「従来通りぶれることなくユーザーに満足してもらえるサービスを提供する」と強調した。また、「『マイスペース』は招待制ではないので、たとえ同数の会員を獲得したとしても、利用者同士に強いつながりがある『mixi』の600万人とは質が違う」と同社の優位性について自信を見せた。

ドリコムは人材、開発に積極投資

 「投資して欲しいという話はたくさん来るんですけれど、基本は軸をぶらさずに『ものづくり』という路線をまっすぐ進もうと考えている」。

 ドリコム<3793>の内藤裕紀社長(28)は10日、決算説明会に集まった機関投資家らを前に、あくまで事業提携の延長線上で小規模企業に出資する一方、純投資は行わない方針を強調した。

 9日発表の06年9月中間期の連結決算で、同社の売上高は前年同期比94.8%増の5億400万円だった。「ウェブ2.0」ブームが追い風となり、7月に開始した企業向けSNSシステムの販売好調が業績を押し上げた。

 営業利益は同55.1%減の4600万円、経常利益は同42.9%減の5700万円、純利益は同 38.8%減の3600万円。営業力強化のために採用人員を倍増、新規サービスの研究開発費、創業地・京都から東京への本社移転費用などの投資がかさみ、販管費が前年同期の4倍の3億1100万円と大幅に増加した。

 中期決算について、内藤社長は「計画より若干上ぶれし、業績、投資ともに想定通りに推移した」と総括。「ウェブ2.0」ブームによるSNS人口の増加に合わせ、NECと共同開発・販売し、218社で導入された社内ブログ事業や、コンテンツ管理システム (CMS)など新たな収益の柱が成長する見通しをもとに、売上高15億円(前期の2.1 倍)、経常利益4億円(同78%増)、純利益2.3億円(同85%増)とする通期業績予想は据え置いた。

 同社は創業からわずか4年ほど、ライブドア事件発覚直後の2月に東証マザーズに上場を果たした。これまでは主に国内の機関投資家への理解強化に努めてきたが、3月末時点で2%だった外国人投資家の比重が高まっていることから海外IR(投資家向け広報)を強化していく考え。証券会社を通して個人投資家向けの勉強会も実施する。【了】

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