「“おじさん”、かっこいいよ…」「“おじさん”はすごい人だよ…」「“おじさん”に心から喝采を送りたい。その決断…その勇気!」という感銘する声が相次いだ作品がある。高村秀路(@takamurahideji)さんが描いた「三十年後にまた会う日まで」だ。「この話に出合えた幸運に“いいね”が足りません」「おもしろい漫画だった…」「最高の漫画」「素晴らしい画力…すてきなストーリーをありがとうございました」と感動のコメントがあとを絶たなかった。

【漫画】「三十年後にまた会う日まで」を読む

“おじさん”の選んだ結末に称賛する声が集まった!


この作品は小学6年生のマサルが、タイムマシンを持っていると噂される“おじさん”の一軒家を訪ねるシーンから始まる。マサルはどうしても時間を巻き戻したかった。「タイムマシン貸してください。一年前にもどって、ママにサイコンしないでって言う…」と涙ながらに頼む。新しいお父さんが来てから、ママのカレーがいつも辛いのだと泣くマサルを“おじさん”は追い返せなかった。

震える声で頼むマサルを“おじさん”は追い返せなかった


その日からマサルと“おじさん”の交流が始まるが、気になるのは何か一物抱えていそうな“おじさん”の正体…。そして中盤で“おじさん”の正体が明らかとなるのだが、それはマサルにとって衝撃的なものだった。本作「三十年後にまた会う日まで」は、「月例マグコミマンガ大賞2020」にて入賞を果たした傑作である。作者の高村秀路さんにインタビューをすると同時に、「月例マグコミマンガ大賞2020」を主催した出版社・マッグガーデンの担当編集者にも本作選考時の評価ポイントを聞いてみた。

このタイムマシンは本物なのか…?


――まずはマッグガーデンの担当編集さんにお尋ねします。「月例マグコミマンガ大賞2020」に入賞した本作の評価ポイントを教えてください。

【担当編集】達者な作画や秀逸な話運びなど、評価するポイントを挙げるときりがないくらい素晴らしい作品でしたが、特に驚かされたのは「登場人物の実在感」でした。ちょっとした会話のやりとりから背負った悩みに揺れる心情まで描き方にリアリティがあり、「ああ…この作者さんは生きた人間を描いている」と唸らされた記憶があります。それはのちに弊社で連載いただいた「うらうらひかる 津々に満つ」でも存分に発揮していただきました。人の心を動かす力のあるお話を、これからも楽しみにしています。

――次に作者の高村さんにお尋ねします。本作に込めた想いや苦労した点について教えてください。

【高村秀路】とにかく「完成原稿を作りたい!!」という気持ちでした。その頃はネームを修正して修正して修正して、一から新しく作り直しては、また修正して修正して修正して…という修正地獄にいたので、早く下書きしてペン入れをしたかったです。

――ネームに苦労されたんですね。

【高村秀路】はい。ネームを誰にも見せないまま下書きを始めたので、“ネームの修正が入らないって楽で自由だなぁ”と思うと同時に、“本来ならネームを見てもらって修正しないと全然おもしろくないのでは…?“という不安も感じていました。

――それだけ修正を重ねられたネームですが、完成してみていかがですか?

【高村秀路】今見返したら、やっぱりネームは見てもらうべきですね…と思います。とはいえ、久しぶりの下書きとペン入れが本当に楽しくて、仕上げ作業で一枚一枚原稿が完成していくときは「漫画ができあがっていっておりまーす!」という気持ちになれてうれしかったです。

“おじさん”から「乗ってはダメだ」と言われていたタイムマシンに勝手に乗ってしまった


本作はタイムマシンをモチーフとして扱ったタイムループもので、読者たちにとっては読み解くのが楽しく、考察も大いに盛り上がったようだ。本作のコメント欄には「タイムマシンは壊したのかな」「本当は壊れてなんかいなかったんじゃないか」「“おじさん”は死んだ?消えた?」「タイムマシンの中がボロボロだったけど、一体何回30年前に戻ったのだろう」と、それぞれの見解が寄せられた。担当編集さんが「この作者さんは生きた人間を描いている」と評したように、登場人物たちの心の動きにも着目して読んでみてほしい。

取材協力:高村秀路(@takamurahideji)/マッグガーデン