"Special Day"で上杉&阿部が見せた成長と進化――。"fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance- in 2024 [Special Day]"をレポート!

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2024年に入ってのfripSideは、昨年大晦日の名古屋でのカウントダウンライブを経て、1月には東京でのワンマンと、naoと南條愛乃という歴代ボーカリストを迎えての20周年フェス、3月にはPhase 3初となる“ANIMAX MUSIX”出演、4月から6月にかけては全国ライブハウスツアー第3弾“fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance- in 2024 supported by animelo”と、実に精力的なライブ活動を行ってきた。そして6月29日に神奈川でのツアーを終えたあと、“Special Day”と称した神奈川・KT Zepp Yokohamaでのワンマン“fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance- in 2024 [Special Day]”が開催された。先のツアーでは初日の沖縄公演を除いて中心人物である八木沼悟志が出演せず、ボーカリストの上杉真央、阿部寿世とバンドによるセットとなったわけだが(ツアー最終の神奈川公演は八木沼が体調不良により欠場)、この日のKT Zepp Yokohama公演もまた、上杉・阿部中心となるステージとなった。fripSide Phase 3をより強固なトライアングルとするために、八木沼がボーカリスト2人の成長の場として用意したツアーの集大成としても注目が集まったこの日、上杉と阿部という若きシンガーは、fripSideという名を背負いながらどんなステージを見せたのか――。

TEXT BY 澄川龍一
PHOTOGRAPHY BY 中村ユタカ

2人だけの“Special Day”は、成長と進化の結晶となるステージに

2022年4月の始動以降、若い2人のボーカリストを迎えてからのfripSide Phase 3において、八木沼悟志はたびたび2人の成長を促す発言をしてきた。そして時にはライブに自身が参加しないことで、2人にフロントマンとして引っ張る場というものを提示してきた。そしてこのたび、KT Zepp Yokohamaを2人で回す――いわばソールドアウトにするというテーマを設けた。そんな、ボーカリストの成長と進化の集大成ともいえるこの日、蓋を開けてみるとフロアは2階席まで多くの観客が詰めかける満員状態となった。そこには八木沼が20年以上作り上げてきたfripSideへの信頼感があるのはもちろんだが、同時に上杉・阿部の2人によるPhase 3への期待感あるいは支持そのものが光景として現れたのだと感じさせる。

まさに、ツアーの集大成、そして2年間で蓄積したものを披露する場としてこのうえない環境が用意されたなか、いよいよステージが幕を開ける。クールなインストゥルメンタルが流れるなかバックバンドが入場、そして上杉・阿部が入場してステージ中央に背中合わせに立ち、「Invisible Wings」と共にこの日のセットがスタート。

阿部の熱っぽい歌い出しからしてこの日を前にした高いテンションを感じさせるものだったが、対するクールな上杉の歌唱も含めて、今年1月のZepp Haneda(TOKYO)で観た「Invisible Wings」よりも落ち着きが見られる。この曲はPhase 3らしいシンメトリカルなダンスも見ものだが、それもしっかり揃っているの同時に、どこか以前よりも余裕が感じられるものだった。また、それを受けての観客のリアクションもより熱量高く、かつきちっと揃った歓声とコールが聴かれたのもまた印象的だった。まさに観客も含めて仕上がっているというか、このツアーを経てライブにおける一体感というものがしっかりと醸成されたのだと感じさせる。

1曲目から熱狂を生み出したあとは、そのまま間を置かずに「fermata 〜Akkord:fortissimo〜」へと雪崩れ込む。ここでのボーカリスト2人も隙のない歌唱を聴かせ、Bメロに入るところで阿部がそっと「せーの」と観客の警報を促すなど、演奏を含めて熱っぽさはあるなかでも落ち着きを見せたパフォーマンスを続ける。そしてその後は再び間を置かずに「black bullet」へ。最初のブロックからクライマックスのような人気曲の連発に、赤く染まった客席はよりラウドな歓声を響かせる。聞くところによると、この日のセットリストは上杉・阿部の発案によるものだったそうだが、こうしたハイスパートな序盤のなかにも安定感のあるパフォーマンスを見せるあたり、成長に裏打ちされた自信が透けて見える。

