@AUTOCAR

写真拡大 (全4枚)

タイプR以外でもMT需要が高いシビック

photo:Hidenori Hanamura(花村英典)

ここ最近、メディアを賑わせているシビックと言えばハイブリッドのe:HEVやタイプRだが、先に登場した1.5Lターボエンジンモデルも以前から走りの印象は良かった。

【画像】ワインディングを駆け抜ける! シビックRS先行試乗のフォトギャラリーをみる 全49枚

実際の購入層もそれを認識しているのか、こだわった人が多いようで2024年3月ではMT車の販売比率は58%となっているそうだ。


待望のシビックRSに先行試乗    花村英典

そのようなシビックの販売状況の中で、市場から求められたのがよりスポーティーなバージョンだ。公道走行がメインなのでタイプRほどではないが、走りの特別感を感じられるモデルを望む層がシビックのユーザーには多かったということだろう。

MT車の販売比率などを見れば、RSの登場はホンダがしっかりと市場に向き合ったからこその回答と言える。なお、シビックはグローバルモデルであるが、この仕様のRSは日本独自の仕様だ。

専用のエクステリア&インテリアを筆頭に見て分かる部分はもちろんだが、レブマッチシステムの採用、軽量フライホイール、大型化されたブレーキ、ダンパーやバネレート、スタビライザーなどが変更されたサスペンションやタイプR譲りのステアリング関係など、ソフトだけでなくハードも積極的に変更したかなり凝った内容となっている。

ただ、ここまでハードを変更しているのにも関わらず、エンジンのパワーアップなどは施されておらず、速さではなく「走りの気持ち良さ」という数字に出来ない感応性能にこだわっていることが、試乗前の説明から伝わってきた。

「えっ?」タイヤを変更したかのような驚き

筆者は幸運なことに、改良前のシビックでコース試走を済ませたうえで、シビックRSに乗ることができた。シビックRSに乗り始めた途端、その違いはスグに実感できるものであった。

まず、ステアリングの剛性感が大きく向上していて、「ユルさ」が取れた印象だ。ステアリングセンター付近から僅かに切り込んだだけでもしっかりと反応とインフォメーションがある。ステアリング操作の緻密さとフロントタイヤのインフォメーションが向上していて、これまで以上にクルマと細かな対話できるとスグに確信した。


待望のシビックRSに先行試乗    花村英典

そして、ワインディング区間へと入っていくと、リアの安定感に驚かされた。ステアリング操作に対してシャープに反応しながらも、リアはピーキーな雰囲気がせず安心してコーナーに進入していける。改良前モデルも同じ条件で試乗したが、進入からターンインまでの安心感は大きく違っていた。

また、前半は下っていて後半は上っているというクルマへの入力が大きく変化するコーナーでは、スムーズな荷重移動により、しっかりとタイヤが路面を掴んでいる印象であった。

どのコーナーでも改良前モデルよりハイスピードで進入しても安心感が高く、速い車速でコーナーをクリアできる。そのため、ドライブを終えた時には「もしやタイヤも変えた?」と疑い、思わずタイヤをチェックしてしまったほどだ。なお、タイヤは従前と同じグッドイヤーのイーグルF1だった。

タイヤを変えず、さらにはボディ剛性に対しても変更を行わないでココまでのグリップ感を出せるのは純粋に感動した。

乗り心地も進化しトータルバランスが向上

シビックRSに乗る前は「タイプRの辛口度合いが10で、これまでの標準車が0だとしたら、RSは5くらいの乗り味だろうか」と思っていた。しかし、実際に乗ってみるとスポーツ度は高く、RSは7くらいの雰囲気であった。

それでいて、乗り心地がハードになっている印象はない。バネレートはフロントで20%、リアで60%高められているそうだが、ダンパーやコンプライアンスブッシュの変更もあってロールは抑えつつ乗り心地の角はしっかりと取れている。むしろ、改良前の標準車に比べて素早く振動が収束するため、不快な振動の残りが無くなり、乗り心地の快適度で言えばむしろ向上した印象だ。


待望のシビックRSに先行試乗    花村英典

レブマッチも機能をOFFにすることが可能で、よりMTとしてクルマとの対話を楽しむ余地が残されているのも良い。

強いて気になったポイントを挙げるならばブレーキだ。フロントブレーキが15インチから16インチへと大径化したが、ここまで全体的にカチッと剛性感のある乗り味だと、ブレーキもローターとパッドが触れた瞬間が分かるような、初期のタッチがリニアにペダルに伝わるパッド摩材の方がより気持ちよく運転を楽しめると思う。

あくまでもストリートを主眼としたノーマルカーなことを思えば、それは求めすぎかもしれない。たとえば、フィーリングがリニアなパッドがホンダアクセスなどからディーラーオプションで展開されるのもいいかもしれない。

比較的良好な印象だった改良前の標準車が霞んでしまうほど、シビックRSは魅力を感じる乗り味に仕上がっていた。これまでよりも、より高い次元でバランスを取る。そんな「調律」という言葉を思い出させるメーカーチューニングが感じられる1台だ。

※現時点ではシビックRSのスペックは未発表。