子どもの「なぜ?」にきちんと向き合ってあげて(fuku/stock.adobe.com)

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「自動会計機。『なんでここに入れると計算されるの?』という小学生男児の疑問に、『うるさい。金を払ってるんだから黙ってろ』と怒鳴る母親。
近くにいた父親も『うるさいとゲンコツだぞ』と警告。
彼の、理系への興味が絶たれないことを祈るばかり」

【写真】自動会計機…便利ですが、注意も必要です

ゲーム雑誌や攻略本など、書籍の企画や編集に携わっているMW岩井さん(@mwiwai)。X(旧Twitter)を通して、街なかで見たとある家族のヒトコマを紹介、その際に感じた自身の想いも吐露されました。

子どもの純粋な疑問なのに…

ある日、MW岩井さんは奥さんと、東京都内にあるアパレルブランドのお店を訪れました。奥さんが買い物を終えるのを、会計機の近くで待っていた時のこと。

「なんでここに入れると計算されるの?」

という声が聴こえてきました。見ると、小学校4年生ぐらいの男の子。

その子が興味を示したのは、その店の自動会計機。その店舗では、電波で複数の商品情報を一気に読み取れる、“RFIDタグ”を利用した会計システムを導入しています。商品を所定のスペースにまとめて入れると、取り付けられたタグが読み取られ、合計金額が表示されるという仕組みです。

その男の子はそのようなシステムが存在していることを知らず、なぜ商品を個別にスキャンしてしていないのに金額が出たのか、不思議に思ったのでしょう。いわば子どもの純粋な好奇心による質問。ところが、買い物をしていた母親は、そんな息子の言葉を遮るように、ヒステリックな声をあげました。

「うるさい。金を払ってるんだから黙ってろ」

思わぬ言葉に、MW岩井さんは「え?」と驚いてしまったといいます。店内は閉店間際ですでにガラガラの状態。後ろに会計待ちがいるわけでもなく、しかも男の子は静かに落ち着いたトーンで話していました。それなのに、どうして母親は、あんな大声で怒りだしたのだろう…?

さらには、近くにいたその子の父親も間髪入れず「うるさいとゲンコツだぞ」と言いながら、右手を握りしめて、子供の頭を叩くようなポーズをとったそう。

しかし、怒られている子どもは、母親に怒鳴られてもノーリアクション、父親の拳を避けようとする素振りもみせず、MW岩井さんは「この家庭では、こういうやりとりが通常運転なのかな…」と感じたといいます。

ご両親としても、忙しくて子どもにいちいち構っていられない――という気持ちだったのかもしれません。しかし、子どもの純粋な好奇心を頭ごなしに否定してしまうのは、やはり残念に思えてしまいます。

その男の子の理系への興味が絶たれないように――とMW岩井さんは願いつつ、「僕がRFIDのことを教えたい」とも思われたといいます。

このようなMW岩井さんの投稿。リプ欄にも多くの反響がありました。

「親ガチャってあるんだなーやはり。と思わされました...」
「確かに子どものナニナニナゼナゼは鬱陶しい場面もあるでしょうけど、そんな反応しか貰えなかったらいずれ何にも興味を示さなくなってしまいそう」
「日常で興味や関心を持ったことに対して、しっかり答えられる親でいたいですね。その場でわからなくても調べて回答したいものです」

「何で?」「おかしいぞ?」という疑問を大切に

学生時代は専門学校でプログラミングを学び、卒業後銀行システムを作る仕事に携わるなど、もともと理系人だったというMW岩井さん。今の子どもたちにもプログラミングなどの分野に興味をもってほしいと考えています。

MW岩井さん曰く、プログラマーとしての経験があると、世の中のコンピューターのシステムが何を判断し、どのように処理をしているのか、おおよその想像がつくとのこと。

例えば、近年よく話題に上る“AI”。世間では「何か怖い」という印象ももたれがちではありますが、プログラムを知っていると「どんなセンサーが何を検知して、コンピュータが計算した結果をどう出力するか」が大事であることに気づけるといいます。

「何で?おかしいぞ?」

そのような疑問をもつ知的好奇心を、子どもたちにも忘れないで欲しいと、MW岩井さんは願います。

ちなみに、ご本人はRFIDの会計システムが導入されはじめた頃、このように考えたそうです。

商品をカゴ(レジの読み取りスペース)の中に入れるということは、そこだけに電波を照射して、反射情報をセンサーで受信しているはず。

しかし衣類は反射しないので、反射するための電子部品があるはず。それは商品タグに付いている?

帰宅後、タグを剥がしてみると電子部品を発見。しかし使い捨てということは、コストどうなってるんだ?

十数年前、何かのショウで似た技術が展示されていたときは、タグ1個100円と言われていたような?

検索してみたら、1個10円未満で生産しているとのこと。しかし商品単価が安い食品スーパーじゃ導入は無理かな…?
(※実際のタグの価格は用途などの条件によっても変動)

「知的好奇心は何歳になってももち続けていたいなと考えています」(MW岩井さん)。

  ◇  ◇

「教科書に載っている情報を丸暗記する勉強って、つまらないですよね。でも、逆引き的に『これはどうしてできるんだ?』という疑問から調べごとを始めると、そこで学んだことはぐいぐい吸収されますし、忘れません。勉強は『大人からさせられるもの』ではなく、『世の中をさらに高い解像度で見るために必要なこと』と、感じられるようになると楽しくなりますし、なんならそれが職業になると、一生ハッピーに生きられますよ!」(MW岩井さん)

MW岩井さんは、多くの書籍の企画や編集・プロデュースを手がけています。代表作は2022年3月末に発行された『機動戦士ガンダム 宇宙世紀vs.現代科学』(マイナビ出版)とのこと。

「『ガンダムに使われているガンダリウム合金って、日本で合金を研究している研究者からすると、どう見えますか?実現可能性はどのくらいありますか?』なんていう取材を、日本各地にいる研究者に行ったインタビュー集です。『ビーム・サーベルの色が連邦とジオンとで違うのは理にかなっています』というように、日本を代表するような研究者が、ガンダムの作品内演出を全肯定している本です」(MW岩井さん)

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))