最初のMCでは「楽しすぎてニヤニヤが止まらなくて、今日は大変なことになりそうですけど」と阿部が言うと、「今日は“Special Day”なのでスペシャルな思い出をみんなで作りたいと思います!」と堂々とした宣言。そして続けて披露されたのは、ポップなサウンドが聴かれる「trust in you」。強靭な最初のブロックから一転して、観客もピンクのペンライトを大きく振って楽しんでいる様子。しかしそこから「Newage」へと突入すると、今度はクールな様相が会場を支配する。4人のダンサーを迎えて上杉も阿部も大人びた表情と歌唱を聴かせながら、息の合ったダンスを披露した。そしてそんな空気のなかで「more than you know」へという鉄板の流れへと続いていく。歴代の名曲を含めて数々の見せ場のある現在のfripSideのライブだが、なかでも「Newage」と「more than you know」は彼女たちの新しい魅力が存分に出た、今やライブに欠かすことのできない重要なピースだ。八木一美のドラムがリードするドスンと腰に来る低音を強調したバンド演奏も盤石で、終盤にはベースの山田潤一によるアグレッシブなソロパートが聴かれる。その間、中央のボーカリストとダンサーはピタリと動きを止め、ベースソロと楽曲のエンディングと共にキメのポーズをつけるというコントラストのあるステージングも素晴らしい。上杉もその後のMCで「この2曲は、これからも私たちの代表するような曲として歌っていきたい」とその手ごたえを語っていた。続く「Forget-me-not」でも2人の豊かなボーカルを存分に堪能することができた。1コーラス目は阿部がメインで上杉がハーモニーを乗せ、バンドも入った2コーラス目は逆に上杉メインで阿部のハモ、そして最後にはそれが融合するという、Phase 3ならではのパフォーマンスが聴かれる。

そしてその後は上杉がステージを後にして、阿部のソロパートへ。

まずは彼女の代名詞ともいえる「with a smile」で、キュートな魅力を存分に見せる。これまではステージに1人でスキルフルなダンスを笑顔で見せてきたが、この日はダンサー2人も加わって息ぴったりなダンスを披露。続く「Trust in my soul」では一転してハードなサウンドのなか、ここでも激しいダンスと歌唱を聴かせ、異なるアプローチの楽曲でそれぞれの魅力をしっかり打ち出していった。

続いては阿部と代わって上杉のソロパートへ。ここでは彼女のキリッとした歌唱を堪能できるブロックで、観客に向けて「おいで」と呟いて始まった「Distance to starry sky」では、その歌声の見事さはもちろんのこと、観客を掌握するような堂々とした表情が深く印象に残った。そのあとの「Reach for the light」では、そうした圧倒的強者感のなかにも見える真っ直ぐな彼女の気持ちが見え隠れする歌詞も含めて、エモーショナルなパフォーマンスが展開されていく。そして阿部がステージに戻ったあとの「Two souls -towards the truth-」は、普段はイントロの「せーの!」の警報を八木沼が担当するところを2人がしっかりと継承、観客の歓声をしっかりと引き出していた。

力強くフロアを力強く牽引した若き才能が、最後に見せた新たな決意

バンドメンバー紹介を含めたMCで、阿部が「みんな、まだまだ声出せますかー!」と煽ったあとに始まったライブ後半戦は、「sister’s noise」「final phase」というアンセムから。会場のボルテージも一気に上昇するなか、以降のセットも激化していく。まずは大島伸彦のギターサウンド中心のロッキンな「Your Way」では、上杉と阿部のスリリングなマイクリレーも含めて、2人の歌唱のギアがさらに一段上がった印象。そこから上杉が「まだまだいけるか横浜ー!」と絶叫して「an Effect of Fate」へ。熱気溢れる後半戦にふさわしく、的確なハーモニーを聴かせながらも終始観客を煽り続ける頼もしい姿があった。その熱量のまま大島と山田がステージ前方に躍り出ての「when chance strikes」と、上杉曰く“怒涛のセットリスト”を駆け抜けていった。

あまりの熱気に「みんな疲れた?」と上杉が煽るように尋ねたかと思えば、「でも……休憩はさせない!」とSっ気たっぷりなお答え。そこから本編最後のブロックへと突入していく。「The Light of Darkness」ではそのテンションは変わらず、あるいはそれ以上に高いテンションで観客も応えるなか、「infinite Resonance」でアグレッシブな終盤戦のなかでもしっかりと息の合った振付を見せる。そして本編最後には、すっかり現在の絶対的なアンセムへと化した「Red Liberation」へ。ここでの会場の盛り上がりはすさまじいものがあり、クライマックスを迎えた狂熱のなかで、TVアニメ『ひきこまり吸血姫の悶々』OPアニメーションよろしくサビでジャンプする、通称“親衛隊ジャンプ”が客席各所で見られる爆発的なエンディングを迎えたのだった。

高温にひりついた肌をクールダウンさせるように、アンコールは「trusty snow」でしっとりとスタート。そして最後には、Phase 3始まりの曲である「dawn of infinity」にて全国ツアー第3弾を締め括った。

最後はバンドメンバー、ダンサーを含めてステージに集まってのご挨拶。ここで阿部が観客に語り始めたところで、思わず感極まった表情を見せる。さっきまで堂々としたパフォーマンスを見せてきた彼女だったが、やはり満員の客席を改めて眺めると込み上げるものがあったのだろう。「何が言いたいかっていうと……みんなありがとう」と涙ながらに口にしたその姿は微笑ましくもありつつ、一方で「fripSideとして成長と進化を止めたくない」と決意を新たにしていたのがまた印象的だった。それを受けての上杉も、「このツアーで一歩踏み出してみようと思って、頑張って前に出てみようと思ったら、みんながそんな私を受け入れてくれて」と自身の成長を語った。そして「このライブを任せてもらって考えることの楽しさも感じましたし、みんなの笑顔を見れたことで頑張ってきて良かったなって思いました」とこの日の成功を実感する言葉を残した。

八木沼が2人に課した“成長と進化”というミッションは、Phase 3が始動した2022年から着実に積み重なり、この日2人によるステージという場所で1つの結実の時を迎えた。そしてこの先、夏に控える南條愛乃との再会を果たすニューシングル「Secret Operation」と念願の“Animelo Summer Live 2024”という大舞台、そして秋にはニューアルバム『infinite Resonance 3』のリリースおよび2025年まで続く47都道府県ツアーの完結編が待っている。fripSideというトライアングルの内角は角度を変え、そのバランスが整ってきたと感じられる今、これを多くの人に知らしめ、熱狂させる準備もまた整った。きっとその先には、まだ誰も見たことのない、さらなる成長と進化を果たしたfripSideの姿が見られるはずだ。

<SET LIST>
fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance- in 2024
[Special Day] supported by animelo
2024/07/23(sat)@KT Zepp Yokohama

M01 Invisible Wings
M02 fermata〜Akkord.fortissimo〜-version 2022-
M03 black bullet -version2023-
M04 trust in you -version 2022-
M05 Newage
M06 more than you know
M07 Forget-me-not
M08 with a smile
M09 Trust in my soul
M10 Distance to starry sky
M11 Reach for the light
M12 Two souls -toward the truth- -version2023-
M13 sister’s noise -version 2022-
M14 final phase -version2023-
M15 Your Way
M16 an Effect of Fate
M17 when chance strikes
M18 The Light of Darkness
M19 infinite Resonance
M20 Red Liberation
EN01 trusty snow -version 2022-
EN02 dawn of infinity

●リリース情報
TVアニメ『夜桜さんちの大作戦』第2クールOPテーマ
fripSide feat. Yoshino Nanjo
「Secret Operation」
8月21日発売

配信リンクはこちら
https://lnk.to/Secret_Operation

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:GNCA-0711
価格:¥2,200(税込)

【通常盤(CD Only)】
品番:GNCA-0712
価格:¥1,430(税込)

<CD>
1. Secret Operation
2. Secret Operation -fripSide Edition-
3. Secret Operation -Yoshino Nanjo Edition-
4. Secret Operation (instrumental)

<Blu-ray>
・Secret Operation MV
・MV making

fripSide
『infinite Resonance 3』
10月9日発売

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
品番:GNCA-1675
価格:¥7,700(税込)

【通常盤(CD)】
品番:GNCA-1676
価格:¥3,300(税込)

●ライブ情報
fripSide concert tour -the Dawn of Resonance- in 2024-2025
2024年10月26日(土) 島根・松江 AZTiC canova [開場16:00/開演16:30]
2024年10月27日(日) 岡山・CRAZYMAMA KINGDOM [開場16:00/開演16:30]
2024年11月09日(土) 大阪・GORILLA HALL OSAKA [開場16:00/開演16:45]
2024年11月10日(日) 岐阜・Club-G [開場16:00/開演16:30]
2024年11月16日(土) 千葉・柏 PALOOZA [開場16:00/開演16:45]
2024年11月30日(土) 長崎・DRUM Be-7 [開場16:00/開演16:30]
2024年12月01日(日) 熊本・B.9 V-2 [開場16:00/開演16:30]
2024年12月07日(土) 滋賀・U★STONE [開場16:00/開演16:30]
2024年12月08日(日) 奈良・NEVER LAND [開場16:00/開演16:30]
2024年12月28日(土) 和歌山・CLUB GATE [開場16:00/開演16:30]
2024年12月29日(日) 徳島・club GRINDHOUSE [開場16:00/開演16:30]
2025年01月11日(土) 茨城・水戸 LIGHT HOUSE [開場16:00/開演16:30]
2025年01月19日(日) 北海道・札幌 PENNY LANE 24 [開場17:30/開演18:00]
2025年02月16日(日) 東京・Toyosu PIT

●作品情報
TVアニメ『夜桜さんちの大作戦』
MBS/TBS系全国28局ネット‟日5“枠にて放送中

関連リンク

fripSide オフィシャルサイト
https://fripside.net/

fripSide オフィシャルサイト(レーベル公式)
https://nbcuni-music.com/fripside/

fripSide オフィシャルX(八木沼悟志)
https://twitter.com/sat_fripSide

fripSide オフィシャルX(上杉真央)
https://twitter.com/maouesugi

fripSide オフィシャルX(阿部寿世)
https://twitter.com/hisayoabe

fripSide オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCp8U4DpexC_DbOrQzjwc7Tw